木立の中での暮らしを楽しむ
河畔林にそっとたたずむ家

「巡り合ったその土地に住むことが、もっと好きになる家を」。建築家の斉藤さんが大切にする想いと、施主Sさんの「自然に囲まれて暮らしたい」という想いから生まれた「河畔林にたたずむ家」。土地の魅力と生活空間をどのように重ね合わせ、住まいに形を与えていったのか。そのプロセスについて伺った。

この建築家に
相談する・
わせる
(無料です)

土地から暮らしのイメージを広げた
自然を近くに感じられる住まい

建築とは、土地の個性や周囲の環境とどう向き合うかを考え、何もなかった場所に輪郭と形を与えていくもの。

景色の切り取り方、視線の遮り方、光や風の採り込み方、寒さや暑さとの付き合い方…。

風土・地域をよみとき、そこに居ること、住まうことが好きになれる家を提案するのが、「河畔林にたたずむ家」を手がけたDesign du Kohの斉藤さんだ。

「自然に囲まれて過ごせる場所を探し、小川に面した河畔林に土地を取得されていたS様。『この場所が好き』という想いを非常に強くお持ちの方でした。自然の中に住まうことを楽しみにされていらっしゃいましたので、木立と小川のある北側と東側に大きく開き、土地の魅力がそのまま生活空間になるようプランニングしています」。

木立と小川に対して開く一方、住宅地である南側を閉じて人工物と距離を置き、自然とだけ相対することのできる主室(LDK)をデザイン。

背の高い木立を見上げる縦長の窓と、川辺に向かって視線が抜けていく重心の低い横長の窓。役割の異なる2つの窓と吹き抜けをダイナミックに配置した主室は、「この場所に住むことそのものを楽しむ」ためのとっておきの空間だ。

また、Sさんが斉藤さんに伝えたもう一つの要望が「個とつながりの両立」。一人の時間・空間は大切にしつつも、家族の気配を感じられるよう、吹き抜けを介して1階の主室と2階の書斎が緩やかにつながるフロア構成とした。
  • 外観は木立の中にそっとたたずむよう、コロンとした切妻形状に。自然の中で建築が「異物化」しないようボリュームを程よく抑えながら、周囲に溶け込むベストなバランスを追求した

    外観は木立の中にそっとたたずむよう、コロンとした切妻形状に。自然の中で建築が「異物化」しないようボリュームを程よく抑えながら、周囲に溶け込むベストなバランスを追求した

  • 吹き抜けも含めた大開口から天空光を採り込むことで、南側を閉じていても主室(LDK)はこの明るさ。東向き・北向きの窓を設けても寒くならないよう、断熱・気密もしっかり計画されている

    吹き抜けも含めた大開口から天空光を採り込むことで、南側を閉じていても主室(LDK)はこの明るさ。東向き・北向きの窓を設けても寒くならないよう、断熱・気密もしっかり計画されている

  • 自然に対して開き、住宅地に向けて閉じる。このメリハリをしっかりとつけることにより、プライバシーを保ちながら「自然に囲まれた暮らし」に集中できる住環境を整えた

    自然に対して開き、住宅地に向けて閉じる。このメリハリをしっかりとつけることにより、プライバシーを保ちながら「自然に囲まれた暮らし」に集中できる住環境を整えた

  • 夏になると木立が青々と生い茂り、直射日光を遮る「自然のカーテン」として機能。木々に覆われることで、おこもり感とプライベート感がよりいっそう高められる効果も

    夏になると木立が青々と生い茂り、直射日光を遮る「自然のカーテン」として機能。木々に覆われることで、おこもり感とプライベート感がよりいっそう高められる効果も

メインの居場所を引き立てるため
バックヤードを丁寧につくり込む

周囲の自然、家族の心地いい距離感を考えるにあたり、斉藤さんが強く意識したのが「ノイズを減らす」こと。

主室とバックヤード(水回り)の動線の関係性を明確に整理することで、暮らしの中心となる主室が雑然とした印象にならず、自然に素直に向き合える「余白」のある空間とすることができたのだそう。

「主室の存在感に目を奪われがちですが、実はそれ以上に力を入れたのが、バックヤード=裏側の空間・動線の設計です。仕事の後は裏玄関から家に入り、着替えをし、手を洗ってから主室へ。ご家族の生活リズムに合った機能的な裏動線をしっかりとつくり込むことで、ノイズのないメインの居場所を設けることができ、自然をより近くに感じられる余裕が生まれると考えました」。

生活がしやすいからこそ、いい家だと思ってもらえる。その当たり前を大切にすることも、斉藤さんの建築家としての矜持。

裏動線の使い勝手は日々の快適さに直結するため、たとえ予算が厳しい場合でもバックヤードから削る選択はせず、ご家族の生活スタイルを丁寧にヒアリングした上で、最適な形を一緒に導き出していく。
  • 読書が好きなSさんのため、構造上必要だった柱を利用してブックシェルフを造作。柱が家具の一部として空間に馴染むことで、柱の存在感がもたらす圧迫感も解消された

    読書が好きなSさんのため、構造上必要だった柱を利用してブックシェルフを造作。柱が家具の一部として空間に馴染むことで、柱の存在感がもたらす圧迫感も解消された

  • 床材のタモはSさんご自身が選ばれたもの。「素材についてはお施主様の好みが最優先。その上で、全体のバランスを整えるために必要な調整を行うのが私の役割です」と斉藤さん

