
斜めのリビングと広いテラスで居心地抜群。
熱環境も快適な自然素材の家
子どもが存分に外遊びを楽しめる、
自然素材の家をつくりたい
大輔さんはオフィスビル、教育・商業施設などのプロジェクトに多数携わってきた経歴をもち、建物の骨格や構造に関する知見が豊富。一方のかおりさんは、自然素材を使ったパッシブデザインの家が得意。2人がそれぞれの手腕を発揮して、住まい手目線の安心快適な住まいをつくってくれると評判だ。
S邸では土地探しから伴走し、Sさまは琴浦町内の新たな分譲地に家を建てることを決定。「木や自然を感じられる家が好き」「子どもにはたくさん外遊びをさせたい」。そう考えていたSさまのために2人がつくり上げたのは、漆喰や無垢材などの自然素材を贅沢に使った2階建ての家だった。
明るいベージュ色のそとん壁(自然素材の外壁材)や木製ルーバーなど、ナチュラルな素材感が引き立つ外観も魅力だが、邸内に入ると想像以上に居心地のよい空間が迎えてくれる。その秘密は、リビングに施されたちょっとした仕掛けにある。2人がどんなアイデアで居心地のよさを生んだのか、詳しくご紹介していこう。
プライバシー確保、居心地、開放感。
家族の時間を充実させる「斜めのリビング」
「面積的にはどちらかというとコンパクトなLDKです」と安藤建築設計室の2人はいうが、足を踏み入れたときの印象は「のびやか」。大きな窓越しに見えるのは、庭の緑や木製のアウトドアテラス。ほかにも視線が抜ける窓がいくつもあり、空間の広がりを感じられる。
そして、のびやかな印象に一役を買っているのがリビングの配置の仕方。リビングは建物の軸から30度振り、斜めに配されているのだ。
リビングが斜めだと居場所と居場所が正対せずに少しずれながら連続し、圧迫感は皆無。四角い部屋の中で、部屋の角から斜めに見たほうが空間を広く感じるように、それぞれの居場所からの視界が広い。その分、LDK内にいる家族が視界に入りやすくなり、コミュニケーションも円滑に。先ほど「カフェのよう」と書いたが、居場所がランダムで距離感がほどよいところも、ホッと落ち着けるカフェを彷彿とさせる。
2人がリビングを斜めに配したきっかけは、プライバシーの確保だったという。リビングの大開口を道路に対して斜めにすることで、邸内を見えにくくしたのである。その発想を広げて開放感や居心地のよさもかなえた手腕には、「こんな手があったか!」と膝を打ちたくなってしまう。
「子どもに外遊びをさせたい」という要望は、LDKとひと続きのアウトドアテラスで応えている。ここは屋根付きで、雨天でも外遊びを楽しめる半戸外空間。S邸ではお子さまの友達が「あーそーぼ」とテラス側から声をかけてくる、ほほえましい光景が繰り広げられている。
「こうしたスペースがあると、どこかに出かけなくても特別な時間を過ごせて暮らしが豊かになると思います」と大輔さん。かおりさんも、「竣工後に伺ったときも、お子さまは友達とテラスで遊んでいて、一向に部屋の中に入ってこないんです。部屋の中と外の間の空間をとっても上手に使ってくれてるなあと、なんだかうれしくなりました」と笑顔で話す。
プライバシーを守りつつ、屋外の開放感も味わえる。1人で好きなことをしていても、いつも家族がそばにいる──。そんな居場所が豊富なS邸では、家族の楽しい時間がたくさん綴られていくに違いない。
快適な熱環境とアイデア満載のキッチン。
温かな第3者目線で理想の住まいに
S邸では薪ストーブを設置し、暖気が1階~2階を行き渡るように吹抜けや階段を計画。冬は薪ストーブ1台で家中がぽかぽかだ。また窓は各空間の対角線上に設け、風通しを良好に。夏もほぼ自然通風だけで過ごせるほど快適になった。
家事のしやすさへの配慮も厚く、薪ストーブの暖気が通る場所には室内干しスペースを設置。雨雪が多い山陰の冬でも洗濯物がパリッと乾く。またキッチンは奥さまの希望でオリジナルを製作。白タイルと木を使った素敵なデザインだが、自身も主婦であるかおりさんのアイデアがすごい。
例えば、「包丁は清潔な布巾の上に並べて収納したい」との要望を受け、引き出しの中に包丁専用の隠れた小引き出しを設置。子どもが引き出しを開けても包丁を触らないようにとの心遣いには、ちょっと感動してしまう。ほか、湿気をこもらせたくないとの要望に対しては、底板を外してステンレス棒を通した引き出しを発案。合理的で使い勝手のよい独自の発想が詰まっている。
こうしてエピソードを見ていくと、「通念を鵜呑みにせず、『この家・このご家族には本当にそれがいいのか』と、自問自答しながらプランニングしています」と語る2人の設計姿勢が見えてくる。それは、施主に寄り添いながらも第3者目線を失わず、「施主にとってベストな家」を新たな発想で追い求める誠実さと温かさ。
2人は、竣工後もずっと親交のある施主が多い。それは2人が全力投球で設計にあたり、その後も一定の距離感を保ちつつ、親身にサポートしていることのあかしでもある。理想の住まいを形にし、責任をもって見守り続ける安藤建築設計室との家づくりは、長きにわたる幸せと安心感をもたらしてくれるだろう。
基本データ
| 作品名 | 赤碕の家 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県 |
| 敷地面積 | 311.61㎡ |
| 延床面積 | 100.94㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | S邸 |
撮影:岡田泰治
設計者情報
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