
家の中に公園があるかのよう。
子どもがのびのび遊べる住まいのつくり方

大塚 泰子
おおつか やすこ
ノアノア空間工房
東京都 港区
■私の目指す空間つくりとは■ 1. 五感に響く詩的空間をつくること 2. 機能性とデザイン性を兼ね備えた空間をつくること 3. 自然を取り入れながら優しく居心地のよい空間をつくること 「真剣に考え、真剣に取り組み、真剣に楽しむ」 「建主、工務店と共にいい建築、いい住宅をつくるぞ、という共有の意識を持つ」 「関わる全員がhappyになる」 そんな経験の場所、記憶の場所をつくりたいと思っています。 いい住宅ってこういう経験と記憶からスタートして建主の暮らしを豊かにしていくものです。 さあ、さあ、素敵な住まいづくりをはじめましょう!
高低差を活かした楽しい動線。
外とのつながりを感じられる住まい
いや、正確には中庭なのだが、緑鮮やかな樹木の先には数段のコンクリート階段があり、右手にはアイアンの室内階段が見える(これがジャングルジムを思わせる)。暮らしに光と緑を与えてくれるだけでなく、高低差で空間的な動きも感じさせる中庭は、どことなく公園のよう。アイデアを駆使して元気に遊ぶ子どもたちの姿が目に浮かぶ。
施主さまご夫妻と2人の男の子が暮らすこの家は、両サイドに隣家が迫る住宅街に立っている。「中庭をつくったのは住宅街という環境でプライバシーを守り、採光も確保するためです。それまでマンションにお住まいだった施主さまは、庭のあるプランをすぐ気に入ってくださいました」と話すのは、この家を設計した大塚泰子さん。
周囲の環境のほかにもう1つ、大塚さんが着目したのは敷地の形状だ。「ここは敷地内に高低差があったのですが、平地にする工事はかなりのコストがかかります。そこで、高低差をそのまま活かした家をつくろうと考えました」
こうして、中庭を中心に据えた「ロの字型」のプランが完成。邸内は土地の高低差を活かした造りになっており、1階はLDK。そこから中庭沿いの通路を通って数段の階段をのぼると中2階の子ども室、折り返してさらに数段の階段をのぼると主寝室や水まわりのある2階、というスキップフロア。中庭を周遊する動線上に生活空間が広がり、どこにいても外とのつながりを感じられる心地よい住まいとなった。
採光だけじゃない。
暮らしを豊かにする中庭の役割
敷地の高低差を違和感なく住空間に馴染ませつつ、家族それぞれの居場所をつないでいることも中庭の役割の1つだ。LDK~子ども室~主寝室と、中庭を周遊しながら少しずつ床レベルが上がる設計は、子ども室が大きな踊り場のようでもある。お子さまは家族が集まるLDKにも、両親のいる主寝室にもすぐ行ける安心感を得られるのだ。
また、LDKから子ども室へは邸内の通路に加え、外へ出て中庭を通り抜けていく直線の動線もある。中庭はガラス窓で囲まれているので、子ども室のドアを開けておけばLDKから中庭越しに子どもの様子がわかり、ほどよい距離感で気配を感じられる。
もちろん、中庭はお子さまたちの遊び場としても活躍中だ。「出入口が複数あり、ベンチとして使える階段も備えた空間ですから、居場所も遊び方も多彩です。お子さまが自分で考えて遊ぶ力がつくのではないかと思います」と大塚さん。
中庭にここまで多様な役割を与えるとは、大塚さんの発想は実に豊かだ。その根底には、子育て世代の住宅設計では常に、子どもの暮らしを具体的にイメージするという大塚さんのポリシーがある。
「やっぱり、お子さまの成長を考えて家づくりを決意する施主さまは多いんです。このお宅もお子さまの個性や才能が開花するような家になったらいいなと考え、ご家族みんなで楽しめる空間づくりを意識しました」
同時に、通路にご主人の書斎的なワークスペースをつくるなど、大人が心地よく暮らせる家にすることも忘れない。「大人がストレスを感じないことは、お子さまにとってもいいことだと思いますから」
ありきたりではない、
洒落たデザインをローコストで
うれしいのは、大塚さんは予算に配慮しながらこうした空間を生み出してくれることだ。例えばLDKの壁は、グレーのコンクリートと白のペンキ塗装の2トーンカラー。デザイン重視の仕上げかと思いきや、「コンクリートは家の基礎の部分をそのまま見せています。その分、ローコストになるんです」とのこと。
コストダウンでいうと、大塚さんは収納でも「よくやる手法」があるという。それは、小さな収納をあちこちにつくらず、要所要所に大容量の収納スペースをつくること。例えばこの家では、2階の洗面室に大きな納戸をつくった。洗面台の上下に収納を造作するより安価で収納量も多いうえ、洗面台まわりがすっきりしたデザインになる。
コスト意識の高い合理的なアイデアや、洗面とバルコニーを隣接させるといった家事動線のよい間取りには、女性建築家ならではの「女性目線」が活きている。しかし、見た目や住み心地のよさにプラスして、子どもの楽しみも大人のくつろぎもかなえてしまう大塚さんの手腕は、単に「女性目線」でくくるのはもったいないと感じる。
この家の施主さまをはじめ、大塚さんに家づくりを託す人の多くはHPなどで大塚さんの作品を多数見ており、あまり細かいリクエストをしてこないという。「この人におまかせすれば大丈夫」。大塚さんの設計には、そう思わせる独特の魅力があるのだ。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 神奈川県厚木市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 127.80㎡ |
| 延床面積 | 104.57㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
設計者情報

