自然と調和し自然を楽しめる
ずっと前からそこにあるかのような家

豊かな自然を感じられる環境で暮らしたいと願う施主のTさん。家づくりをお願いしたのは、気候・風土との調和や伝統的な素材・工法を使い、私達日本人が紡いできたものを大切にした設計を行う建築家、礒健介さんでした。

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家づくりのプロからも選ばれる
日本人の心にしっくりくる家

九州一の大都会福岡市中心部から車で約40分という好立地にありながら、山や海など自然に恵まれた環境から「移住したい街」として人気の福岡県糸島市。豊かな自然を感じられる環境で暮らしたいと思っていた施主のTさんが自邸を建てる場として選んだのは、近くには田園風景が広がり、遠くに見える山の緑も美しい住宅地の一角。

この地に合う家づくりを担ってくれる人として選んだのは、土地の気候、風土、環境にマッチし、自然素材や伝統的工法などを用いた設計を行う建築家、礒建築設計事務所の礒さん。

礒さんが家づくりにおいて大切にしていることの1つに「普遍的であること」がある。日本人が長い年月を紡いできた家は、土地の気候風土を読み解き、様々な工夫が凝らされてきた。それは機能だけでなく美しさも兼ね備えている。礒さんは、現代建築でありながらも、根底にはこういった要素をもたせ、住みよい家とすることを重視しているのだという。

礒さんのつくる家は、生まれてこのかた一度もそんな家には住んだことのない人でもどこか懐かしく、心落ち着き、しっくりくる心の安らぎを感じる。それは、まるで日本人のDNAに組み込まれているかのようだ。

Tさんが求めていた家は、まさにそんな家だったのだ。

実はTさんは、福岡の工務店に勤められている。過去に礒さんが設計した案件の施工をTさんの会社が手掛けたというご縁からの依頼。とはいえ、Tさんは仕事柄、数多くの家に携わってきた。建築士の知り合いも多くいることだろう。ましてや何かと打ち合わせを行いやすい地元の建築家に依頼するということもできたはずだ。そんな中、自分達が思い描く、理想の家づくりのパートナーとして礒さんを選んだ。

それは、礒さんが手掛けてきた家のデザイン性、機能性はもとより、家づくりの価値観、さらには礒さんの仕事ぶりに魅了されたからに違いない。礒さんは、眼の肥えたプロからも選ばれる建築家なのだ。
  • 家の前には田んぼが広がる、自然豊かな環境に佇むT邸

    家の前には田んぼが広がる、自然豊かな環境に佇むT邸

  • 敷地に対して建物を斜めに配置することで、眺望とスペースの有効活用を実現。敷地一部を道路に提供し、車や人通りにも配慮した

    敷地に対して建物を斜めに配置することで、眺望とスペースの有効活用を実現。敷地一部を道路に提供し、車や人通りにも配慮した

  • 玄関前には、深い軒を設け日差しをコントロール。現代の縁側ともいえるスペースをつくった

    玄関前には、深い軒を設け日差しをコントロール。現代の縁側ともいえるスペースをつくった

敷地に対し建物を斜めに配置
駐車スペースや庭、眺望も

T邸の敷地は、南と西に道路がある正方形に近い角地。一般的に、住宅は土地の奥側に道路と並行して建て、手前を広くとるというのがセオリー。実際に周囲に建ち並ぶ家々は、敷地と並行に南面を向いて建てられているが、礒さんはあえて敷地に対して斜めに建物を配置した。その理由の1つは眺望。南面に向けて建てた場合、お向かいの家が視界を遮ってしまう。それが、敷地に対し建物を斜め45度振ることで窓の外には、田んぼが現れる。そしてその先には遠く山並みが見えるのだ。それだけではない。この配置だと土地の角の部分にテラスや庭を設けることができる。それにより屋内やテラスから、庭→田んぼ→山並みといった、近景、中景、遠景それぞれの景色がグラデーションのように楽しめるのだ。それはまさに、自然の借景。

そして礒さんはその借景を最も楽しめるように、南面の2階部分にも大きな開口を設け、吹き抜けに面する腰壁の笠木は厚みのある杉板を採用した。その様はまるでバーカウンターのよう。実際、Tさん家族や訪れた人々は笠木に肘をつき、景色を楽しむのが恒例となっているのだとか。

この斜めの配置は、よい眺望をもたらすだけではない。土地の四つ角にスペースができることによって、自家用・来客用の駐車スペースや北庭もできた。斜め配置は、スペースの有効活用にもつながったのだ。

