住宅街にこんなにも豊かな空間が誕生 緑・光・風を楽しみながら暮らす

新築でありながら、ずっと前からここにあったように周囲に溶け込む家がある。設計を手掛けたのは、遊び心あふれる発想と、自然との調和を大切にするアトリエウィの宇佐美さん。周囲環境にも住む人にとっても馴染む設計によって、心地良い住まいが実現した。

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きっかけは工務店経由でのご指名
家づくりのプロからも信頼される建築家

新宿まで京王線で約20分の調布駅。駅前には数多くの商業施設や飲食店が建ち並ぶ高い利便性と、「神代植物公園」「深大寺自然広場」など豊かな自然環境に恵まれ、都会と田舎の両方の魅力を感じられる「住みたい街」として人気の場所。

そんな調布市の住宅街の一角に、美しい黒焼杉の壁と大小2つの山のような屋根が特徴的な建物が建っている。さまざまな樹々が植えられた長いアプローチをもつこの建物は、以前からここに佇むような旅館か和食店のような印象をもつが、新築の個人の住宅、S邸「双峰のいえ」だ。

この家を設計したのは、緑や光といった自然と調和した家づくりを得意とする、アトリエウィの宇佐美さん。

宇佐美さんがS邸の設計に携わるきっかけは、とある工務店からの仕事の依頼。

宇佐美さんは、施主から直接設計を依頼される案件以外にも、工務店とコラボして設計を担当するということも多い。この工務店とも、いくつもの家の設計を手掛けたほか、モデルハウスも宇佐美さんが設計したのだという。

この工務店においても、コラボレーションしている建築家は宇佐美さん1人というわけではない。複数の建築家と仕事を共にしているはずだ。そんな中、自社の顔ともいえるモデルハウスの設計を宇佐美さんに任せた。それだけ宇佐美さんのアイデア力や設計力、そして対応力に信頼を置いているということなのだろう。宇佐美さんは、プロからも選ばれる建築家なのだ。

そしてあるとき、工務店に家づくりを依頼したSさんが、複数の建築家の中から、設計担当として指名したのが宇佐美さんだった。Sさんも宇佐美さんの設計する家に魅了されたのだ。

こうしてS邸の家づくりが始まった。
  • 「双峰のいえ」の名のとおり大小2つの山が連なる。黒杉板の外観、ミカンやアオダモなどの木々が植えられた長いアプローチは、旅館か和食店を想像させる。

    「双峰のいえ」の名のとおり大小2つの山が連なる。黒杉板の外観、ミカンやアオダモなどの木々が植えられた長いアプローチは、旅館か和食店を想像させる。

  • 杜の小径の東屋というイメージの小屋は駐輪場兼物置。庭の目隠しにもなる、機能面とデザイン性を兼ね備えた建物だ。

    杜の小径の東屋というイメージの小屋は駐輪場兼物置。庭の目隠しにもなる、機能面とデザイン性を兼ね備えた建物だ。

  • 中庭には、宇佐美さんが提案したイロハモミジやナツハゼなどの落葉樹を。夏には木陰をつくり、秋には紅葉も楽しめるのだという。

    中庭には、宇佐美さんが提案したイロハモミジやナツハゼなどの落葉樹を。夏には木陰をつくり、秋には紅葉も楽しめるのだという。

  • 吹抜けと高窓からの光が開放感抜群の玄関に。扉の横の姿見は、お出かけ前の身だしなみチェックに便利。壁付けの電灯もいいアクセントに。

    吹抜けと高窓からの光が開放感抜群の玄関に。扉の横の姿見は、お出かけ前の身だしなみチェックに便利。壁付けの電灯もいいアクセントに。

緑との関わりをどうするかがカギに
オープンマインドのヒアリングと物語思考

S邸の敷地を見た宇佐美さん。第一印象は「東京では広すぎるくらい大きくて、良い土地」だったという。しかも、キレイな長方形で高低差もない。若干の懸念点といえば、周囲には家やマンションがあり、人通りもある。人々の視線からどうプライバシーを確保するかという点くらいだったとか。

