
子供の遊び場、BBQ、アウターリビング…
視線カットも兼ねる、多機能な中庭のある家

甲斐 靖之
かい やすゆき
K-space
佐賀県 佐賀市
北九州市小倉生まれ、一級建築士。 読売九州理工専門学校卒業後、東日本ハウス(現・日本ハウスホールディングス)を経て、K-spaceを設立。 木の住まいを得意とする設計士です。 施主と一緒に楽しく、いつまでも飽きの来ない住まいを建てることを一番大事にしています。 趣味は、建物見学と少しの読書。最近は、2人の子供と遊ぶ事が癒しとなってます。 家も私も家族と共に成長し変化する事を大事にしています。
中庭を配置する本来の目的は、視線カット
しかし佐賀では、中庭の採用実績は少数
自宅を設計するにあたり、甲斐さんの妻から出された要望は主に2点。1点目は“平屋”であること。2点目は、当時1歳の子供が安全に遊ぶことができる住まいにしてほしいというものだった。
一方で、甲斐さんが重要だと考えたのが外からの視線をカットし、プライバシーを確保することだった。
敷地は分譲地で、すでに周囲には家が建っている状態だった。夫婦で、「外からの視線を気にせずに生活できるといいね」という会話が幾度となく出ることで、視線のカットを最優先にすることが決まったのだ。
子供の安全な遊び場と視線カットを両立する案として、中庭を中心とするプランにすることが早い段階で固まった。中庭が遊び場になり、中庭側に窓を多く設けることで、外からは閉じられているようで、家の中で生活する際には開かれている。そのような空間作りを目指したのだ。
しかし、課題があった。実は、佐賀市で中庭を中心とする住宅はあまり多くない。都心部と比べると敷地面積が広く、その必要があまりないからだ。甲斐さんも、中庭を中心とする設計の経験はそう多くなかった。
日当たりが悪く、風通しも良くないのではないか。そんな印象を持つ人も多いそうだ。そこで甲斐さんは、自宅を中庭の良さや課題を体感できる機会にできないかと考えた。
「どの程度の広さがあれば、問題がないのか。それは自分が経験しなければ、お施主様にアドバイスすることができません。そこで、実体験で確認することにより、最適なアドバイスができるのではないかと考えたのです」。
こうして、ある種“実験的”な意味合いをも持った、中庭を持つ家のプラン作りがスタートした。
中庭による暗さを懸念し、明るさを追求
広くて多機能な、中庭の活用方法を考案
そこでまず、十分な日光を取り込むために中庭を広くとることとした。その広さは5.4m×5.4m。さらに、中庭の北側に位置するLDKにはハイサイドライトも設置した。
さらに、せっかく広い中庭を設けるのであれば、その空間を最大限に活用することも考えた。LDK側にウッドデッキを設置し、子供がプールなどで遊ぶことができるだけでなく、バーベキューや夜にお酒を飲んでくつろぐなど、アウトドアリビングとしての機能も持たせることとしたのだ。
中庭に面するLDKには、ほぼ幅いっぱいに大きな開口部を設けている。少しでも明るく、風通しが良い空間を目指したからだ。
その結果はどうだったのだろう。
甲斐さんは、次のように語ってくれた。
「明るさや風通しは、まったく問題がありませんでした。明るすぎるくらいです(笑)。ハイサイドライトも不要なほどでした。ただ、冬の太陽が低い時期には、とても効果を発揮してくれるので、無駄ではなかったと思います」。
「家族が快適に住むことができるのが大前提ですので、安心しました。建築家としては自分の言葉で、体験をお施主様に伝えられることが最大の収穫でした。もちろんCGや各種の計算で想定はできますが、実際に住むのとは細かな点で異なることもあるので、その差は大きなものでした」。
この中庭は想定通り、夏には子供がプールで水遊びをし、BBQをしたり、夜に夫婦でお酒を飲むアウトドアリビングとして活用されているという。
LDKに面しているので、BBQの時に準備や後片付けが楽にできると、妻も大満足だそうだ。
この作品は、中庭を希望するお施主様のモデルルームとしても機能している。あるお施主様から、「ここと同じプランの家を建ててほしい」と言われたこともあるほど、具体的なイメージが湧く場所になっている。
この作品の各所には考えつくされた工夫が散りばめられている。ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
“どんな家を作りたいか”ではなく、
“どんな暮らしがしたいのか”が大切
・自然素材の活用
・自由に使える間取り
・平屋の推奨
まず、自然素材の活用について。甲斐さんは自分で手入れができる、自然素材を使うことをおすすめしている。家は長く住まうものなので、その方が手入れを通じ、愛着が湧くからだそうだ。この作品でも、壁はしっくいを使用し、床材には杉板のうずくり(木材の凹凸を際立たせる加工)としている。
自由に使える間取りとは、部屋の使い方を限定せず、自由に住まい手が使えるプランのことだ。ライフステージにより、部屋の使い方は変わる。部屋の用途を限定すると、その変化があった時に対応しづらく、物置部屋になったり使われなくことも多々ある。そうではなく、その状況に応じて自由に使えることが大切だと考えているそうだ。
平屋の推奨も、将来を考えてのことだ。2階の家を建てたものの、子供が独立して親が歳を重ねた時に、2階の子供部屋を使わなくなるというケースも、数多く見られる。そうではなく、部屋をいつまでも有効に使ってほしいという願いからだ。
さらに抽象的ではあるが、お施主様との会話や敷地をよく見ることで、最適なアイデアやヒントが必ず見つかるという考えを持っているそうだ。お施主様の趣味や嗜好から、アイデアを浮かべる。敷地の一見するとマイナスにも思える状況から、プラスの発想を生みだす。それこそが建築家の役割だと思うと、甲斐さんは語った。
「耐震性能や断熱性能の確保は、当たり前です。そのうえで、“どんな家を作りたいか”ではなく、“どんな暮らしがしたいのか”を共に考えていくことを心がけています」。
自身の経験が少ない中庭を、自宅で体感することでお施主様に語れるようにしたい。そのような、謙虚で誠実な建築家はそう多くはいないのではないだろうか。このような、誠実な建築家をお探しの方は、いちどコンタクトしてみることをお勧めしたい。
間取り図
基本データ
| 作品名 | K-House kose town |
|---|---|
| 所在地 | 佐賀県佐賀市 |
| 敷地面積 | 271.24㎡ |
| 延床面積 | 141.79㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
設計者情報
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