メキシコの風を感じるハンモックでゆらり。
好きなものと暮らす、土間と吹抜けのある家

コーデザインスタジオの小嶋直さんが設計した『カーサ・コンコルディア』は、明るく陽気なメキシコらしさと、ホッと落ち着く日本らしさが調和した住宅だ。Nさまご一家が毎日楽しく暮らすこの家には、どのようなストーリーがあるのだろうか?

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希望は「ハンモック生活」
メキシコと縁のあるご一家の住まい

Nさまご一家は、メキシコ人のご主人と日本人の奥さま、10代のお子さま2人の4人家族。埼玉県川口市内に所有する戸建てを建て替えることになったとき、真っ先に相談したのは、かねて親交のあったコーデザインスタジオの小嶋直さんだった。

小嶋さんといえば、暮らしに対する施主の思いを何よりも大切にし、楽しく豊かな住まいをつくってくれると評判の建築家。施主の好きなことやこだわりを話してもらう時間をたっぷり取るのが小嶋さんのスタイルで、今回も気軽な雑談のようなヒアリングから計画がスタートした。

そこで出てきた主なキーワードは、土間、薪ストーブ、そして「ハンモック」「メキシコ」「日本らしさ」。後半3つは若干とりとめがないように感じるが、そこにはちゃんとストーリーがある。

聞けば、奥さまはメキシコに留学経験があり、そのときにご主人と出会って結婚に至ったのだそう。そうした経緯もあって奥さまはメキシコが大好きで、著名な建築家であるルイス・バラガンの作品のようなメキシコらしさのある空間を望んでいた。

またご主人は、メキシコ国内でもハンモックで生活する習慣のある地域の出身で、内外のあちこちにハンモックを吊るせる住まいを希望。一方で「ここは日本だから」と、日本らしいテイストも望んでいたという。

日本人の奥さまがメキシコらしさを望み、メキシコ人のご主人が日本らしさを望むとは、お互いの国への愛情やリスペクトを感じられ、なんだかとても微笑ましい。これらの要望を小嶋さんはどのようにしてかなえたのだろうか?
  • 白壁と木で仕上げられた外観。「日本らしさ」という要望に応える切妻屋根は、構造の木を見せた軒天が日本らしい建築様式を表現するとともに、白い外壁を雨から守る役割も果たす。1階は屋根付きスペースがあり、多少の雨なら車から玄関まで濡れずに行ける。自転車を置くのにも便利

    白壁と木で仕上げられた外観。「日本らしさ」という要望に応える切妻屋根は、構造の木を見せた軒天が日本らしい建築様式を表現するとともに、白い外壁を雨から守る役割も果たす。1階は屋根付きスペースがあり、多少の雨なら車から玄関まで濡れずに行ける。自転車を置くのにも便利

  • 玄関を入ると薪ストーブのある広い土間。南に位置するダイニング、その先のウッドデッキテラスまで視線が通り、開放感たっぷり。土間は南から入る陽光や薪ストーブの暖かさを蓄熱する効果もあり、効率的に暖を取れる。この土間は奥さまが仕事でハンモックを展示するのにも使える

    玄関を入ると薪ストーブのある広い土間。南に位置するダイニング、その先のウッドデッキテラスまで視線が通り、開放感たっぷり。土間は南から入る陽光や薪ストーブの暖かさを蓄熱する効果もあり、効率的に暖を取れる。この土間は奥さまが仕事でハンモックを展示するのにも使える

