つくるのは、住まいではなく暮らし
今見直される、これからの暮らしのカタチ

コロナ禍において、通勤することを前提とした住まいが見直されつつある今日。
いち早く都心の喧騒を脱し、ワークライフバランスを確立されている建築家、増木奈央子さん。
街にいながらも、自然豊かな環境でゆったり過ごす「トカイナカ」暮らし。
そこには、ポストコロナに相応しい、人間本来の暮らしがあった。

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豊かな自然と「向こう三軒両隣」
心安らぐトカイナカ

埼玉県所沢市。都心まで約1時間のこの地は、人口30万を超える都市でありながらも、湖や緑地、田畑などの自然がそこかしこに残る場所。都会生活の便利さと、田舎暮らしの愉しみを共に享受できる「トカイナカ」だ。そんな地に、増木さんは自邸を構え、建築事務所「市中山居」を立ち上げた。

「市中山居」とは、人々が暮らす市中に山の風情を感じる庭や茶室を築き、一期一会を味わったとされる千利休の世界観をあらわした言葉。街に住みながらも自然と 共に暮らすことを望む人々が、自分らしい暮らしを実現できるように設える、そんな思いが込められている。

増木さんとご主人は、元々は都心のマンションに暮らしていた。職場へ通いやすく、駅からも近くお店も多いなど、利便性の高い場所ではあったものの、騒音や殺風景な眺めなど、心休める場所ではなかったという。「自然に抱かれ、生き返る場所」を探し、100箇所以上の土地に足を運び、たどり着いたのが所沢の地だった。

この街は、緑豊かな樹木が生い茂り、となりのトトロのモデルでもある八国山の四季折々の景色、近所の寺の鐘の音など、心穏やかな気持ちにさせてくれる場所。さらにここには「向こう三軒両隣」があった。大人たちが井戸端会議する。子どもたちが遊ぶ声が聞こえる。年に数回、バーベキューや流しそうめんといったイベントもある。取材で訪れた際も、ご近所さんから「こんにちは」と声をかけられたり、すれ違う子供が軽く会釈をしてくれる、そんなアットホームな雰囲気の街だった。豊かな自然と温かい人々。増木さん夫妻もそんな街の魅力の虜となり、ここに居を構えたのだという。
  • モミジが出迎えてくれる玄関。キレイに並べられた薪棚は、玄関と道路を緩やかに仕切る衝立となっている

    モミジが出迎えてくれる玄関。キレイに並べられた薪棚は、玄関と道路を緩やかに仕切る衝立となっている

  • ダイニングの庭先に訪れたメジロ。鳥や蝶、花など季節の移り変わりを、日々ダイニングから味わっている

    ダイニングの庭先に訪れたメジロ。鳥や蝶、花など季節の移り変わりを、日々ダイニングから味わっている

居場所は1つじゃない
各々が心地よく感じる場所に

玄関の引き戸を開き邸内へと入ると、そこは和の雰囲気に包まれながらも洋の暮らしができるスペースだった。LDKまで連なる大谷石の土間、きめ細やかで白さひきたつ漆喰壁、柔らかく温もりある杉の床で構成されたスッキリとした佇まいが、まるで小さな旅館を訪れたかのような気分にさせてくれる。
大きな掃き出し窓を開くと、広いテラスが現れる。吹き抜けの天井と相まって、とても開放的な空間に早変わり。庭の緑、そよぐ風、鳥や虫のさえずりなど、自然の中にいるという実感が湧いてくる。大谷石の土間が玄関からLDK、テラスまで連なるのは、民家の通庭(とおりにわ)のように、ご近所さんが集う開かれた場所にしたかったそうだ。

振り返ると、そこに鎮座しているのは、薪ストーブ。薪ストーブは、ただ空気を温めるだけの暖房器具ではない。「薪ストーブは、三度からだを暖める」という言葉がある。まず一度目は、薪割りの時。自らの手で薪割りをすることで、無心になれストレスの解消にもなる。二度目はストーブとして体や部屋を暖めるとき。そして三度目は、ストーブ料理を味わうとき。
「冬になると、ご近所さんをお招きして薪ストーブ料理を一緒に味わうのが恒例になっています」と増木さん。
さらには、薪が燃えるときの炎のゆらめき、爆ぜる音、薪の香りが、心まで暖めてくれる。

階段を昇り2階に上がると見えてくるのが、市中山居の事務所ともいえる図書室(ワークスペース)。奥の隠れ家的スペースには、壁一面に書棚があり、たくさんの本や資料が並ぶ。そして2階で最も心地よいスペースが、部屋の奥に広がる空庭と名づけられたアウトドアリビング。遠くの八国山の風景が見え、開放的ながら、低い天井、程よく切り取られた開口によって、落ち着きのある空間だ。夏になると西武園ゆうえんちの花火も見られるという。
「花火を見ながら、ビールを飲むのが夏の楽しみの1つです」と増木さん。
開口と一体となったカウンターが設えてあったり、視界を遮らないよう手摺が着脱できるという細かな工夫もなされているのだという。

この住まいで何度も感じたのは「ここに座っていたい」「ここからの景色が好きだな」という場所がいくつもあることだった。この住まいには「いつもソファーに座る」というような定位置がない。どこにいてもよくて、そのどこもが心地よいのだ。実際、増木さんとご主人も、毎日いろいろな場所で過ごすのだという。ダイニングでご飯を食べるだけでなく、テラスに出したテーブルでいただく、書棚で読み始めた本をテラスやアウトドアリビングで読む、仕事だってダイニングテーブルで行うことも。また季節によっても居場所は変わり、寝室も夏と冬とで変わるのだという。暑い夏は2階の夏の間でアウトドアリビングから風を取り入れ涼しく。寒い冬は、ストーブで温まった1階の冬の間でといった具合に。

