高低差のある立地を生かしたインナーテラス
緑あふれる景色も夏の花火も暮らしの一部に

土地形状を生かした設計が得意な「NATURE SPACE」。今回は、敷地に高低差のあるI様邸で、その高低差を逆手にとって生かした実例をご紹介。2階LDKや1階インナーテラスをはじめ、独創的な外観デザイン、回遊動線、採光に対する工夫等、アイデアをふんだんに取り入れた設計力の高さがわかる。

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三角、四角を組み合わせた段違い屋根
積木を積んだような外観の「ツミキの家」

細長い長方形を2つ、その上に四角、さらに三角、四角…、まるで積木を積んだような個性的な外観のI様邸。土地の形状が独特で、段差のある敷地、南東側すぐ目の前の小高い丘には緑溢れる広場があり、そんな立地を生かす独創的な家づくり計画がスタートした。

NATURE SPACEは、敷地の高低差などもうまく生かした立体的な空間設計が得意。外壁を白一色で統一し、一見、RCのように見えるが実は木造だというI様邸でも、この形を実現するため、屋根の骨組みを工夫したり、外壁の捩れを利用したりすることで、耐震性能のことにもしっかりと配慮したという。

「現場管理、施工をする上で、設計の細かいこだわりや納まりはとても難しいので、いつも決まった大工さんに任せています。技術力も高く、設計の特長をちゃんと理解してくれるので安心できますから」と設計担当者。I様邸では、2階部分を支える脚ともなる1階の外壁をあえて捻れさせているが、この捻れをうまく施工することが難しく、大工さん泣かせだったとも。

そんなI様邸は、敷地の高低差をうまく利用して、1階は半地下のようなイメージで、中央に洞窟のようなインナーテラス&ガレージを、その両側に居室と玄関を配し、家族の暮らしの中心となるLDKは2階に配している。1階のインナーテラスはコンクリート土間で、アウトドアリビングとして中庭的に利用したり、インナーガレージとして利用したりすることもできる。隣地が小高い丘のようになっているため、この空間は、隣地から少し目線が下がり、外からの目線を気にすることなく利用できる半地下のプライベート空間ともなっている。

このインナーテラスと繋がる玄関には広い土間があり、シューズクロークやI様の趣味的な空間として利用。この空間をより広く見せるため、ここから2階へと続く階段はスケルトンに。一方、玄関の反対側には、子ども部屋として利用している2つの居室もあり、掃き出しでインナーテラスと繋がっている。

「楽しい空間の使い方を常に考えていて、自分自身も楽しみながら設計する気持ちを大切にしています。そうじゃないと、お施主様も楽しくないので」と担当設計士。延べ床面積の数字以上に空間を広く感じてもらえるような空間使い、採光性、動線、豊富な収納など、暮らしやすさにも配慮している。
  • 北西側の外観。オープンなイメージの南東側とは逆に、北西側は小窓を設けたクローズなイメージ

    北西側の外観。オープンなイメージの南東側とは逆に、北西側は小窓を設けたクローズなイメージ

  • 南東側の外観。テラスの開口が窓のようにも見える個性的なデザイン。建築家のこだわりのひとつで、このデザインを大事にしたかったため、お子さまの転倒防止には網を張るだけにしてある

    南東側の外観。テラスの開口が窓のようにも見える個性的なデザイン。建築家のこだわりのひとつで、このデザインを大事にしたかったため、お子さまの転倒防止には網を張るだけにしてある

  • 1階のインナーテラスは夜間、照明でライトアップされ、白一色の天井や壁に反射する光が、幻想的な模様を紡ぎ出す

    1階のインナーテラスは夜間、照明でライトアップされ、白一色の天井や壁に反射する光が、幻想的な模様を紡ぎ出す

立地環境を生かした眺望の良さを
日々の暮らしに取り入れた設計

I様からのご要望は「個性のある家にしたい」ということ。また、光が入るリビング、開放感、家族を感じられる空間、家に居ながらにして地元の名物花火を観たいとも。2階のリビングは勾配天井にして、床から最高部まで約3.5mもある開放感たっぷりの空間に。段違い屋根の段差を利用した吹き抜け上部の窓からは、優しい光と風がたっぷりと室内に注ぎ込まれる。また、家の南東側に広がる緑の風景も一望でき、別荘にでも居るかのような、ゆったりとした時間を過ごすことができる。

NATURE SPACEは基本がシンプルなため、お施主様の好みなども反映しやすい。ウォールナット素材が好きと言うI様の嗜好に応えて、リビングの床や玄関から続くスケルトン階段の踏み板など、随所にウォールナット材を採用し、木の風合いあふれるナチュラルテイストのインテリアも、すべてがまとまって見えるようデザインされている。

1階~2階をタテに回遊できる間取りも特徴的で、1階のインナーテラス~玄関土間~リビングへの階段~2階LDK~反対側の階段~1階子ども部屋~インナーテラスと、タテにぐるりと回ることができる。他にも、キッチン横には収納力たっぷりのパントリー、玄関土間の奥にも広いシューズクローク、階段の側面には棚を付けて階段収納にするなど、快適な暮らしを叶える動線、収納面も考え抜かれている。キッチンの奥に設けた応接用の小さな和室は、丈の低い格子戸をくぐって入る、まるで茶室のような空間にするなど、細かいところまでアイデアをふんだんに取り入れた独創的なデザインにもなっている。

また、北西側の夜空には地元の名物花火があがるのだが、そんな花火も「家に居ながらにして観たい」と。そのため、北西側にも小さめのテラスを設け、壁には花火を観賞するための小さな窓を開けた。この小窓は、わざわざ施工を待って、実際の花火大会の日に花火が見える位置を確認しにきて、サイズや位置を決めたという。

南東側からは広々とした芝生の公園など開放的な緑の風景を、北西側からは夏の夜空を彩る花火を望めるI様邸。立地を生かして、そんな見晴らしの良さも、日々の暮らしの中に取り込んでいる。見る角度によってイメージが変わる外観デザイン、1~2階をタテにも回遊できる動線、採光性、収納力などの快適な暮らしを叶える空間使い、立地環境を生かした設計は、ここでしか建てることのできない、まさに世界で一つだけの住まいが仕上がっている。
  • キッチン正面の壁には大きめのニッチを設け、黒板マグネットを貼り付けている。家族の大切な用事をメモにして貼っておいたり、お子さんが落書きして遊んだりと活用している

    キッチン正面の壁には大きめのニッチを設け、黒板マグネットを貼り付けている。家族の大切な用事をメモにして貼っておいたり、お子さんが落書きして遊んだりと活用している

  • リビング階段は側面に棚を造作して、階段箪笥として利用。また、1階の2部屋の間仕切りの役割も担わせている

    リビング階段は側面に棚を造作して、階段箪笥として利用。また、1階の2部屋の間仕切りの役割も担わせている

  • 目の前に緑が広がる景色を望める開放感抜群の広々としたテラス

    目の前に緑が広がる景色を望める開放感抜群の広々としたテラス

間取り図

  • 1F 平面図

  • 2F 平面図

基本データ

作品名
ツミキの家
所在地
愛知県みよし市
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
146.83㎡
延床面積
113.05㎡
予 算
3000万円台