友人が集まるバーも、二世帯も。
50代後半夫婦の夢をかなえた理想の住まい

工藤宏仁さんが50代後半のご夫妻のために設計したのは、二世帯住宅としても使える豊かな家。天井が高く明るいLDK、友人と憩う会員制バーやゆとりある書斎、こだわりの和室、贅沢な広さのベランダなど、ご夫妻の趣味やライフスタイルを反映した住まいの魅力をお伝えする。

バー、日光浴、PC教室……。
「今」も「未来」も充実させる家

日が暮れるころ、逗子市内の住宅街に立つこの家には、何人もの人がいそいそと訪れる。目的は、この家の施主さまが自宅につくった会員制バーでゆったりお酒を楽しむこと。カウンターの中に立つのは施主さまだ。

この家を設計したのは、鎌倉にアトリエを構える工藤宏仁さん。複数のハウスメーカーとのコンペの結果、スムーズな進行や発想力、デザイン性の高さなどが決め手になり、工藤さんが選ばれた。

50代後半のご夫妻が終の棲家として建てたこの家には、ご夫妻それぞれの夢がたっぷりとつまっている。ご主人の夢をかなえた筆頭は、何といっても1階の会員制バーだろう。お酒や音楽に詳しく交友関係も広いご主人は、かねてから「友人を呼ぶ会員制のバーをやりたい」と考えていたのだそう。念願のバーはご主人が好む和のテイスト。今では気のおけない友人が集まる憩いの場になっている。

また、ご主人は和を取り入れたいという思いから、和室をつくることにもこだわった。凛とした表情の和室は、囲炉裏や簾戸のぬくもりも漂う居心地の良い空間。ほか、ご主人の希望で広いベランダやルーフバルコニーも設けられ、「家で日光浴がしたい」という夢もかなえている。

一方、PCインストラクターとして活躍する奥さまは、明るくモダンなデザインを好む方。奥さまのための書斎は造作棚が多く機能的。白を基調にしたすっきりとシンプルな空間で、PCを複数台置けるゆとりある広さ。将来、自宅で教えることもできるようにつくられている。

ご夫妻の思いをしっかりと形にした住まいだが、実は、この家は二世帯住宅。一世帯は施主さまご夫妻の住まい、もう一世帯は親族や海外留学中のお子さまなどが、そのときの状況に合わせて住むことができる空間だ。

別世帯は専用の玄関や水まわりを設けたこと、かつ、2階の階段近くに両世帯をつなぐドア(鍵つきなので、鍵をかければ2つの世帯は完全に分断される)を設けたことで、「分けても、つなげても使える」可変性の高い住まいになった。

人生100年時代といわれる昨今、50代の後半で終の棲家を建てるといっても先は長い。「今」を存分に楽しめて、将来的にご夫妻のライフスタイルや子世代の家族構成に変化があったときにも対応できるしなやかさは、終の棲家の理想形といえるだろう。
  • 1階メインエントランスの玄関ホール。ホールの正面はお子さまが帰ってきたときなどに使える予備室。予備室の壁には障子を入れた小窓を設け、北側に位置する玄関ホールに柔らかな光が入るようにした。壁には厚みがあるため、小窓に小さなオブジェを置くこともできる

    1階メインエントランスの玄関ホール。ホールの正面はお子さまが帰ってきたときなどに使える予備室。予備室の壁には障子を入れた小窓を設け、北側に位置する玄関ホールに柔らかな光が入るようにした。壁には厚みがあるため、小窓に小さなオブジェを置くこともできる

  • 1階の和室と予備室は、引き戸を開けると1つの大空間としても使える。予備室はお子さまが帰ってきたときや、ゲストが宿泊するときなどに重宝する

    1階の和室と予備室は、引き戸を開けると1つの大空間としても使える。予備室はお子さまが帰ってきたときや、ゲストが宿泊するときなどに重宝する

  • ご主人のたっての希望でつくった1階和室。正統派ながらご主人のイメージカラーとした赤や曲線を取り入れ、洗練された雰囲気に。簾をはめこんだ簾戸(すど)や囲炉裏が心落ち着くぬくもりを醸す

