
あえて選んだのは旗竿地。住宅が密集する
エリアで手に入れた、明るく心地よい暮らし
issho architect office/大谷一翔建築設計事務所
明るく、開放的に暮らしを叶えるために
あえて奥まった旗竿地を選択
施主のKさまは、かねてよりこのエリアに家を建てたいと考えられていた。ただ、非常に人気がある地区のためよい候補地がなかなか出てこず、やっと見つけたのが前面道路から奥へ奥へと3区画に分けられたこの敷地だったという。
道路に面した手前の敷地はすでに売れてしまい、候補は真ん中か奥。どちらにするかは迷いどころだった。奥の敷地は前面道路から20m程度離れておりしかも旗竿地になるため、Kさまは当初真ん中の土地を考えられていたという。しかし、相談を受けた大谷一翔建築設計事務所の大谷一翔さんは、「明るく過ごしやすく、家族のつながりがある家」という要望も踏まえたうえで奥の敷地を薦めた。
大きな理由は、南隣にあるアパートだ。土地自体が1mほど上がっており、そこに3階建てのアパートが立っている。今回の区画に沿うように配置されているので、南からの影の落ち方は手前でも奥でも変わらない。また、北側にもすでに住宅があり、さらに東側もこれから家が建つ予定だった。
「日当たりに関してほぼ同条件でしたので、それならば人通りも少ない奥の敷地を購入したほうが暮らしやすいのではないかと考えました」と大谷さん。区画を分けたことによる開発道路も3軒の家のみで使うため、一番奥ならば他人がほとんど入ってこない。密集地のど真ん中というとさぞかし閉鎖的な家になりそうだと思いがちだが、旗竿地を選んだからこそ、窓を開けて明るく過ごしやすい環境を整えることができたのだ。
家のボリュームに分け、コの字に配置。
影をよけながら視線も遮る
家の中に日の光を入れ、かつ視線を遮るため大谷さんが提案したのは、家のボリュームを2つに分けることだった。LDKや個室がある大きいボリュームと、玄関と水回りで構成する小さなボリュームを「コの字」で繋げ、間にできた空間を庭とした。南から落ちてくる影を避け、庭にきちんと日が入るように建物は可能な限り北に配置。建物をコの字にしたおかげで小さなボリュームの一角が目隠しとなり、LDKの窓をいつでも開けられるようになった。
LDKは、先述の通り庭に向かう大きな窓が南側にある。小さいボリュームの玄関が向かいにあるため直射日光は入らないが、庭が明るいおかげで柔らかな光を得られる。また、隣家の庭を挟むおかげで視線が届きにくい東側にも大きく開口し、さらに隣家が迫る北側にも、すりガラスの羽目殺しの窓を設けた。このように、間接的に光を入れられる場所はきっちりと開けて陽だまりのような空間を実現した。
3区画の一番奥の旗竿地だからこそ、通る人も車も限られておりプライバシーをより一層保つことができたと大谷さん。庭に木を1本植えただけで、道路側からの視線もしっかりと遮ることができた。お子さまたちが安全にのびのびと遊べるのはもちろんのこと、今ではご両親などが遊びにきたとき、玄関からではなく庭を突っ切り、直接リビングの窓を介してやりとりすることもあるのだとか。これも、旗竿地だからこその思わぬ利点だといえるだろう。
明るく心地よく、家族の繋がりも感じられる
吹き抜けが印象的な大空間のLDK
明るい空間での暮らしを要望されたことから、基調は白とした。ただ、白一色だと冷たい印象も出てきてしまう。そこで、構造材を見せて温もりをプラス。また、リビングエリアは無垢のフローリング材を採用し、寛ぐのにふさわしい場をつくりあげた。
玄関から水回り、そしてダイニングとキッチンにかけての床材はタイルを選んだ。水拭きができるなど掃除もしやすく、小さいお子さまたちが元気に駆け回っても心配ないタフさがある。お子さまたちの遊びを邪魔しないよう、ダイニングテーブルはキッチンの作業台にぴたりと付けられる細長いデザインのものを造作した。お客さまがいらした際はダイニングへ出せば6~8人は席に着くことができる。
和室は一段高い位置に計画し、感覚的に他の場所と仕切った。お子さまたちが小さい現在は、ここに布団を敷いて家族みんなで寝ているのだとか。引き戸で完全に仕切ることができ、お子さまたちが成長して2階の子ども部屋を使用するようになったら、客間へと用途を変化させる予定だ。
「家族のつながりを感じられる家にしたい」という要望にも的確に応えている。2階に子ども部屋は用意したが、加えて1階の階段下を利用してスタディールームを設けた。「みんながいる状況で勉強したりお絵かきしたりする場所が必要だと考えました」と大谷さんが話すように、LDKのどこにいても目が届きやすい。東側の大きな窓に面しているため、目を上げれば空や緑が見え居心地も抜群。「もしかしたら一番いい場所かもしれませんね」と笑う。
敷地の条件がどんなに難しくても、その条件は変えられない。ならば建物や間取りで生活の仕方を提案したいと考えているという大谷さん。お施主さまが「どんなふうに暮らしたいのか」を一番に重視しているからこそ、この「武蔵丘の家」も驚くような心地よさが得られる家になったのだろう。
基本データ
| 作品名 | 武蔵丘の家 |
|---|---|
| 所在地 | 熊本県菊池郡 |
| 敷地面積 | 214.66㎡ |
| 延床面積 | 115.42㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
設計者情報
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