
1階は光あふれる生活空間、2階は大屋根に守られた完全プライベート空間。
里山の環境にとけ込む、平屋のような2階建て。
里山の風情に包まれた立地に馴染む、大屋根の家を構想
土地が広いため、平屋で伸び伸びとした暮らしをと提案すると、T様から「階段のある暮らしがしたい」と要望があった。T様は小さい頃から平屋暮らしだったため、家の中に階段のある暮らしが、ある種、憧れでもあった。加えて、代々住まわれている家柄ということと、周辺環境に馴染みのある建物にしたいと考え、大屋根の格式ある形と平屋をリンクさせて、外見からは平屋に見える2階建ての家を構想。2階は広い小屋裏のような空間とすることで、平屋のような高さ関係を取った。
2階の屋根勾配は45°という急角度で、屋根がそのまま壁にもなっている。2階に窓はほぼなく、外が悪天候で荒れていても、ほとんど気にならず、閉じこもれる空間にした。それはまるで屋根に守られているかのよう。窓がない2階の採光性を確保するために、吹き抜けを通して1階から光を取り入れ、天井に反射させることで明かりをとることに。そのため、天井は光が反射しやすい真っ白にした。
また、同じ敷地内に暮らす、お祖父様からは「40坪以上にしてほしい」、お父様からは「贈与税対策も含めて耐震等級3をとってほしい」との要望も。2階まで光を届けるためにリビングの窓はできるだけ大きくと考えていたため、それらの要望を反映するために、大きな窓をバランスよく配しつつ、壁はどうやってつくるのがよいかなど、構造計算も実施して設計を進めたという。
「心の距離が近い人ほど上に」というコンセプトをカタチに
さらに、T様ご夫婦の好きなイメージや生活のリズム、大事にされていそうな時間などを聞くなかで、ダイニング・キッチン・リビング、奥様がお花をさわったり・ピアノを演奏したりと趣味の時間を楽しめるアトリエなど、生活スペースの配置を建物内の外周に持ってくることに。2階への採光として重要なリビングをはじめ、窓はできる限り大きくして、日中は常に明るい外光を浴びながら暮らせる設計にした。「お風呂は15分ぐらい。あんまりゆっくり入らないので」というT様の生活スタイルからも、お風呂、トイレなどのサニタリーは、自然と建物の中央部へと集まるカタチに。玄関から上がってすぐの場所には、広いウォークインクロゼットや、階段下スペースを有効に利用してコートクロークも設置。T様ご夫婦は共働きのため、家事効率を高める生活動線も無視できない重要なポイントだった。
また、自然あふれる周囲の環境に対して、T様の要望をそのまま反映すると屋外と密接になりすぎてストレスになる時もあると思い、距離をおけるようにと、玄関土間からスキップフロアで1階フロアへ上がり、さらに奥のリビングへ、また2階へと、屋根(天井)に体が少しずつ近づいて、守られていくような流れも作った。それは、野崎さんが導き出した「心の距離が近い人ほど上に」という提案コンセプトをカタチにした家だ。窓を大きくして外との関係性を高めた1階、大きな屋根に守られた家族だけのプライベート空間とした2階が、暮らしの中にバランス良く溶け込んでいく。
デザイン面でも、SNSの画像を一緒に見ながら、気になる画像を選んでもらうなどして、趣味や嗜好などをヒアリングするなかで、自然素材が好きそう、白いプレーンな空間が好きそうなど、T様ご夫婦の趣味や嗜好を感じ、日常的な会話の中で「こないだ野菜をもらってね…」と言われると、「じゃあ、野菜をストックできる場所があったら便利だな」と考える。ちょっとした会話の中からもT様ご夫婦の暮らしのスタイルをイメージして、暮らしの快適さに寄り添った家をとことん追求した野崎さんの提案は、「ほぼ提案通りのプランで建てられました」とT様ご夫婦も納得。理想を超えた住まいが叶えられたのだ。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 千葉県茂原市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 964.56㎡ |
| 延床面積 | 151.64㎡ |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | T邸 |
撮影:Sasakura Yohei
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

