
玄関に入った瞬間に広がる大空間。
シンプルだからこその豊かさが感じられる家
究極のシンプルさで家具が映える室内を実現
人が集うショールームをイメージした家
自宅を新築するにあたり、「自社の家具を置きたい」「ショールームとしての機能も持たせたい」とお考えだったご夫妻。その思いを受け、三輪さんは人が集まる家になるようにとこの家の名前に「会所」を加えたという。
これらのご要望が余すことなく叶えられたことは、室内に入った瞬間にわかるだろう。ポーチから玄関にあたる土間へ進むと、そこには天井が高く、シンプルかつ洗練された設えの大空間が広がっているからだ。まるでパーティーを開催するちょっとしたホールのような包容力があり、ここに置く家具によってどんなふうに印象が変わるのだろうかと期待してしまう、そんな空間だ。
家の平面形状はL字型の平屋で、窪みの部分に中庭がある。L字の内側のライン、中庭と繋がる壁面は全体を大きく開口し、明るく開放的なイメージをつくるとともに外部との自然な繋がりをもたらした。
家具が映える空間づくりの要は、シンプルさを徹底したことだ。まず、リビングエリアの壁沿いに連続したベンチを計画。これなら大人数のお客さまをお迎えした時でも居場所に困ることはない。さらに、ベンチの下は収納とすることで、改めて収納家具を設置することを省いた。
それでいて、リビングはしっかりとくつろぎの場として機能する。たとえば、収納を兼ねたベンチの一部は可動式になっており、まだ小さなお子さまたちが床に座って机としても使えるようにした。また必要に応じてラグを敷くのもいいだろう。かえって定位置がないことで、ちょっとした工夫により家族ひとりひとりが季節や一日の移ろいに合わせて選ぶ場所が最上の居場所になるのだ。
様々な要素をこれ以上ないほどにそぎ落としたおかげで、家具の魅力を最大限に引き出す家というだけでなく、より自由に暮らせる家ができた。
お子さまの安全を第一に考えた「とおり庭」
生活に沿った動線で暮らしやすさを確保
賑やかで車通りも活発な場所にあることを理由の一つとして計画したのが、「とおり庭」だ。中庭に向かう通路と道路の間に壁を立てることで、お子さまたちが安全にのびのびと遊べる環境を整えた。LDKのどこからでも中庭を見渡せるのもありがたい。
中庭も重要な役割を担っている。「HouseA/会所の家」の奥にはご主人のご両親が住む家があり、間を繋いでいるのが中庭。中庭やテラスはご両親とのコミュニケーションの場として縁側のように使われているのだとか。
要望を反映してできたユニークな部分もある。泥だらけでお仕事から帰宅することもあるというご主人のために、室内からだけでなく中庭からもダイレクトに浴室へアクセスできるようにしたのだ。ご夫妻がお庭で遊んだお子さまたちを外からお風呂へ直行させ、着替えさせてからLDKに通すことも容易くできるようになった。汚れを落としてから室内へ入る動線によって、室内をより楽に清潔に保てる。
さらに浴室、洗面脱衣室の近くで洗濯乾燥を終わらせた後、脇に配置したファミリークローゼットへ収納するという流れを実現。重労働になりがちな洗濯まわりの手間を、家事動線を整えることで劇的に軽減した。
浴室と脱衣室の間の仕切りを取り払ったのは、奥さまのアイデアなのだそう。三輪さんは不便がないよう、実現するにあたり除湿などもしっかり対策。さりげなくも細やかな気遣いによって、暮らしやすさがさらに高められていく。
もうひとつ特筆すべき場所がある。それはキッチン。一枚板のダイニングテーブルをキッチンカウンターに貫通させ、一体化させたスタイルは三輪さんの提案。お客さまが増えても対応できるだけでなく、アイデア次第で幅広く活用できそうなデザインだ。
特徴的なのはそこだけではない。背面の収納棚は冷蔵庫の奥行に合わせて計画。冷蔵庫がまるで収納棚の一部に見えるほどにすっきりした平面は、LDKのシンプル空間で浮き立つことがない。「一般的に奥行が深すぎる収納は使いにくい一面もあるのですが、家具製作の実績と使用実感のもと、奥さまからの提案で採用になりました」と三輪さん。使いやすい大容量の収納は、ここにもあった。
造作家具を手掛ける会社だからこその繊細さ
本物の贅沢が感じられる大空間
「一般的には構造材をそのまま見せるような梁にも、突板を貼って仕上げていただきました」と三輪さん。会社の現代表である、奥さまのお父さまが「やろう」とおっしゃってくださり実現したとのこと。なるほど、改めて室内を見てみると、梁、柱、窓枠に至るまで質感に調和が取れている。さらに、繊細さが際立つ戸棚の取手など、思わず目を留めてしまうアクセントがそこかしこに散りばめられており、とても贅沢だ。
また色調が絶妙なのだ。ご夫妻のお好きな色合いを大切にしながら、空間が重くなりすぎないようキッチンの天板やベンチなどの平面には明るめの茶系を、垂直に立ち上がる部分には濃い色を配色。全てがしっくりと収まるバランスのよさは特筆すべきだろう。
「現在は子育ての真っ最中ですから、お子さまたちが元気いっぱいに遊んでらっしゃるみたいです」と三輪さん。ベンチなども遊び道具の一つにしながら、室内と中庭を駆け回っていると楽しそうに奥さまが話してくださったのだとか。これから、お子さまたちの成長に合わせても、また家の使い方が変化していくのだろう。長く暮らす醍醐味を存分に味わえることもまた、この家の魅力なのだ。
シンプルだからこそ可能性が広がり、魅力が尽きない「HouseA/会所の家」。これからも、この家をつくってよかったという思いが日ごとに増していくに違いない。
撮影者:鳥村 鋼一
基本データ
| 作品名 | HouseA/会所の家 |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県いすみ市 |
| 敷地面積 | 594.61㎡ |
| 延床面積 | 116.12㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
| 施主 | A邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