    ご主人のたっての希望でつくった1階和室。正統派ながらご主人のイメージカラーとした赤や曲線を取り入れ、洗練された雰囲気に。簾をはめこんだ簾戸(すど)や囲炉裏が心落ち着くぬくもりを醸す

異なる思いを受け止めた
愛着の湧く設計&デザイン

ご主人も奥さまも大満足の住まいだが、プランニング中は工藤さんが考えあぐねるシーンもあったという。アクティブで和の趣を好むご主人と、仕事で忙しく飛び回りモダンなものを好む奥さまは、新居でやりたいことや好みが異なる点も多々。そのためご主人と奥さまの意見が合わず、打ち合わせが平行線で終わることも少なくなかったのだ。

そこで工藤さんは双方の思いに応えようと、邸内に「ご主人エリア」と「奥さまエリア」をつくるアイデアを提案。施主さまも前向きになってくださりプランに取り入れることに。

完成した住まいは、約2/3が施主さまご夫妻の世帯、残りが別世帯というつくり。ご夫妻の世帯のうち、1階はご主人エリアと予備室。2階は奥さまエリアとLDK、寝室という構成だ。

面白いのは、内装のテーマカラーをご主人エリアと奥さまエリアで分けていることだ。ご主人エリアである1階と、ご主人の希望を反映した寝室には赤を、2階に上がってすぐの奥さまエリアにはブルーを使っているのである。

そして奥さまエリアと寝室の間にあるLDKは、壁の一部に赤とブルーを使用。キッチンを挟んで赤とブルーが向き合うデザインになっている。

「多趣味でご友人も多いご主人は情熱的な赤のイメージ。ご自分の考えをしっかりもった奥さまは冷静なブルーのイメージ。『それぞれの魅力をもったおふたりが出会い、一緒に過ごすリビング』という意味を込めて、リビングには赤とブルーを取り入れました」と工藤さん。施主さまご夫妻も、このコンセプトをとても気に入ってくださったという。

工藤さんは、趣味や好みは違っても、この家で新たに始まる2人の時間を大切にしたいというご夫妻の思いをしっかり感じ取っていたのだろう。

その思いをこんな形でデザインする温かさと粋なはからいは、工藤さんならではの魅力。建築家とタッグを組み、自分たちならではの家づくりをする醍醐味ともいえる。夢をかなえ、家族の絆も感じられる住まいには深い愛着が湧き、人生の後半を豊かに彩ってくれるに違いない。
  • ご主人の夢をかなえた1階の会員制バーは、友人が集まる憩いの場。ここもイメージカラーの赤で統一。赤といっても落ち着いたニュアンスで、ご主人こだわりの和のテイストにしっくり馴染む

    ご主人の夢をかなえた1階の会員制バーは、友人が集まる憩いの場。ここもイメージカラーの赤で統一。赤といっても落ち着いたニュアンスで、ご主人こだわりの和のテイストにしっくり馴染む

  • 駐車場の上のベランダは、ご主人の希望である日光浴を楽しめる贅沢な広さ。囲いには木が用いられ、高級感がある

    駐車場の上のベランダは、ご主人の希望である日光浴を楽しめる贅沢な広さ。囲いには木が用いられ、高級感がある

  • 「縦格子を入れたい」とのご要望に応え、駐車場の壁や会員制バーへの玄関など、外観にも縦格子を取り入れた。モダンでありながら和の雰囲気も感じさせる

    「縦格子を入れたい」とのご要望に応え、駐車場の壁や会員制バーへの玄関など、外観にも縦格子を取り入れた。モダンでありながら和の雰囲気も感じさせる

撮影:鳥村鋼一

間取り図

  • 1F間取り図

  • 2F間取り図

  • 3F間取り図

お家のデータ

所在地
神奈川県逗子市
家族構成
夫婦
敷地面積
238.56㎡
延床面積
容積率算定延床面積 224.63㎡

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