心地いい風が入る、伸びやかなリビング。 バリアフリーの平屋はゆとりある空間が魅力
空き家となっていた奥さまの実家を建て替えることにしたIさまご夫妻。違う場所にお住まいのお母さまがときどき来られたときのことを考え、バリアフリーの家をつくることにしたという。とはいえ、基本的にはお二人で住まわれる家。絶妙な空間のつくり方により、ご夫妻とお母さま、皆にとって住みやすい家になった

趣味もフロアも悠々!一人暮らし「ならでは」の暮らしと家づくり
間仕切りがなく、全てがつながった巨大なワンルームのような一軒家。一人暮らしを楽しむK邸だからこその開放的なレイアウトが、この家の特徴的な個性であり魅力となっている。住まい手の希望する暮らし方や使い方にしっかり寄り添い、形にする建築家・久保田鏡湖さんの家造りに迫る

網戸から透けて見える中庭。 豊かに暮らす住まい手の魅力がにじみ出る家
区画整理によって生まれた、新しい住宅地。周辺に家がない状況で、要望を叶えつつ、将来どんなふうに近隣の家が建っても住環境に影響を受けないプランを考えなくてはならなかった。建築家の箕輪さんが出した答えは「中庭」。外からは想像できない、明るく開放的な庭が中心にある、豊かに暮らせる家ができた。

その土地を知り尽くした設計! 自然と共存し、暮らしを継ぐ家
いまだ自然あふれる東京郊外。その土地に住み兼業で農業を営むSさんは、家の老朽化により二世帯住宅への建て替えを考えていた。しかし、建て替えには難しい敷地条件があり、建築家の大沼徹さんに相談。谷あいという個性豊かな土地で大沼さんが実現した、農家という昔ながらのファクターを受け継ぎながらの新しい家づくりとは?

快適に暮らす、子どもが遊ぶ。 大きな木の下で家族が集う、秘密基地
「秘密基地のような家」がテーマのN邸。中心に尖った屋根を擁する個性的な外観もインパクトがあるが、屋根の下にはなんと「大きな木」があるという。設計した井上孝紀さんは、その木の下に家族が集う様子を思い描き、小さなお子さまがいらっしゃるNさまご家族の皆が住みやすい家をつくり上げた。

親子三代で、星が見える家に住む家族は、ぜったい幸せ!
とある住宅地の一角に、道行く人の目を引く外観の建物ができました。まっ白な外壁に散りばめられた大小の窓枠が特徴的な二世帯住宅です。名付けて「マドワクの家」。この家には外からの見栄えの良さはもちろんのこと、室内にも、狭い敷地に、6人の大人が快適に暮らせるための工夫がたくさん詰まっていました。

3つの動線がすべてのエリアを繋ぐ家。 低コストで理想を叶える分離発注方式とは?
「北中の家」は、お施主さまが岡さんの自邸を気に入り、設計を依頼した家だ。自邸のエッセンスをベースとし、ライフスタイルと要望を上手に掛け合わせて豊かに、快適に暮らせる家を実現した。お施主さまと岡さんは、仕事上のパートナー。岡さんが手掛ける「分離発注」方式での家づくりも紹介する。

妻の趣味と夫の仕事を両立し、快適な暮らしも叶えた建築家の自邸
偶然に紹介された土地が運命の出会いとなり、設計事務所兼自邸を建てたいという気持ちがふつふつとわき上がったアトリエ住之舎の角野さん。ところが、奥様は土地に縛られるのがイヤで、持ち家にはかなり否定的だった。諦めきれない角野さんが、奥様を納得させ、ついに念願の一軒を完成させるまでの経緯を伺いました。

3つのテントを備えた、行き止まりない空間 キャンプを楽しむように住まう家
関東から岡山県へ移住、家を新築することにしたお施主さま。建築家の尾山さんはキャンプを通じてこの土地を気に入ったというお施主さまのために、まるで大きな樹の下にテントを張った風景のような空間を家の中につくり出した。雑多なものがしっくりと収まり、暮らしを楽しめる家はどのように叶えられたのだろうか。
