
好対照な個性を反映した、
隣り合った姉妹の家を、同時に設計
おおらかなS邸、繊細なK邸。設計は「高さとのせめぎ合い」へ
都内に土地を見つけた施主様たちは、当初、ハウスメーカーなどに相談したそうだ。「でもハウスメーカーには独自の規格があって、『これを50cmずらして』ができないのです」と妹のK様。「特に私たち一家と母が暮らす二世帯住宅は、建築家に頼まないと希望がまったくかなわないことがわかりました」と姉のS様。「私、以前テレビで『都内の狭い敷地を最大限に活かした家を建てる建築家』として角倉さんが紹介されていたのを、なぜかはっきりと覚えていたのです」とお母さま。すぐに相談のメールを角倉さんに送信。角倉さんの奮闘がスタートした。
土地の購入時には、姉のS様一家とお母さまの家を前面道路から見て奥に配置。妹のK様宅を手前に建てることをお施主様は既に決めていた。
「しかし皮肉なことに、奥のS様は『できるだけ開放的な家』を望み、道路に面した角地に建つK様は『防犯とプライバシー重視』だったのです」。そこで角倉さんはK邸の道路側に、下部を壁で覆われた坪庭を設置。各階の主な部屋は坪庭に開口部を設けることで、プライバシーを高める工夫を施した。「坪庭を、外と内との緩衝空間にしたことで、安心感と同時に採光と通風も確保できました」。
角地の家・K邸は「とにかく高さとのせめぎ合いでした」と角倉さん。そのせめぎ合いの跡は、たとえば子ども部屋のある3階の天井に見られる。「いちばん高い部分で220cm、そこから日影制限と高さ制限を考慮したために勾配をつけています。2階から3階に上がる階段も、普通に設置すると上がりきった際に天井に頭がぶつかってしまうため、動線と天井の勾配を何度も計算しました」。建物全体を少し地下に埋め込むなど、可能な限りの工夫を施すことで、圧迫感のない生活空間を確保していった。
限られた空間を有効活用するために、K邸は「回遊する家」となった。「リビング、ダイニング、キッチン、そして書斎スペースを納めた2階は、全室がぐるりとつながっており、自由な動線が生まれています」。視線も行き届く構造だ。一段高くなったリビングからは3階も含めた全体を見渡すことができる。お子さんたちの勉強机になっている書斎スペースは、キッチンからも目が届く。「ちなみにキッチンは専門メーカー製のオーダーメイド。収納の使いやすさと見た目の格好良さは、奥様のお気に入りです」。
施主様からの細かな要望が丁寧に実現されていることも、K邸の大きな特徴だ。「K様ご夫婦はともに理系の方なので、図面を見るのにまったく抵抗がありませんでした。ですので『この空間はこう活用できるのでは?』といったアイデアを次々に出されて、設計者としてはとても刺激的でした」と角倉さんは言う。「たとえば、玄関を入ってすぐ上がり框があり、その奥は浴室へ向けて数段下がっています。この上がり框の下の部分が『奥行きのある収納に使えるのでは』と奥様に指摘され、スキー板などをしまえる収納施設にしました」。ほかにも洗面室のタオル掛けの数や高さなど、生活目線からの要望が数多くあり、角倉さんはそれらを確実に形にしていった。
どんな要望も大歓迎。様々な条件下で最高の家を形にするのがプロ
このフリースペースが、2階の居室に向けて斜め上からたっぷりの日差しを取り込む、絶妙な空間となった。「夏は日が入りすぎて暑いくらいです」と苦笑しながらも、Sさんご夫婦は「この空間のおかげで3階に向かって吹き抜けができ、すごく開放感があるんですよ」とご満悦だ。さらにご主人の強い希望で屋上も作られた。「眺めも良いし、周囲の家もあまり気になりません。ときどきミニバーベキューを楽しんでいます」とSさんのご主人。こちらもお気に入りの場所になっているそうだ。
S邸の1階は、姉妹のお母さまの住まいになっている。「この空間をいかに明るくするかが、今回の最大のポイントでした」と角倉さんは言う。駐車場の位置取り、2軒の配置と距離の取り方など、いくつもの案を出してはやり直し、「最終的に、南東側に広めの吹き抜け空間を設けることで、かなり明るさを確保できました」とのこと。お母さまの趣味である木彫りの作品が数多く置かれたリビングは、独特の落ち着いた雰囲気を醸し出している。「キッチンやバス、トイレもあるのがうれしいですね。上の階や隣の家でもしょっちゅう過ごしますが、やはり自分の空間があると落ち着きます」とお母さまも笑顔で語る。
施主様たちは、「いろいろ意見を言って、まとまらなくて申し訳なかった」とおっしゃるが、角倉さんは「それをまとめることが私の役割です」と言う。「どんなに広い土地で、どれだけ資金に余裕があっても、それを超えた要望が出るのが家づくりです。それをどう納めていくか、法律や規制を踏まえてベストのものをご提供するのが、プロの仕事。どんなご要望も、大歓迎です。『家とはこうあるべき』という先入観を捨て、施主様の思いに寄り添って、最大限のパフォーマンスをご提供したいと、常に心がけています」。
基本データ
| 所在地 | 東京都大田区 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 5000万円台 |
| 施主 | S邸 |
設計者情報
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