  • 玄関は北側に配置。上部は吹抜けで窓があり、安定した北の光が通年入る。玄関が明るいのはうれしいポイント

    玄関は北側に配置。上部は吹抜けで窓があり、安定した北の光が通年入る。玄関が明るいのはうれしいポイント

居心地抜群のハンモックがいっぱい。
距離感がちょうどいい、開放的な吹抜け空間

メキシコには自分の住まいに名前をつける風習があり、Nさまご一家は完成した家を『カーサ・コンコルディア(調和)』と名付けた。

『カーサ・コンコルディア』は、1階が薪ストーブのある土間と、ダイニングが吹抜けになったLDK。2階はフリースペースと家族の個室という間取りである。

ちなみに、土間は小嶋さんが得意とするスペースで、この家でも玄関からダイニングまで続く広い土間を計画。薪ストーブの前でくつろぐだけでなく、奥さまが副業で輸入販売しているメキシコ製ハンモックの展示ルームとして使うこともできる。

加えて、「土間が広く吹抜けもあるので、寒くならないように」と、外断熱でG2レベルの断熱性能を確保。快適性にも配慮して用途多彩な土間をつくってくれるのは、「使える土間」「楽しい土間」を多数生み出している小嶋さんならではだろう。

さて、そんな『カーサ・コンコルディア』には、要望の「ハンモック」を吊るす場所がたくさんある。しかも、そのどれもが、すごく居心地がいい。

例えば薪ストーブの前のハンモックでは、薪のはぜる音を聞きながら本を読む素敵な時間を過ごせるし、リビングの窓際のハンモックは日向ぼっこにぴったりの心地よさ。2階のフリースペースのハンモックは吹抜けを介して家族の様子を感じつつ、ちょっと1人になれる隠れ家的な居心地が楽しい。また、1階に設けられた広いウッドデッキテラスのハンモックは、緑を眺めてくつろいだり、日光浴をしたりと、リゾート気分満載の使い方ができる。

ハンモックを吊るす場所はそれぞれ異なる魅力をもっており、特等席を1つ選べといわれたら困ってしまう。それは、動線の妨げにならず、かつ、ハンモックで気持ちよく過ごせる場所を小嶋さんが的確に選んでいることのあかしでもある。

ハンモック以外にも、居心地のよいスペースはまだまだある。吹抜けのダイニングは南面の上下に大きな窓があってとても明るく、昼は青空、夜は星空を眺めながら食事ができる。リビングもテラスに面した爽快な空間で、一角にはスギの一枚板でつくられたカウンターコーナーも。

注目すべきは、ハンモックも、そのほかの居場所も、家族の一体感と独立感のバランスが絶妙なことだ。「一緒にいなくても家族の気配を感じつつ、それぞれが好きな時間を過ごしています」と、Nさまも大満足の住み心地となっている。
  • 南のウッドデッキテラスに面した開放的なLDK。ダイニングは吹抜けで、明るい光がそそぎこむ。照明はルイスポールセン、ダイニングの椅子はYチェア、奥のブルーの椅子はメキシコの人気デザイナーの作品。漆喰の白壁、土間、木を組み合わせた内装にモダンな家具が映える

    南のウッドデッキテラスに面した開放的なLDK。ダイニングは吹抜けで、明るい光がそそぎこむ。照明はルイスポールセン、ダイニングの椅子はYチェア、奥のブルーの椅子はメキシコの人気デザイナーの作品。漆喰の白壁、土間、木を組み合わせた内装にモダンな家具が映える

  • ダイニング。画像上部は2階のフリースペース。吹抜けを介して2階にいる家族の様子がそれとなくわかる

    ダイニング。画像上部は2階のフリースペース。吹抜けを介して2階にいる家族の様子がそれとなくわかる

  • 吹抜けで2階との一体感を高めたダイニング。画像正面はキッチン。薪ストーブの脇の通路にはパントリーとして使えるたっぷりの収納もある。この通路はキッチンの奥に位置するバスルームなどの水まわりにつながり、家事動線がとてもよい

    吹抜けで2階との一体感を高めたダイニング。画像正面はキッチン。薪ストーブの脇の通路にはパントリーとして使えるたっぷりの収納もある。この通路はキッチンの奥に位置するバスルームなどの水まわりにつながり、家事動線がとてもよい

