
敷地の内外、庭と建物、建物内の空間…。
境界を限りなく減らして「つなげる」ことで、人も街も伸びやかに暮らせる家
外と内の境界を感じさせず、地域の人にも喜ばれる家を
さらに、この土地の歴史を調べると、もともと、100年前はこのあたり一帯が農地だった。今は準工業地域となり、コンクリート建物の商業施設も多いが、かつての土の地面、自然豊かだった風景を少しでも復活させられれば、K様ご家族のみならず、地域に住む人たちにとっても、やさしい住宅風景となるのでは? 鳥居さんの頭に浮かんだアイデアは、そんな周辺環境を含む「ボーダーレス」な住まいのカタチだった。「どうせ建てるなら、自分たちだけでなく、近くを歩く地域の人にとっても『緑がきれいだね』と言ってもらえたり、憩いの気持ちを届けられるようにしたい。特に、外観、外構など、アウトサイドは町の人も毎日のように目にする景色なので、そこの部分にも責任を持ちたいなと思いました」。
土の地面に芝を張ったり、砂利を敷いたりと、なるべく自然を感じる素材を使用。また、敷地に対して、建物のどこがオモテでどこがウラ、どこが正面などをはっきりさせず、塀を設けずに植栽で目隠しをすることで、境界を感じさせない設計も意識したという。
建物はセットバックすることで庭をより広くとり、ダイニングから掃き出し窓でつながる庭は、まだ小さいお子さんが、家の中から外までを伸び伸びと走り回れるようにした。
「それほど広い家ではないので、空間に開放感を生むために、いろいろな空間をつなげてしまうというのも手なんです」と鳥居さん。建物の内部は、タテ、ヨコ、斜めに広がりを感じられる空間に。家の中から庭が見えることで、内と外の境界を感じさせず、リビングはスキップフロアに配置することで、1階のダイニング~リビング~2階の子ども部屋までが、斜めにつながる一体空間だ。玄関とダイニングも一体に。玄関を開けると、そこがダイニング空間で、それは勝手口のようでもあり、もしくは玄関のない家のようでもある。
「つなげる」ことで、空間の広がりを演出
また、リビング側にある2階洋室には、大きな窓をはめこみ、吹き抜けを通して1階までを見下ろせる。「ここに大きな開口部を設けておけば、将来、お子さんが独立して、リノベーションをしようと思ったときに、ガラス外して空間をつなげるなど、いろいろなアレンジが可能になります」と、将来的な間取りの可変性も意識した。
「いろいろな空間をつなげる」という発想は、スペース効率や、造作する家具・建具にも生かされている。2階の廊下の壁には、一面にクロゼットを配置。「廊下というただ通るだけの役割の空間を極力なくしたかったので」と鳥居さん。スキップフロアのリビングは、造作したテレビボードが、そのまま窓際のベンチになったり、2階へと上がる階段の一部になったり。「生活していれば、当然、モノは増えていきます。だから家具や建具などもできることなら一体にして、すっきりさせたかったので」。また、普通はテレビボードの上に乗ることはNGなのだが、2階の廊下に対する考え方と同じで、階段のみの役割ではなく、あえてスキップ階段を家具っぽくすることで一体化したのだという。1階のパントリーの戸は引き込みの三枚戸で、中に家電製品や冷蔵庫も置ける広さ。戸を閉めておけば、キッチン周りの様々なモノを隠せて、ダイニング・キッチン空間がよりすっきりと、広く感じられる。設備面でも、オーダーメイドのキッチンはステンレス製の天板に、レンジフードをなくしてすっきりした見た目のデザインにしている。
素材自体にはできる限りお金をかけず、コストを抑えるといのも、施主の予算を考慮した工夫のひとつだ。照明も既製品に工場で製作した真鍮の円盤を使うことで高価にならずオリジナリティーを出している。ダイニングと一体化した玄関は土間にせず、杉板を使用。「ざっくりした素材ですが、ちょっとした汚れなどが後々、味わいに代わっていってくれると思います」。壁材は貼り方を工夫することでカッコよく見せ、「家の中では、裸足で過ごしたいというK様の要望でもありました」という床材には、1階は杉板、スキップフロアのリビングはナラの無垢材で、やさしい足ざわりに。
また、壁や床の塗りは、鳥居さんがK様と一緒になって手掛けたともいう。「自分の家づくりで、少しでも自分の手を掛けることで、より愛着も沸くと思います。完成したときの喜びも、その分、大きくなりますよ」。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 岐阜県岐阜市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 226.92㎡ |
| 延床面積 | 104.36㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | K邸 |
設計者情報
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