    床材のタモはSさんご自身が選ばれたもの。「素材についてはお施主様の好みが最優先。その上で、全体のバランスを整えるために必要な調整を行うのが私の役割です」と斉藤さん

  • 吹き抜けを介して、主室と書斎という「長く過ごす場所」同士が緩やかにつながるS邸。階下の気配も自然と伝わってくるため、家族と離れていても一緒にいるような感覚でいられる

    吹き抜けを介して、主室と書斎という「長く過ごす場所」同士が緩やかにつながるS邸。階下の気配も自然と伝わってくるため、家族と離れていても一緒にいるような感覚でいられる

建築家としての自分の役割は
住まいに「形」を与えること

「家で過ごす時間が豊かなものとなり、暮らすほどに土地への愛着が深まっていくこと」がゴールであり、家づくりの主体は住まい手であるべきというのが斉藤さんの考え方。

お気に入りに囲まれる心地よさを感じてほしいという想いから、素材については「好きなものを選んでみてください」と伝え、施主のイメージにより近いものがあればアドバイスをする程度にとどめているという。

「こうすべきだと主張するのではなく、お施主様の想いを汲んで整えていく調整力こそが重要であり、建築家としてのスタンスです。お施主様はどんな風に家を使いたいのか、どんな素材が好きなのか。生活スタイルに合った間取り・動線、コーディネートのご要望を平面にきっちりと落とし込んだ上で、住まいに立体的な形を与えていくのが私の仕事。機能面の設計にはある程度のパターンがありますが、形そのものは自由な発想から生まれるもの。土地やお施主様のキャラクターからイメージを広げ、家のフォルムや空気感、たたずまいとして表現していくことが好きですし、自分が得意とする提案なのかなと思っています」。

S邸に形を与えたのは、柔らかい雰囲気で朗らかなSさんご夫妻のお人柄。上品だけれど堅苦しくなく、どちらかというと可愛らしい雰囲気のお二人が暮らす家だからこそ、外観もその個性に似合う「木立の中にたたずむようなささやかな形状」としたそうだ。

「大きな塊に見えないよう、コロンとした切妻の形状でボリュームを抑えつつ、木立の中にそっと優しく『置いてあげる』イメージで設計しています。自然の中で建築が悪目立ちしないよう配慮しつつ、S様が愛着を持てる気持ちのいいたたずまいを目指しました」。
  • 階段下に畳を敷き、お子さんのプレイスペースとして活用。独立した空間としてゾーニングをすることでおもちゃがあちこちに散らからず、主室のノイズを減らすことにもつながっている

    階段下に畳を敷き、お子さんのプレイスペースとして活用。独立した空間としてゾーニングをすることでおもちゃがあちこちに散らからず、主室のノイズを減らすことにもつながっている

  • 「創作意欲をかき立てられる書斎がほしい」というSさんのオーダーに応えた空間。木立や小川、さらにその奥の森を見晴らす気持ちのいい場所で、勉強や仕事に集中・没頭できそう

    「創作意欲をかき立てられる書斎がほしい」というSさんのオーダーに応えた空間。木立や小川、さらにその奥の森を見晴らす気持ちのいい場所で、勉強や仕事に集中・没頭できそう

ご縁のあった土地をキャンバスに
理想の暮らしをデザインする

河畔林というロケーションを最大限に生かした、自然と一体になる豊かな住まい。特別な立地であるからこそ叶った、誰にでも真似ができる暮らしではないと思われるかもしれないが、「けっしてそうは思わないでください」と斉藤さんは念を押す。

「その土地のいい面も悪い面もすべてを見通した上で、お施主様にご縁のあった土地に美しく調和する家を建てたいと思っています。街中で心地よく過ごせる家づくりもたくさん経験しています。家を建てることで実現できる暮らしを一緒に真剣に考えていきますので、お気軽にご相談ください」。

「この場所に住まう理由」にフォーカスし、心の奥にある施主の想いを引き出しながら、その土地、その家族に寄り添う家を丁寧に形にしていく家づくり。

思い入れのある土地がある、暮らしてみたい場所がある。そんな方にとって斉藤さんは頼れるパートナーとなり、自分たちに似合う家、憧れの暮らしを叶えるためのヒントをそっと語りかけてくれることだろう。
  • 扉を挟んで洗面スペースと脱衣室を別の空間としてレイアウト。お風呂上がり、ある程度の身支度を整えた後に洗面へ移動でき、入浴時に家族間のプライバシーも守られる

    扉を挟んで洗面スペースと脱衣室を別の空間としてレイアウト。お風呂上がり、ある程度の身支度を整えた後に洗面へ移動でき、入浴時に家族間のプライバシーも守られる

  • 子ども室には、将来スタディコーナーとして活用できるロングカウンターを用意。後から家具を置く必要がなく部屋を広く使えるとともに、インテリアにも統一感が生まれる

    子ども室には、将来スタディコーナーとして活用できるロングカウンターを用意。後から家具を置く必要がなく部屋を広く使えるとともに、インテリアにも統一感が生まれる

  • 「家で過ごす時間を上質なものにしたい」と土地選びからこだわられたSさん。入居後にやりとりしたメールにも、暮らしに満足している点や、斉藤さんへの感謝の気持ちが綴られていたそう

    「家で過ごす時間を上質なものにしたい」と土地選びからこだわられたSさん。入居後にやりとりしたメールにも、暮らしに満足している点や、斉藤さんへの感謝の気持ちが綴られていたそう

基本データ

作品名
河畔林にたたずむ家
所在地
北海道
家族構成
夫婦+子供2人
延床面積
119.91㎡