さらに礒さんは、2つの道路が交差する角の塀をくぼませることを提案したのだという。
「建物、デッキ、塀のラインが並行に統一される美しさと、角の見通しが良くなり人や車の事故防止にもつながります」と礒さん。
これはある意味、土地の一部を道路に提供するかのような形となるが、Tさんも快く受け入れてくれたのだという。

土地に対し、家を斜めに配置するという柔軟な発想が、眺望も利便性も、そして地域への貢献にもつながった。

Tさんも「敷地の良い部分を読み取り、気持ちの良い景色を楽しめる配置にしていただき感謝している」とコメントを寄せてくれた。
  • 窓を開け放つと、屋内とデッキがシームレスにつながった大空間に

    窓を開け放つと、屋内とデッキがシームレスにつながった大空間に

  • 玄関を入ってすぐのサロンスペース。出窓兼ベンチで、来客が靴を脱がずにおしゃべりができる。土間として作業スペースや物の置き場としても活用できる

    玄関を入ってすぐのサロンスペース。出窓兼ベンチで、来客が靴を脱がずにおしゃべりができる。土間として作業スペースや物の置き場としても活用できる

  • リビングは天井を吹き抜けにした開放的空間。床座とすることで、お客さんも気兼ねなく座ることができる

    リビングは天井を吹き抜けにした開放的空間。床座とすることで、お客さんも気兼ねなく座ることができる

人々が立ち寄り、変化にも対応
不便さも容認する懐の深い家

Tさんのリクエストの1つに、薪ストーブの設置があった。薪ストーブは、環境に優しい暖房であり、インテリアとしてさらには料理にも使えるなどのメリットがある一方、薪の調達やメンテナンスに手間や費用がかかる。また、エアコンなどのようにすぐに室内を温めることができないというデメリットもある。それでもTさんは薪ストーブを選んだ。

Tさん夫妻は暮らしの手間を惜しまず、不便ささえも楽しむという気持ちをお持ちだ。その意向は、窓においても現れている。暖房効率を考えれば、窓はサッシのほうが効率がよいが、Tさん夫妻はあえて木製の建具を希望された。また、礒さんが提案した外装への杉板材の採用、内装の無垢材の使用に対しても「10年20年、私達と一緒に年をとっていくようで、飽きが来ないで愛着が湧く」とTさんも喜んでいるようだ。

効率性や利便性、快適性だけでなく「家の情緒を大切にしたい」という思いなのだろう。これは、言い換えれば「おおらかで懐の深い暮らし」ということだろう。

礒さんが作ったこの家もおおらかで懐が深い。例えば玄関前の大きな軒下スペースと、入ってすぐにあるサロンスペース。サロンスペースの出窓は幅広となっており、ベンチにもなる仕組みだ。これらは昔の日本家屋でいうならば縁側と土間だ。友人や知人などがふらりと訪れ、夏には直射日光を避け、冬には温かい屋内で靴を脱がずに腰掛けておしゃべりができる。また、ちょっとした資材置き場や作業場、趣味の空間、子供の遊び場など活用の幅も広い。

リビングにはソファーやダイニングテーブルを置かず床座りとした。ソファーや椅子は、どうしても「席」という決められた場所になってしまいがち。床座とすることは、気づかないうちに座りやすくなることにもつながる。

またTさんご夫妻にはお子さんがいるものの、あえて子供部屋を設けなかった。代わりに設けたのは、ファミリースペースという名の自由な空間。実は子供が個室を必要とするのは、10年程度。であるならば、いかようにも使えるフリースペースを、その時々で可変しながら使うほうが良いだろうという考えだ。

礒さんは、家の使い方や暮らし方を固定する「不変」なものとはしない。どんなときも、どんな変化があっても、快適でいられる「普遍的で懐の深い」家をつくる。そしてその家は、ずっと前からそこにあったかのように、10年20年、いや数十年住み続けられる家なのだ。
  • 建物を斜めに振ったことで、視界の先には、庭、田んぼ、山並みが広がる

    建物を斜めに振ったことで、視界の先には、庭、田んぼ、山並みが広がる

  • 2階の廊下の笠木は幅広にすることで、バーカウンターのよう。壁面には、本棚とワークスペースを設けた

    2階の廊下の笠木は幅広にすることで、バーカウンターのよう。壁面には、本棚とワークスペースを設けた

  • 2階の景色の良い部屋は、可変性の高いファミリールーム

    2階の景色の良い部屋は、可変性の高いファミリールーム

間取り図

  • 平面図

基本データ

作品名
糸島の家
施主
T邸
所在地
福岡県糸島市
家族構成
夫婦+子供1人
間取り
3LDK+フリースペース+テラス
敷地面積
269.94㎡
延床面積
120.24㎡