
北向きでも明るく、快適省エネ生活。
雄大な景色を美しく楽しむ家
緻密な環境シミュレーションで、
北向きの不安を解消
あたりが暗くなった頃、なぜJ邸が目立つのか。それはほかの家よりも窓が際立って大きく、家の明かりがともると、その大きさがいっそう目につくからだ。
それにしても、どうしてJ邸以外の家は窓が小さいのだろうか? 「それは、大開口を設けたJ邸のLDKが北向きだから。ほかのお宅は北側に大きな窓をつくっていないので、J邸が目立つんです」と久保さん。
J邸を北向きにした理由は眺望だ。J邸が立つ高台の土地から北を見ると、街並みから遠くの山まで素晴らしい景色が広がる。そのため施主のJさまご夫妻は、その景色を活かした家を望んでいた。
しかし、見事な眺望のためとはいえ、北向きの家は暗くて寒いのではないか? との不安もよぎる。
ところがご夫妻は、この家に住んでから、エアコンの使用頻度がぐっと減ったという。快適なのは室温だけではない。北向きの大開口がある2階のLDKは、四季を問わず心地よい明るさに満ちている。
北向きでも明るく快適な住まいをどのようにつくったのか、久保さんに聞いてみた。
「まずLDKは光を入れやすい2階にし、トータルで幅8mの窓を設置。これだけ大きな窓があれば北向きでも十分明るくなります。また、断熱材で断熱性能を高め、2階の寝室は可動間仕切りで囲みました」
寝具を布団にして日中は片付けておけば、可動間仕切りを開け放すと2階を大きな一室空間として使える。このほうが風通しがよく、かつ、断熱性能が高い家なら1台で広い範囲の空調をまかなえるため、部屋を完全に分断する必要性がない。
そしてきわめつけともいえるのが、環境シミュレーションソフトによる環境の最適化だ。
聞けば、久保さんは環境にフォーカスした設計事務所での設計経験があるのだそう。今回もその経験と知識を活かし、「ここに換気窓をつくったら光熱費はどうなるか?」など、建築予定地の風配図(風向や風速を示した図)を見ながら試行錯誤。窓の位置や大きさを吟味し、ガラスは性能を考慮して「この窓は遮熱」「この窓は断熱」などと使い分け、設計と計算のトライ&エラーを繰り返して最適な室温・通風を保つプランをつくったのである。
「最近のソフトは精度が高いので便利ですよ」と久保さんはいうが、ソフトを駆使して燃費のいい家をプランニングするには、ベースとなる深い知識が欠かせない。その知識とスキルをもつ久保さんの手にかかれば、たとえ北向きでもこれほどまでに快適な家ができるのだ。
大窓にカーテンをつけない贅沢。
洗練空間で最高の景色を楽しむ
その一例が2階の北向きリビングの窓。久保さんは「北の景色を楽しみたい」というご夫妻の言葉を大切に受けとめ、風景を最も美しく見せる窓を計画した。久保さんいわく、「ここは南に向かって高くなる傾斜地の住宅街なので、窓の取り方によっては北の隣家の屋根が見えてしまいます。それではせっかくの景色が台無しになりかねません」
そこで久保さんは建物を敷地の南側に寄せて北との距離を取り、リビングの先にバルコニーを設置。バルコニーの手すりはリビングやダイニングにいるときの目線で北の隣家の屋根が見えない高さに調整し、純粋に景色だけを楽しめるようにした。おかげで外部の視線も気にならず、ご夫妻はリビングの窓にカーテンをつけずに暮らしているという。
さらに最小限の建築操作で最大限の成果を出すことを得意とする久保さんは、シンプルな内装で洗練されたデザイン性と景色が映える効果を両立。地震対策の意識が高い奥さまの希望で家具は全て造り付けにしたが、それらの造作家具はもちろん、壁や天井も素材の表情が活きる無駄のないデザインやナチュラルな仕上げで統一。インテリアと景色のベストバランスを生み出した。
それだけではない。久保さんは「景色とどう出合うか」にもこだわった。家のほぼ中央に位置する階段は、あえて北から南~つまり、景色を背にしてのぼる動線にしたのだ。
この動線の狙いは、2階に上がって振り返ると、気持ちのよい眺めが一気に視界に入る驚きや楽しさの演出だ。階段をのぼっている間は室内しか見えないため、のびやかな景色が突然目に飛び込んでくると「わあー!」と歓声を上げてしまう。
リビングでくつろぐとき、ダイニングで食事するとき、キッチンで家事をするとき……。ふと視線を向ければ、そこにはいつも、余計なものがいっさいない美しく雄大な景色がある。性能から居心地、驚きや楽しさまで、全てをかなえた久保さんの設計は、Jさまご夫妻の日常にこのうえない贅沢をもたらした。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 福岡県福岡市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 245.94㎡ |
| 延床面積 | 133.25㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | J邸 |
撮影:Ryota Atarashi
設計者情報
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