「子育て住まい」特集

お子さんの出産や進学を機に、家を建てようと思い立つ方は、大変多くいます。
「家事をしていても、子どもの行動が視界に入るようにしたい」
「子どもをのびのび育てたい」「自然と勉強机に向かうような環境を整えたい」など、
夫婦によって、その想いは様々。
そんな「想い」をカタチにしたこだわりの住まいを、ここでは紹介します。
ぜひみなさまの家づくりの参考にしてください。

遊ぶ、眺める、家族で家を楽しみ尽くす、中庭の存在とは!?

愛知県一宮市 / I邸

 現在の芝生の広場に決まるまでには、砂場やすべり台がある案もあったし、遊ぶための広場と眺めるための広場を分けて、いくつも広場をつくる案もあった。「最初は正方形の案もありましたが、四隅を落として、どの部屋にも面しているようにした方が、より中に庭がある感じが出ます」と渡辺さん。建物全体のバランスを考え、最終的に現在の八角形の芝生の広場に落ちついた。

 遊具は置かないことになったが、子どもたちが思う存分、遊べる場所であることには変わりない。「遊び場という意味を込めて、ここは『中庭』ではなくて『広場』としています」と、渡辺さんは設計図面を指差す。この広場がどんな場所であるのかということは、子どもたちにも直感的に分かったのだろう。

高気密・高断熱と心豊かな暮らしを両立。 ボール遊びも読書も楽しい、吹抜けのLDK

島根県松江市 / 富士見が丘の家

家づくりにあたり、「健康に仲良く過ごせる家」「家の中で子どもがボール遊びをできるような空間」「子どもたちがどこにいても本を読める空間・大きな本棚」という要望をお持ちだったUさま。大輔さんとかおりさんは、これらの要望をどのようにかなえていったのだろうか。

2人はまず1階に、勾配天井のLDKを計画。「ボール遊びができる」に応えるために天井の高い吹抜けとし、ペンダントライトは入れず間接照明とスポットライトを適宜配置していった。このとき本好きなご一家ということを考え、夜でもストレスなく本を読める明るさを丁寧に計算。施主のライフスタイルに細やかに心を配る2人の設計姿勢がうかがえる。

家族がつながる、集落とつながる 新旧の住宅の良さを再編集した奄美の家

鹿児島県大島郡龍郷町 / 奄美大島の家型

小野さんはこれまで、こういった奄美の伝統的な建築の要素を作品にいくつも取り入れてきた。例えば「住倉」と名付けられた別荘では、高温多湿対策としてつくられてきた高倉(高床式倉庫)をモチーフに、小屋裏に40畳のがらんどうの大空間を生み出した。小屋裏の床は、すのこ状になっており、トップライトからの光を1階に引き込むほか、風の通り道になり、過ごしやすい環境となっている。子供が自由に遊びまわったり、友人・知人が集まり酒を酌み交わしたり、波の音を聞きながらのんびり寝転んだりと、いくつもの楽しみ方があるスペースだ。建築工事中にご近所の方から「昔ながらの家の感じがいいねー」と声をかけられたこともあるのだという。

小野さんは、奄美の伝統的な建築を、当時のままの使い方で再現するのではなく、現代の暮らしに合わせ進化させたのだ。

大きな庇の下の広々ウッドデッキ 家族が寛ぎ、遊び、集う大らかな暮らし

埼玉県蓮田市 / 麻のシャツのような住まい

このウッドデッキには大きな庇がかかっている。この家を訪れたお母さまが、ベニシダレモミジを背景にしたウッドデッキを見て「まるで能舞台ですね」と言ったという。それほど、庭と一体化した美しさをもっている。

実はこの庇は美しさのためではなく、高い実用性に基づいている。夏の強い日差しはもとより、雨も凌いでくれる。また、3階建ての隣家からの視線を遮る役目も果たす。朝は、庭の樹々を見ながらコーヒーを一服、昼には、親戚や友人が集まりBBQ、夜には、鈴虫の音を聞きながらお月見と、第二のリビングとして重宝するほか、お子さんたちがトランポリンやハンモックで遊ぶ場としても活用できる。
増木さんは、このウッドデッキで「家族の大らかな暮らし」を実現してみせたのだ。

実家に増築の形で独立した家を 子育て環境を充実させる「増築」の選択肢

富山県高岡市 / 荻布の家

1階は寝室や子供部屋、水回りを集め、特に子供たちが実家と行き来がしやすいゾーニングとした。この1階には建物を凹ませるようにして作った坪庭がある。建物が狭くなってしまうが、この坪庭が広さ以上の効果を生んでいる。坪庭に面して寝室、お風呂場、洗面脱衣室が取り囲んでいるが、坪庭からの光でそれらの空間が明るいのだ。隣地に対しては、格子状のフェンスで目隠しされているため、風は通すものの視線は遮ってくれる。お風呂場はまるで、露天風呂のような気分にさせてくれるほど、開放感抜群だ。

階段を上り2階に進む。階段上のハイサイドライトからの光が降り注ぎ、暗くなりがちな階段を照らすとともに、時間の推移によって作り出される陰影が変わり、目を楽しませてくれる。

2階はLDK。大きな窓から光を採り込み、視線の先に遠く立山連峰が望めるという。

家族が1つになる、1人にもなれる家 「ズレ」によってできる家族の「新たな間合い」

京都府与謝郡与謝野町 / マルハウス

階段を上っていくと見えてくるのが、ファミリールーム。造り付けのデスクもあり、子供たちが勉強やお絵描きなど多目的に使える。子供たちが集まる場でもあり、1人になれる場でもある。

階段には、奥様のコレクションのミニカー置き場も。
「奥様が、長男が生まれた時から集めてきたものです。子供たちの成長の記憶を何か建物に刻みたいというお話があったので、ここにスペースを設けることを提案しました」と大園さん。

さらに進んでいくと、ここにも「ズレ」が。廊下を真っ直ぐではなく、あえて45度振った形にした。こうすることで、まずは廊下に距離を持たせることができる。その先にある3つの子供部屋との領域分けを可能とした。また、廊下の南北のスペースも有効活用できる。南側に家族皆で使うWICを設けた。形は平行四辺形となるが、居室ではないため不便はない。むしろ広さを確保できた。一方の北側には、大きな窓を設置し、1階へと光を導く吹き抜けとしたのだ。1階のダウンリビングの上の「ズレ」が三角なのは、この廊下の形に由来している。

全てがデザインされた愛せる我が家。 家族の居場所を照らす「ひかりの木」

神奈川県横浜市 / ひかりの木の家

「家事効率」という要望へのアンサーも完璧だ。洗濯機を置く洗面・浴室はキッチンのすぐそばに配置。洗面室には着替えをしまうリネン棚やアイロン台も造作した。おかげで一連の家事が水まわり周辺で完結し、かつ、リビングや庭で遊ぶお子さまに目が届く理想的な間取りに。また、3層目の『奥の間』にはクラと呼ばれる大きな床下収納も設け、「収納力」も見事にクリア。

日頃から、「既成概念にとらわれないことが大切だと思います」と話す岡本さん。S邸は人目を引く存在感があり、全ての要望が反映されて住み心地も眺望もパーフェクト。だが、何階建てと表現すればいいのか、何LDKと表現すればいいのか迷ってしまう不思議な家だ。