豊かな住まいをつくる「北向きの家」特集

土地の難点をデメリットと捉えず、豊かな住まいをつくる。
"南向き信仰"が根強い日本では、多くの人が南向きに開かれた家をイメージされることでしょう。
一般的にマイナスのイメージのある北向きの土地でも、敷地条件や設計の工夫次第で明るさも風通しも申し分のない、理想の住まいを実現したという設計事例をここではご紹介いたします。

施主の想いと希望をカタチにした、建築家ならではの設計事例を、ぜひみなさまの自分らしい住まいづくりの参考にしてください。

北向きでも明るく、快適省エネ生活。 雄大な景色を美しく楽しむ家

福岡県福岡市 / J邸

北向きでも明るく快適な住まいをどのようにつくったのか、久保さんに聞いてみた。

「まずLDKは光を入れやすい2階にし、トータルで幅8mの窓を設置。これだけ大きな窓があれば北向きでも十分明るくなります。また、断熱材で断熱性能を高め、2階の寝室は可動間仕切りで囲みました」

寝具を布団にして日中は片付けておけば、可動間仕切りを開け放すと2階を大きな一室空間として使える。このほうが風通しがよく、かつ、断熱性能が高い家なら1台で広い範囲の空調をまかなえるため、部屋を完全に分断する必要性がない。

そしてきわめつけともいえるのが、環境シミュレーションソフトによる環境の最適化だ。

北向きリビングで、明るさと開放感を。 天空光と緑あふれるスキップフロアの家

神奈川県 横浜市

「実は、ここは北向きのリビングなんです」。設計を担当したOASisの岡本浩さんの言葉に驚く。敷地は北西角地で南東には隣家が迫り、メインの採光は北か西から得るしかなかったというのだ。

こう聞くとネガティブな敷地条件のように思いがちだが、「どの方角でも、設計の仕方で光は十分に採り込めます」と岡本さん。「とはいえ、単に窓を多く取ればいいわけではありません。重要なのは、高い位置から光を得ることです。明るい光は空から入ってきますから」

北の道路向こうは公園で、緑の借景を期待できるという幸運もあった。そこでAさまの要望に沿いつつ岡本さんが設計したのが、北側に吹抜けとハイサイドライトがあるスキップフロアのLDK。3階建ての2階に位置し、3階部分のハイサイドライトからそそぐ天空光と、公園の緑を満喫できるのびやかな空間だ。

北向きなのにこんなに明るい!日光の力を最大限に引き出した家

東京都北区 / B邸

この場所は木造の住宅密集地で、南は隣家が迫っており、北は道路。家を建てるセオリー通り南向きにすると光を採り込みにくく、家の中を明るくできないのだ。「日照のシミュレーションもしてみましたがやはり、あまり日が入らないことがはっきりとわかりました。それに、大きく窓をとってもすぐ目の前に隣の家があるわけですから、目線が気になりそうだという心配もあります」と山口さん。そこで、あえて北向きの家を建てることにしたのだと言う。

「北側に向けた住宅をいいものにする工夫」として山口さんがまず考えたのは家の向きだ。広々として、かつ、明るい庭にするために考えられ計算された向きなのだと言う。「道路に平行に家を建てると、庭が横に細長くなるのでスペースを生かしきれません。それに、庭に面して窓を取っても、道路までの距離が近くなってしまいます。かといって家の向きを道路に対して垂直にすると、今度は庭の正面に娘さんの家がある状況になり、せっかく道路に面しているのに閉塞感がある庭になってしまう。ちょうどいいのがこの東西方向のナナメの角度でした」