公園の借景が育む明るい生活 ほどよい距離感を実現した二世帯住宅

親子3代が明るく快適に過ごせる二世帯住宅を建てたいと思っていた施主のWさんご家族。
Wさんが設計を依頼したのは、自然と調和し、気持ちの良い暮らしを実現することに定評のある、m+h(エムアンドエイチ)建築設計スタジオの林さん。公園前という絶好の立地を上手に活かし、光と風、緑の借景をふんだんに取り込み、家族の気持ちも明るくなるような住まいを実現した林さんの家づくりに迫る。

この建築家に
相談する・
わせる
(無料です)

きっかけは一目惚れ?
出会った翌日に設計の依頼

長男一家と同居できる二世帯住宅を検討されていた施主のWさん。土地探しをしていく中で見つけたのが、南面に緑多い公園がある角地という絶好の場所。実はこの土地は建築条件付きの土地だった。

建築条件付きの土地とは、「一定期間内に決められた建築会社で家を建てること」が購入条件となる土地のこと。分譲地を買って、自分の好きな建築家やつながりのある施工会社に依頼をする「注文住宅」ほどの自由度はないが、間取りや、外観・内装の仕様に一定の自由さを得られることが人気の土地の販売方法。

そんな建築条件付きの土地を購入したWさんが、たまたま訪れたのが近所で開かれていたm+h建築設計スタジオの見学会。

対応した林さんにWさんは「すでに建築条件付きの土地を購入しているのだが、設計をお願いできないか?」と声をかけたのだという。

それに対し林さんは「先方が許可していただければ、できなくはないですが、難しいかもしれないですね」と答えたのだという。

「そしたら、翌日再びいらっしゃって、『許可をとったからお願いしたい』と言っていただいたんです」と林さん。

実はWさん。前日の見学会を後にしたその足で、土地の販売会社に赴き「設計をお願いしたい建築家がいるんだけど、設計だけ別なところにお願いしてもよいか?」などと交渉し、「設計だけであれば」と許可を取り付けたのだという。

Wさんは、建築条件付きの土地を購入しているのだから、元々の設計やプランにも納得していたはずだ。そんな中、林さんの物件と出会ったことで、さまざまな素敵な部分をしったり「こんな家にしたい」と思ったことだろう。そして普通の人であれば「もう契約してしまっているし」と諦めたり「こんな要素を取り入れてもらおうか」程度で済ませてしまうに違いない。

しかし、Wさんはそうではなかった。すぐさま交渉しにいくほどの衝動にかられた。それは一目惚れといっていいのかもしれない。そこまでしても実現したいと思わせる魅力が林さんのつくる家にはあるのだ。

こうして、Wさんご家族と林さんの家づくりが始まった。
  • 目の前にある公園からW邸を望む。白く清潔感あふれるたたずまいが映える

    目の前にある公園からW邸を望む。白く清潔感あふれるたたずまいが映える

  • 玄関は東面中央に。あえて道路側から少し距離をとることで、帰ってきたとき・人が訪れたときのワクワク感をもたらし、駐車スペース側からも行き来しやすい配置。引き戸とすることで両方向への往来も邪魔にならない

    玄関は東面中央に。あえて道路側から少し距離をとることで、帰ってきたとき・人が訪れたときのワクワク感をもたらし、駐車スペース側からも行き来しやすい配置。引き戸とすることで両方向への往来も邪魔にならない

  • 南面に大きな開口を設け、光と風、公園の緑の借景をふんだんに取り込む。あえて塀などの遮蔽物は設けず、植栽で目隠しすることで、公園の緑との一体感をもたせた

    南面に大きな開口を設け、光と風、公園の緑の借景をふんだんに取り込む。あえて塀などの遮蔽物は設けず、植栽で目隠しすることで、公園の緑との一体感をもたせた

ほどよい距離感の二世帯を
光導く明るい室内

W邸は二世帯住宅。1階をWさんご夫妻、2階に息子さん夫妻と子供2人の6人が1つ屋根の下で暮らす。二世帯住宅というと、サザエさんの磯野家のような「同居型」、1階と2階で玄関も違い、キッチン・バス・トイレ全て別の「完全分離型」などがあるが、W邸は、玄関と内階段は共有するものの、キッチン・バス・トイレはそれぞれの世帯に設けるという、完全分離型に近い「部分共有型」二世帯住宅だ。

これは、家族とはいえ生活スタイルが違うため、プライバシーも大切にしたいという思いがある一方、家族の気配が感じられたり、行き来しやすい環境にしたいという思いから。実際、お孫さん達が、1階で過ごすことも多いのだという。

この家をひとことで表すなら「明るく柔らかな優しさに包まれた家」。南面に大きく取られた窓からの光はもちろんのこと、東西南北すべての面に大小様々な窓を設置し、陽光を室内に呼び込む。さらには、上からの光を下に導くよう床に採光窓を設置したり、ロフトの階段をスケルトンにするという工夫も。その光が、柔らかな色調の床のフローリング、壁、天井に反射して、室内全体を優しい空間としてくれている。

