
狭小・密集地でもこの明るさ!
光あふれる空間を実現した五角形の家
デザインありきではない
諸問題を解決するための五角形
M邸が建つ土地は、東西南の三方を隣家に囲まれ、敷地境界からわずか30cmほどしか隙間がないほどの密集地。また北に位置する前面の幅員4mの道も建築基準法上の道路ではなく、43条但し書きによる通路として許可を得たもので、道路斜線規制や防耐火など制約も多く、一筋縄ではいかない土地だった。
実際、取り壊す前の古い家に入った平野さんは「室内がとても暗くて、これは光をどう取り入れるかがカギになる」と感じたのだという。この家に住むのは、30代の夫婦と2人の幼い子供。若い家族が健やかに暮らせる家にするためには、プライバシーを確保しながら、採光と通風を確保することは欠かせない。それを実現するため、導き出されたのが五角形のフォルム。
「トップライトや限られた開口部から取り入れた光を、角度のついた壁や天井に反射・増幅させることで、明るい室内空間を実現しました」と平野さん。また、2階と3階の一部を吹き抜けとすることで、天井からの光が下の階に降りてくるとともに、自然な通風を可能としたのだ。
天井からの光が反射
外からは想像がつかないほどの明るい空間に
さらに、五角形のフォルムとしたことで発生した、壁の斜めのラインも大きな役割を果たしている。反射した光が斜めに降りたり、昇ったりする形となり、広く空間を照らすのだ。また、角の部分の壁が道路側にせり出すことによって、ちょうど人の顔の高さの部分の空間に広がりができ、直立する壁のような圧迫感がないのだ。
「明るさ」と「開放感」をもたらすため、平野さんが施した工夫は、五角形の建物や窓だけではない。
例えば、2階LDKのキッチンカウンター兼ダイニングテーブル。開いたL字のような形状だが、この角度によって通路が奥側に向かってだんだんと細くなっている。遠近法を使うことで、実際以上の奥行きを感じさせているのだ。さらに、3階のスタディスペースの吹抜けに面するラインをこの角度に揃えることで、リビングの開放感を演出している。
このほか、階段やスタディスペースの手すりをネットとしたり、リビングと寝室の間はすりガラスとするなど、光を通す工夫を随所に施している。
困難な立地でありながらも、五角形という斬新なアイデアで、こんなにも明るく開放的な空間に仕上げてしまう平野さんの力量には驚かされるばかりだ。
実際、Mさんも「こんなところに、これほどの空間ができるとは思っても見なかった。日中、照明をつけることなく生活ができています」とコメント。想像していた以上の明るい空間に驚きを隠せないようだ。
デザイン性と快適性を兼ね備えた
ここにしかない唯一無二の家
「どこに建っていてもよいという家ではなく、この土地だからこそ生きる、ここに建つべくして建っているということを意識しています」と平野さん。
実は平野さんは、日本の建築界の巨匠安藤忠雄氏の事務所出身。幾何学的なプロポーション、光や風の取り込み方の巧みさ、そして同じものが世界に2つと存在しない建築に仕上げるといった要素は、師匠に通ずるものがある。
建築家に自邸の設計を依頼するということは、自分の思い通りの家を実現したいということに他ならない。そして多くの建築家は、施主のその要望を叶えてくれるだろう。しかし、平野さんは、施主の期待値を超え、想像していた以上の建物をつくり出す稀有な存在の建築家の1人だ。
これからも、日本のどこかでデザイン性と快適性を兼ね備えた、唯一無二の住宅が現れるに違いない。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 鶴見区の家 |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府 大阪市鶴見区 |
| 敷地面積 | 65.68㎡㎡ |
| 延床面積 | 117.71㎡㎡ |
| 間取り | 3LDKS |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | Mさん |
撮影:小川重雄
設計者情報
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