3つの動線がすべてのエリアを繋ぐ家。 低コストで理想を叶える分離発注方式とは?
「北中の家」は、お施主さまが岡さんの自邸を気に入り、設計を依頼した家だ。自邸のエッセンスをベースとし、ライフスタイルと要望を上手に掛け合わせて豊かに、快適に暮らせる家を実現した。お施主さまと岡さんは、仕事上のパートナー。岡さんが手掛ける「分離発注」方式での家づくりも紹介する。

野辺山の広大な自然に調和する伝統工法の佇まい
都会から緑豊かな野辺山に移り住んだご主人と奥様。野辺山が見渡せる大地に「こんな家に住みたい」との希望を叶え、自然素材のみを使用した伝統工法の住まいが完成する。そして広大な自然と調和した、心地よい新生活が始まった!

生活の基盤となり、暮らしを楽しむための家 緩やかなゾーニングで叶えた開放的空間
小田原に移住を決め、東京から引っ越してこられたお施主さま家族。やりたいことも理想の暮らしもイメージがしっかりできており、それを叶えるための家づくりが始まった。暮らしを楽しみ、自然を感じ、豊かさ溢れる住まいを実現するteam AeOの2人は贅沢な敷地を生かし、開放感溢れる家をつくりあげた。

鎌倉の深緑に馴染むモダンな平屋。レイヤーで外とつながる、光あふれる住空間
鎌倉の豊かな自然に馴染みつつ、モダンで都会的な佇まいが目を引くこの家を設計したのはdesus(デサス)建築設計事務所。邸内は光や風が心地よく通り、大切なペットへの配慮も盛りだくさん。鎌倉に住むならこんな家を建てたいと思える住宅だ。

光、風、音を感じながら、自然と共に暮らす森の中の別荘
暑い夏、涼しい場所で過ごしたいとの思いで別荘づくりを決断。 自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。 そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。 田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

豊かに光を落とす大きな天窓が叶えた 家の中に中庭があるような、開放的な家
中庭が家の中心にある「ロの字型」の家を建てたいとお望みだったお施主さま。建築家の戸川さんは、しかし敷地条件や広さなどから難しいと判断。提案したのは、大きな天窓だった。おかげで、思い描いていた開放的で明るく、風が通り、回遊性もある、まるで庭を家の内部に取り込んだような暮らしが実現したという。

眺望も心地よさもかなえる新発想。 「斜めの空間」の魅力とは?
眺望を活かしたオリジナリティのある住まいを望んでいた施主さまに、イノウエヨシムラスタジオが提案したのは「空間を斜めに区切った家」。奇抜なのでは? という懸念を吹き飛ばす快適で豊かな住空間の魅力や、全てにおいて「斜めが正解」と確信できる完成までのストーリーを紹介する。

個性的な住戸が集うコーポラティブハウス。全住戸に庭付き一戸建ての豊かさを
奥野公章さん設計の『荻窪ロウハウス』は、集合住宅でありながら自分好みの住まいをつくることができるコーポラティブハウス。驚くことに全住戸が庭付き一戸建て感覚で住めるという。住戸の事例とともに、工夫を凝らした奥野さんの建築の魅力を紹介しよう。

レイヤーの壁で生まれるモダンな表情。自然が暮らしに寄り添う、多摩川沿いの家
独創的で住み心地のよい住宅設計で知られる建築家の伊藤寛さん。S邸ではプライバシーを守るための工夫をきっかけに、屋外の心地よさをふんだんに取り入れた住空間や洗練された外観デザインも実現。平屋住宅の至るところに自然を取り込むテクニックも必見だ。