  • 2階のフリースペースもハンモックで過ごせるスポットの1つ。本棚や収納として使える造作棚もあり、今ではすっかりご主人のお気に入りの場所になっている。吹抜けを介して1階の家族とのコミュニケーションも取りやすい

    2階のフリースペースもハンモックで過ごせるスポットの1つ。本棚や収納として使える造作棚もあり、今ではすっかりご主人のお気に入りの場所になっている。吹抜けを介して1階の家族とのコミュニケーションも取りやすい

友人参加のDIYで、つくる工程も思い出に。
「家で過ごそう」と思える楽しい住まい

Nさまご一家の大切な要望だった「メキシコ」「日本らしさ」は、内装・外装の仕上げに色濃く表れている。

フローリングはオーク材、壁や天井は漆喰を使用しているが、小嶋さんはリビングの一部や主寝室の壁に、別の塗料で鮮やかなカラーを採用。明るく陽気なメキシコらしさを表現した。一方、天井は一部に木を使い、屋根は切妻、軒天は垂木や梁を見せるなどして日本らしい表情も添えている。

これらの仕上げのうち、漆喰塗装はDIYで行った。小嶋さんの提案で施工ワークショップ形式とし、当日は友人ご家族も大勢集まり、みんなでワイワイ楽しみながら作業したという。小嶋さんが設計する住まいの話を伺っていると、いつも「楽しそうだなあ」と感じるのだが、この家では施工段階から楽しさいっぱいだったようだ。

『カーサ・コンコルディア』で新生活を満喫中のNさまからは、「週末に光の差すリビングで映画を見たり、ハンモックで読書をしたり、子どもと一緒に料理をしたり……。以前は外出することばかり考えていましたが、今は家でゆっくり過ごす時間が大好きになりました」と、うれしいメールが届いたという。

そしてメールの最後には、Nさまのこんな言葉が。

「小嶋さん、本当に、本当にありがとうございました。これからも素敵な家をたくさん建てて、みなさんに幸せを届けてくださいね!」

次に幸せを受け取る家族はどんな家に住むのだろう。こちらまで楽しみになってくる。
  • リビング。壁の一面はメキシコらしい鮮やかな黄色で塗装。階段は1段目を踊り場のように広く取り、窓際まで延ばしてテレビ台に。ハンモックは南のウッドデッキテラスに近い場所に設置した。この家にあるハンモックはメキシコの職人さんの手編み製。丈夫で見た目も味わい深い

    リビング。壁の一面はメキシコらしい鮮やかな黄色で塗装。階段は1段目を踊り場のように広く取り、窓際まで延ばしてテレビ台に。ハンモックは南のウッドデッキテラスに近い場所に設置した。この家にあるハンモックはメキシコの職人さんの手編み製。丈夫で見た目も味わい深い

  • リビングからダイニングを見る。リビングの床は木目が粗めのオーク材。ダイニングの床はモルタルの土間仕上げ。壁は漆喰で、天井は漆喰と木。自然素材がバランスよく使われ、広い1室空間でも単調な印象は皆無。家具がなくても映えるほど豊かな空間に仕上がっている

    リビングからダイニングを見る。リビングの床は木目が粗めのオーク材。ダイニングの床はモルタルの土間仕上げ。壁は漆喰で、天井は漆喰と木。自然素材がバランスよく使われ、広い1室空間でも単調な印象は皆無。家具がなくても映えるほど豊かな空間に仕上がっている

  • LDKとひと続きのウッドデッキテラスにもハンモックが。奥の一部は石張り、手前は芝生で表情豊かな庭に

    LDKとひと続きのウッドデッキテラスにもハンモックが。奥の一部は石張り、手前は芝生で表情豊かな庭に

撮影:金田幸三

基本データ

作品名
カーサ・コンコルディア
施主
N邸
所在地
埼玉県
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
192.01㎡
延床面積
116.86㎡
予 算
3000万円台