大塚 泰子
おおつか やすこ
ノアノア空間工房
東京都 港区
■私の目指す空間つくりとは■ 1. 五感に響く詩的空間をつくること 2. 機能性とデザイン性を兼ね備えた空間をつくること 3. 自然を取り入れながら優しく居心地のよい空間をつくること 「真剣に考え、真剣に取り組み、真剣に楽しむ」 「建主、工務店と共にいい建築、いい住宅をつくるぞ、という共有の意識を持つ」 「関わる全員がhappyになる」 そんな経験の場所、記憶の場所をつくりたいと思っています。 いい住宅ってこういう経験と記憶からスタートして建主の暮らしを豊かにしていくものです。 さあ、さあ、素敵な住まいづくりをはじめましょう!
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

ここが狭小地!?お店もテラスも居心地も、すべてが叶えるには?
「この土地では、希望の家は建てられない」。相談した設計会社から立て続けにそう言われたKさん夫妻が、最終的に自宅の設計を託したのは 株式会社ホープスの清野廣道さん。都内の狭小住宅を多数手がける同社は敷地を最大限に活用し、坪数を感じさせないのびやかで心地よい空間をつくり上げた。

ここまで開放的な平屋だから、自然満喫と落ち着く空間を両立!
窓いっぱいに広がる高尾の自然の景色、家のなかを通りぬける気持ちのよい風。存分に自然を味わえる家は、建築家の望月さんが家族と暮らすならと考えて設計した理想の家でした。

築40年の日本家屋の梁や構造材を活用し 古民家然とした和モダンな家にリフォーム
「新築にはない魅力を引き出すこと」それが建築家・森さんのリフォームへのこだわり。今回紹介するN様邸はリフォームコンクールの受賞作品で、そんな森さんの設計思想を体現した実例。もともと使われていた構造材を活用し、N様の快適な暮らしに適した減築や改修を施して、和モダンな平屋に生まれ変わらせている。

無限の可能性を秘めたシンプルな構造。 多様なスケール感が居心地いいカフェ
いつか自分のお店がやりたいというクライアントの夢を叶えるために建てられたカフェ。建築家の五十嵐理人さんは、カフェとしての使い勝手の良さ、居心地の良さを追求すると同時に、建物のこれからも考えた。壁や窓を全て取り払っても建物は残り、新しい使い方ができるというこの建物がどのように生まれたかを探る。

築40年の木造アパートが大変身 ペットも飼い主も心安らぐ、癒しの動物病院
動物病院を新規開業するにあたって、施主の唐木さんが選んだ場所は、ビルテナントでも新築物件でもなく、なんと築40年の木造アパート。 この困難なリノベーション案件を、温かみある動物病院へと変貌させたのは、動物病院の設計経験も豊富な建築士、水石さんでした。

1階は保育園の園庭で2階が住居?併用住宅に夢と可能性を感じさせる居心地の良い家
Mさんは、代々暮らしてきた土地に建つ戸建てでひとり暮らしだという。そんなMさんが、現在の住み慣れた土地に新たな住まいを構えようと考えたとき、単身女性でも安心かつ居心地の良く暮らすにはどうすれば良いのか?結果的に導き出された答えは「1階の一部をお隣の保育園の園庭にする」という斬新なものでした。このプランを見事に実現したのは、「松浦荘太建築設計事務所」代表の松浦荘太さん。ちなみに、依頼主であるMさんとは、実は松浦さんのお母様なのです。母親と息子。親子ならではの、お互いを知り尽くしているからこそ実現できた「皆が幸せになれる住まい」について、松浦荘太さんにお話しを伺いました。

余白を生むずれ重なる箱の家 共鳴し合う建築と庭
道路に囲まれた敷地にあり、全方向から建物が見えるという「栃木の家」。建築家の押山さんによればプライバシーを守るために1.5mのコンクリート壁で囲まれた中に身を置くと、驚くことに威圧感や圧迫感が感じられない。家中が明るく、庭仕事が楽しめる気持ちのいい家はどのように計画されたのだろうか。

洗練の中に温かなノスタルジー。 和の魅力を再発見する「現代和モダン」な家
和モダンと表現される家は多いが、山上聖司さんが設計したI邸は、よくある和モダンとは一線を画す本物志向の「現代和モダン」。確かな知見で日本建築の魅力をバランスよく取り入れたI邸は、真に上質な空間に住まう幸せを感じさせてくれる住宅だ。

お気に入りのアンティーク家具ありきで設計。「自然とともに暮らす」平屋
施主が理想の家づくりに抱く夢は大きくて、予算は限られている。これは当たり前のこと。だからこそ、設計士もやりがいを感じるというのが、「トミタ建築設計スタジオ」の富田さんの思い。その中で、「建築には“場所性”がある。どこに建てるか、日本だからこそどう建てるか。これが建築の面白さでもあります」という。Y様邸は、そんな富田さんの仕事ぶりが、とことんまで徹底された実例の一つだ。
