人生最後の家づくりになるかもしれないとしたら、あなたはどんな家を建てるでしょう?機能性の高い家?デザイン性の高い家? 定年を迎えセカンドライフを歩み出したTさんご夫妻が望んだのは、機能性とデザイン性を兼ね備え、さらに「好き」に囲まれた家。この難題をクリアし、施主の期待以上の家に仕上げたのは、居心地の良さと豊かな暮らしづくりに定評のある建築家、松本直子さんでした。
この建築家に吹抜けと大開口によって、抜群の開放感のあるリビング。ほぼ終日ブラインドを下さずに暮らしているというほど、とても気持ちの良い空間に仕上がった。
リビングの中央には、薪ストーブが鎮座し伸びやかな煙突と相まって、インテリアの1つにもなっているかのよう。ストーブの炎のゆらめき、薪の爆ぜる音など、五感で楽しめるに違いない。テレビ台背面の壁は、Tさんこだわりのタイル仕上げ。
芝を張った庭の先には、ゆずや白樫、トリネコにフェイジョア、ヤマボウシにモミジなどが植えられ、四季折々で違った色合いに変わり、目を楽しませてくれる。珍しい鳥も訪れたのだとか。
造作で作ったキッチンカウンターも旅先で集めた食器を飾れる収納。キッチン背面収納は、生活感を出さぬよう普段は引戸で目隠しできる仕組み。スキップフロアの階段下には、物置スペースを設け、生活道具やご主人のワインを貯蔵しているという。
リビング奥の和室は1段高くして小上がり感をだした。壁は京壁、天井は網代で床は表面を削ったなぐり仕上げ。地窓の先にもセンジュ、白ヤマブキを植えている。
奥様の要望で南側に配置したバスルームは、シャワースペースをガラスで仕切ったホテルライクな仕様。柄タイルはご夫婦お2人で1枚1枚選んだもの。外の景色を見ながらの入浴は、まるで露天風呂気分。
洗面・トイレは、円形の洗面ボウルとTさんご夫妻が選んだタイルで可愛らしい印象。
寝室にも土産物を飾る棚を設置。奥には大き目のWICを設けている。
2階吹抜に面した廊下ゾーンからも、1階とは異なる抜群の抜け感が得られる。ペットの猫は、このテラスから窓台に飛び乗り日向ぼっこを楽しんでいるのだとか。
最上階にある書庫は、まるで図書館のよう。高さを揃えて整理した蔵書がずらりと並ぶ。ずっとここに籠って読書していたくなる空間だ。
撮影:アトリエあふろ(糠澤武敏)