光の通り道は、明かりを導くだけのものではない。風の通り道にもなり、さらには向かいにある公園の景色という視線の通り道でもあるのだ。実際、様々なポイントから南面の公園の緑を感じることができる。1階では、ダイニングやソファーに座った視線の先に。2階はキッチンに立ってふと顔を上げた先に。さらには、スタディコーナーで顔を上げると、窓の先に公園の景色が目に入る、絶妙な高さとなっている。

光、風、そして景色。その土地の自然環境を上手に家に取り込む林さんの手腕が、いかんなく発揮されている。
  • 1階リビング。いくつもの窓から日差しが入りこみ、室内を明るくやわらかな印象に。ソファーに座ると視線の先には、公園の借景が

    1階リビング。いくつもの窓から日差しが入りこみ、室内を明るくやわらかな印象に。ソファーに座ると視線の先には、公園の借景が

  • 1階のキッチンは、回遊できるようアイランド型を採用。将来は、このスペースで料理教室も開きたいとWさんは語る

    1階のキッチンは、回遊できるようアイランド型を採用。将来は、このスペースで料理教室も開きたいとWさんは語る

  • リビングの脇にある和室コーナーは、半畳たたみをモザイク模様に。仏間としての活用のほか、ごろんと横になれるくつろぎの場であり、お孫さんたちの遊び場にも

    リビングの脇にある和室コーナーは、半畳たたみをモザイク模様に。仏間としての活用のほか、ごろんと横になれるくつろぎの場であり、お孫さんたちの遊び場にも

現場にも頻繁に顔をだし、
1つひとつの案件にしっかり寄り添う

このようにしてできた家の出来栄えにWさんも大満足の様子で「日頃過ごしているリビングやダイニングキッチンでは日当たりや風通しも良く、自然の緑を常に感じられて心地良く過ごしております」とコメントを寄せてくれた。

林さんが、このように満足度の高い家を実現できる理由の1つが、手間暇を惜しまず1つひとつの案件にしっかりと寄り添う姿勢だ。

施主と密なコミュニケーションをとり、その要望を汲み取り、そしてその要望をただ叶えるのではなく、その期待値を上回る提案をする。また、プランの提案だけでなくインテリア・設備機器などに関してもショールームへ同行することも多々あるのだという。

Wさんも「しっかり話を聞いてくれた」「いろいろ提案してくれた」と林さんの姿勢を高く評価する。林さんにお願いしたいと思った時点では、あくまで過去に手掛けた作品をみた印象だったのかもしれないが、実際に仕事をお願いしてみて「あのときの判断は正しかった」「自分の目に狂いはなかった」と思っているに違いない。

このしっかりと寄り添う姿勢は、施主を相手にしたものだけでない。実際に家をつくる作業をする大工さんや工務店、各種工事業者とも密にコミュニケーションをとるのだという。

「他の設計士さんが現場に訪れるのは、おそらく週1程度かなと思うのですが、私は週3くらい現場へ行きます。自分でも、ちょっと現場に行き過ぎかな?と思うことも多々あり、効率が悪いですね(笑)」と林さんが語るほど、現場に赴く。それは、工事に関わる人々を信用していないのではなく、状況を的確に把握すること、しっかりと作業を見守ること、そして何かあったときの判断を素早く行うため。

林さんがこういう姿勢だからこそ、このW邸の案件のように、これまで一緒に仕事をしてきたことのない工務店との仕事であっても、スムーズに家づくりが行えるのだろう。

「現場の様子を写真にとってメールでお送りすることもよくやります」と林さん。
頻繁に現場に通えずとも、日々出来上がっていく家の様子がわかるのは、施主にとってはうれしいことに違いない。

建築家の仕事は、素敵な家を設計することだけではない。家ができあがるまでを、しっかり監理することも仕事の1つ。施主にとって家づくりは、我が子を育てることのように感じることもあるだろう。林さんは、日々成長していくお施主様の大切な我が子を、しっかりと見守り、適切な監理をして、立派に育ててくれる先生でもあるのだ。
  • 2階リビングの先には、広々としたベランダが。直射日光を遮りつつ公園の景色を見ながらBBQもできる

    2階リビングの先には、広々としたベランダが。直射日光を遮りつつ公園の景色を見ながらBBQもできる

  • キッチン脇には、子どもたちの勉強や、テレワークに重宝するスタディスペースを設置。机上の窓の先には公園の緑が見える。床には強化ガラス製の採光窓を設置し、下の階へ光を導く

    キッチン脇には、子どもたちの勉強や、テレワークに重宝するスタディスペースを設置。机上の窓の先には公園の緑が見える。床には強化ガラス製の採光窓を設置し、下の階へ光を導く

  • パステルカラーのアクセントウォールが楽しい、子供部屋はロフト付き。将来、完全個室とできるよう、予め壁を設置できるようなしくみに

    パステルカラーのアクセントウォールが楽しい、子供部屋はロフト付き。将来、完全個室とできるよう、予め壁を設置できるようなしくみに

  • 2階の寝室は、シックな装いのアクセントウォールを採用。こちらもロフトつきで、収納力を確保した

    2階の寝室は、シックな装いのアクセントウォールを採用。こちらもロフトつきで、収納力を確保した

基本データ

作品名
公園前の2世帯の住まい
施主
W邸
所在地
愛知県高浜市
家族構成
夫婦+息子夫婦+子供2人
敷地面積
181.12㎡
延床面積
166.45㎡
予 算
3000万円台