Sさんご家族の要望は、自然素材を使った家づくりと、植物を植えたいということ。

「ひとくちに『緑を』といっても、単純な面積の問題ではありません」と宇佐美さん。

「施主が真に望むことを的確に捉える」ために宇佐美さんが行っているのが、オープンマインドなヒアリング。もともと「話好き」という性格もあるのだろうが、「普段どんな生活をしているか」「どんな食べ物・音楽が好きか」など、施主と友達になるかのように心を開いて対話をしていくという。S邸の「緑」というキーワードに対しても、「ただ緑を眺められればいいですか?」「水やりなどの手入れも楽しみたいですか?」などと緑との関わり方を聞いていった。また、そのうえで「この家の緑が、街に良い影響を与える始まりになればいいな」とも思ったのだという。

そして、捉えた情報を設計やデザインに落とし込む際にも、宇佐美さん独自の方法があるという。それは施主の要望をパズルやブロックのように組み上げていくのではなく、シーンやストーリーを思い浮かべるのだ。例えば「リビングは〇畳」などの要素をどう入れ込むかという思考ではなく、この家に住む人の実際の生活のシーンを想像し「こんな風に家に帰ってきたら気持ち良いだろうな」「ここからの景色を見るのが好きだろうな」「ここに座って寛ぐだろうな」とストーリー仕立てで考えていくのだという。

深い対話を通じて、真の願いを汲み取り、それを適切に設計に落とし込む宇佐美さんの力量が、施主の「こんな暮らしがしたかった」が叶う満足度の高い家を生むのだ。
  • 玄関を2階からみた様子。シューズクローゼットスペースは、サイディングの壁に屋根をかけるという遊び心。横丁のような空間で、室内に街が生まれた。

    玄関を2階からみた様子。シューズクローゼットスペースは、サイディングの壁に屋根をかけるという遊び心。横丁のような空間で、室内に街が生まれた。

  • 小上がりの和室は、客間でもありリビングの拡張にも。前面畳張りとせず床材の一部は、無垢材に掬ったような凹凸をつけた名栗仕上げ。丸い柱もアクセントに。

    小上がりの和室は、客間でもありリビングの拡張にも。前面畳張りとせず床材の一部は、無垢材に掬ったような凹凸をつけた名栗仕上げ。丸い柱もアクセントに。

  • 窓は中庭が見えるようあえて斜めにとった。陽だまりのコーナーとして腰掛けて景色を楽しめる。

    窓は中庭が見えるようあえて斜めにとった。陽だまりのコーナーとして腰掛けて景色を楽しめる。

緑や光を感じる豊かな空間
ずっと家にいたい、早く帰りたくなる家に

こうして出来上がった双峰のいえを見ていこう。

黒焼杉と切妻屋根の大小2つの山が連なるような外観はまさに双峰。木々が植えられた長いアプローチ、広々とした駐車場をもち、旅館や和食店かと思わせる。

実はこの小さいほうの山にあたる建物は、住居ではなく駐輪場兼物置小屋。母屋は奥にL字状につくられている。
この小屋の誕生には、いくつもの要素の解決と宇佐美さんが想像したストーリーがある。

まず1つめは、庭の目隠しの役割。「緑」をどうするかという問いの答えとして中庭を設けることに。しかし、そのままでは庭が丸見えになってしまい、落ち着かない。

2つめは「雨に当たらない駐輪場がほしい」という要望があったこと。
この2つの要素の解決ならば、単なるガレージでも構わないだろう。しかし宇佐美さんは、更なるストーリーを想像した。

「杜の小径を歩く途中の、ちょっと休憩できる東屋をイメージしました。長いアプローチの途中にこんな建物があったら、帰ってきたときに気持ちいいだろうな、と思ったのです」と宇佐美さん。

こうして母屋と小屋という親子のようなデザインの外観が生み出された。目隠しと駐輪場という機能を満たした建物を杜の小径の東屋とする遊び心ある宇佐美さんのアイデアには驚かされる。

小径を抜け玄関を入ると、そこにもまた遊び心ある空間が広がる。吹き抜けの広々空間は、左側にあるシューズクローゼットの上に屋根がかかり、仕切る壁はサイディングだ。まるで路地の横丁。2階には物見台まである。家の中の街が広がっている。

右側の小上がりになったスペースは客間にも、リビングの拡張にもなる和室。前面畳張りとせず床材の一部は、無垢材に掬ったような凹凸をつけた名栗仕上げ。窓は中庭が見えるようあえて斜めにとった。陽だまりのコーナーとして腰掛けて景色を楽しめる。