住まいという限られた小さな空間であるにも関わらず、さまざまな景色、いくつもの居場所がある、心を豊かにさせてくれる住まい。そんな住まいを作り上げてしまう増木さんの力量には感服するばかりだ。
  • 玄関からLDK、テラスまで連なる土間。民家の通庭(とおりにわ)をモチーフとし、ご近所さんが集う開かれた場所にしたかったそうだ。掃き出し窓を壁内部にしまい込むと、庭と一体となり開放感抜群の空間に

    玄関からLDK、テラスまで連なる土間。民家の通庭(とおりにわ)をモチーフとし、ご近所さんが集う開かれた場所にしたかったそうだ。掃き出し窓を壁内部にしまい込むと、庭と一体となり開放感抜群の空間に

  • 玄関から通庭そして南庭へと続く大谷石のテラス(南庭)。天気の良い日には、窓を大きく開き、読書をしたり、食事をすることも

    玄関から通庭そして南庭へと続く大谷石のテラス(南庭)。天気の良い日には、窓を大きく開き、読書をしたり、食事をすることも

  • 掘り下げられた床に設えた薪ストーブ。手前のソファーは冬籠りの特等席。地窓から臨む北庭の景色を愉しみながらゆったりぬくぬく

    掘り下げられた床に設えた薪ストーブ。手前のソファーは冬籠りの特等席。地窓から臨む北庭の景色を愉しみながらゆったりぬくぬく

自らの体験をリアルに語り
お客様の安心と信頼を育む

この家を建てるにあたり増木さんは、1年以上の歳月をかけ、100箇所を超える土地の中から自らが理想とする土地を探し出した。資金計画も、金融機関のプランをそのまま受け入れるのではなく、数ヶ月かけ自分たちで検証したという。「土地探し」や「資金計画」といった家づくりの準備段階を増木さんは「下ごしらえ」と呼ぶ。時間をかけ、じっくり丁寧に下ごしらえを行ったことで、納得の住まいを手に入れられた。自らが下ごしらえで苦労したからこそ、土地探しのときには一級建築士として一緒に同行してアドバイスしたり、ファイナンシャルプランナーを同行させて資金計画のお手伝いをすることも行っている。また、施工後も長期にわたる定期点検にて品質をチェックするだけでなく、住まいを長持ちさせるお手入れ方法もアドバイスしているという。建築家の枠を超えたサービスと言ってもよいだろう。

「この自宅が、市中山居のモデルハウスです」と増木さんは語る。
実際、見学会を随時開催し、訪れた方にこの家の設えや環境を、目で見て、手で触れて、肌で感じてもらうという。さらには舌で味わってもらうことまで。またこの家で、自分たちがどのように暮らしているかというリアルを伝えている。実際に生活する者からの言葉は、施主にとってとても心強く、安心感と信頼をもたらすに違いない。

市中山居は、ただ建物をつくるだけの建築事務所ではない。土地探しや資金計画といった下ごしらえを支えるサポーターでもあり、「トカイナカ暮らし」のリアルを伝える伝道者だ。市中山居は「暮らし」をつくっているのだ。

奇しくもコロナ禍によって人々の働き方が変わった。テレワークが推奨され出社せずに自宅などで仕事をする人が増えた。毎日の通勤を前提とした都会暮らしの必要性も薄れてきた。そうなれば、より良い住環境を求め郊外に住むという選択肢も増えることだろう。まさに増木さんが、ひと足先に実現していた「人間本来のあるべき暮らし、自然体な暮らし」にシフトチェンジする人が増えるのだ。
市中山居が設える暮らしが、これからのスタンダードとなるに違いない。
  • 2階の図書室(ワークスペース)。木のぬくもりに包まれた落ち着いた空間は、仕事に集中でき、ご主人のテレワークにも最適だそうだ

    2階の図書室(ワークスペース)。木のぬくもりに包まれた落ち着いた空間は、仕事に集中でき、ご主人のテレワークにも最適だそうだ

  • 空庭と名づけられたアウトドアリビング。遠く八国山まで見渡せて開放的だが、低い天井、程よく切り取られた開口によって落ち着いた空間。夏には西武園ゆうえんちの花火を見ながらのビールが最高のひととき

    空庭と名づけられたアウトドアリビング。遠く八国山まで見渡せて開放的だが、低い天井、程よく切り取られた開口によって落ち着いた空間。夏には西武園ゆうえんちの花火を見ながらのビールが最高のひととき

  • 冬の間と名づけられた居間兼寝室。寒い冬は日向ぼっこをしながらゴロゴロも気持ち良い。上げ下げ出来る猫間障子が、物干しの洗濯物を目隠し。庭の風情を損なわない

    冬の間と名づけられた居間兼寝室。寒い冬は日向ぼっこをしながらゴロゴロも気持ち良い。上げ下げ出来る猫間障子が、物干しの洗濯物を目隠し。庭の風情を損なわない

  • 庭に面した濡れ縁は、夕涼みやお月見に絶好のスポット。ここでのお風呂上がりのビールは、格別なのだとか

    庭に面した濡れ縁は、夕涼みやお月見に絶好のスポット。ここでのお風呂上がりのビールは、格別なのだとか

間取り図

  • 間取図

お家のデータ

施主
通庭が楽しい家
所在地
埼玉県所沢市
家族構成
夫婦
敷地面積
140.03㎡
延床面積
92.76㎡
予 算
3000万円台