氾濫リスクがあり、交通量の多い国道に面した難条件の土地を、土木知識と建築の力量で見事に解決したのは、愛知県豊橋市在住の建築家・伊藤啓輔さん。鍵となったのは「室内の通り」という独創的なアイデアだった。そうして生まれたのが、建物に生活が縛られない、可変性と自由度に満ちた大きなワンルームの家。融通無碍な発想が生んだ住まいの秘密に迫る。
この建築家に豊橋駅からもほど近い住宅街の国道沿いに建つ伊藤邸。4年前の川の氾濫でこの交差点が冠水したという。
photo:YASUO HAGIWARA
夜でもそれなりの交通量のある国道。室内の明かりが漏れるとともに、2階天井の現しの木組みの美しさがくっきりと見える。
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浸水対策として高基礎の上に建てられた倉庫のように感じられる伊藤邸。奥三河産の杉板の経年変化も楽しめる。
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玄関は、コンクリート階段を上った先に。階段部分は建物本体と切り離すことで熱効率やシロアリ対策となるほか、異空間へ飛び込むイメージも。軒を深くとることで建物の構造面の補強にも。
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玄関は上からの光が降り注ぐ明るい空間。視線の先に一直線に玄昌石敷きの床がのびる。外の道路と平行な、「室内の通り」だ。
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杉材に包まれた温もりある空間LDK上部は、天井が低く籠るような空間。一方の「通り」の上部は吹き抜けで光が差し込む。このメリハリがより開放感を演出している。
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階段をあえて中央にもってくることで、左右対称に。上からの光が吹き抜けとスケルトン階段から降り注ぐ。
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キッチンはシンプルながらも、回遊動線やパントリーもあり利便性が高い。ここも扉のある収納を置かずオープンシェルフに。
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LDKと「通り」は段差のないシームレスに。1階と2階が吹き抜けで繋がる大ワンルーム。
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「通り」の奥には、オープン型の2ボウルの洗面所。一番奥には外が見える大きな窓で抜け感を演出。横になれる大きなベンチでお籠り空間を実現。
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トイレの裏側がバスルーム。ランドリーコーナーの奥には大容量のWICを設けた。
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