LDKは、母屋とは高さを変えた伸びやかな勾配天井。タモの無垢材のフローリングと杉板の天井。ホタテ貝の漆喰という自然素材に包まれた柔らかな印象。庭に面した大きな窓と高窓からの光が差し込む、なんとも気持ちの良い空間。庭側にはベンチが設けられ、ここからも庭の景色を楽しめる。

キッチンは、天井高の低い場所に配置し、造作の収納で囲った籠るような場に。こうすることで、生活感を見せないことと、高低差からくる視覚的効果で、リビングの広がりを生んだ。

2階には廊下部分を活かした宙に浮く本棚を。デザイン性だけでなく、空気の通り道にもなっているという。

空気の通り道という点では、この家は高気密・高断熱の全館空調。床下と小屋裏に置いたエアコンの空気を床下に設けたガラリから循環させることで、いつでも快適な温度で過ごせるという。

この家の出来栄えにSさんご家族も「中庭の緑が豊かで、周りの喧騒を気にしないで生活できる」「LDKの天井が高く、窓もあり伸びやかで明るい」とコメントを寄せてくれた。

Sさんご家族の要望通りの緑や光を感じられる生活はもちろん、駐輪場の小屋や家の中の街など、遊び心も満載の双峰のいえ。ここには、居心地の良いたくさんの居場所、素敵な景色がある。ずっとここに居たい。早く帰りたくなる家だ。

自分たちの思い通りの家がほしいならば、宇佐美さんを信じて依頼することが近道だ。

いや、宇佐美さんは「想像以上の家」を生み出してくれる。


撮影者:富樫 航海
  • LDKは、母屋とは高さを変えた伸びやかな勾配天井。庭に面した大きな窓と高窓からの光が差し込む、なんとも気持ちの良い空間。庭側にはベンチが設けられ、ここからも庭の景色を楽しめる。

    LDKは、母屋とは高さを変えた伸びやかな勾配天井。庭に面した大きな窓と高窓からの光が差し込む、なんとも気持ちの良い空間。庭側にはベンチが設けられ、ここからも庭の景色を楽しめる。

  • タモの無垢材のフローリングと杉板の天井。ホタテ貝の漆喰という自然素材に包まれた柔らかな印象のリビング。壁裏にはパントリーと坪庭。北側の坪庭からも柔らかい光が入り込む。

    タモの無垢材のフローリングと杉板の天井。ホタテ貝の漆喰という自然素材に包まれた柔らかな印象のリビング。壁裏にはパントリーと坪庭。北側の坪庭からも柔らかい光が入り込む。

  • キッチンは、天井高の低い場所に配置し、造作の収納で囲った籠るような場に。こうすることで、生活感を見せないことと、高低差からくる視覚的効果で、リビングの広がりを生んだ。収納の一部は、床下エアコンが納められ、ダクトを通じて全館空調が行われる。

    キッチンは、天井高の低い場所に配置し、造作の収納で囲った籠るような場に。こうすることで、生活感を見せないことと、高低差からくる視覚的効果で、リビングの広がりを生んだ。収納の一部は、床下エアコンが納められ、ダクトを通じて全館空調が行われる。

  • 夫婦の主寝室は、将来夫婦だけの生活になったときに平屋的生活ができるよう1階に。南の道路側の壁にはプライバシーを確保するため窓を設けず、東の高窓から採光。

    夫婦の主寝室は、将来夫婦だけの生活になったときに平屋的生活ができるよう1階に。南の道路側の壁にはプライバシーを確保するため窓を設けず、東の高窓から採光。

  • 2階のホールには宙に浮く本棚。デザイン性だけでなく、空気の通り道にもなる。シューズクローゼットの上には、すのこ状のキャットウォーク。物見台のような遊び心ある空間。

    2階のホールには宙に浮く本棚。デザイン性だけでなく、空気の通り道にもなる。シューズクローゼットの上には、すのこ状のキャットウォーク。物見台のような遊び心ある空間。

  • 和室上部にある子供部屋は、WICつき。高窓と玄関吹き抜けの窓で明かりを取る。床下のガラリから、冷暖房の空気が循環する。

    和室上部にある子供部屋は、WICつき。高窓と玄関吹き抜けの窓で明かりを取る。床下のガラリから、冷暖房の空気が循環する。

基本データ

作品名
双峰のいえ
施主
S様
所在地
東京都調布市
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
288.54㎡
延床面積
132.88㎡
予 算
5000万円台