金沢から大阪への移住を決めたSさんが求めたのは「自然に開かれた住まい」。自作の図面を持参するほど家づくりへの強い想いを託したのは、デザインと施工を両立する建築家、中土居宏紀さん。施主の真の想いを丁寧に掘り下げ、想像を超える仕事ぶりで信頼を得た中土居さんは、隣人も驚くほどの広がりと光あふれる豊かな空間を生み出した。
この建築家に
2階は約40㎡の大空間。ひとつながりの空間でありながら、天井高や仕上げが異なるいくつもの居場所が点在し、家族の気配を感じつつも、それぞれが自由に過ごすことができる。陽光や外の景色が季節や時間によって表情を変える。その移ろいもまた、この家の楽しみの1つ。
現しの屋根と室内から伸びるカウンターによって、その先の広い空へと視線が抜けていく。壁を磨き漆喰仕上げの壁の仕上がりをみたSさんは、テレビを壁掛けにせず、プロジェクターで投影することにし壁の連続性を活かすことにしたという。
キッチンはIKEA製に造作を加えたハイブリッドでコストと機能性を両立。キッチンで作業をしながら、学習コーナーや書斎、インナーテラスの先の景色まで見渡せる。
「床座で過ごしたい」というSさんの要望に応え、キッチンとLD(茶の間)部分には段差を設けた。キッチンに立つ人と茶の間に座る人の視線がちょうど合うような絶妙な高さカウンターテーブルは朝食やデスク作業に重宝しているという。
住まいにはSさんが新居の内装に合わせて購入した良質なラグや円卓、家具が置かれている。Sさんのインテリアセンスも、住空間に大いに反映されている。
茶の間の脇の天井高が低く抑えられたスペースは壁付けのデスクを設け、学習コーナーとした。高断熱のため、夏と冬でもこのエアコン1台の弱運転で快適だという。
2階の奥まった部分には、Sさんの書斎となるお籠りスペース。巾木とデスクの高さを揃えたり、外壁に似た左官仕上げとするなど、別ゾーンを意識させるつくりだ。
学習コーナーと書斎の上はロフトに。大容量の収納庫としてだけでなく、お子さんの隠れ家としても重宝するに違いない。
現しの屋根と室内から伸びるカウンターによって、LDKの延長のようなインナーテラス。テーブルを出して家族団らんの時間を過ごしたり、1人で憩いのひと時を過ごす場だ。2mの庇によって西日を軽減している。
構造 耐震等級3
断熱 断熱等級5








