
雑貨に囲まれた毎日を過ごすために行われた
古民家の独創的な低予算リノベーション
予算内でお施主様の要望を実現する以外は
ほぼ“お任せ”のやりがいあるプロジェクト
事務所開設当初は一般住宅の設計がメインだったが、徐々に店舗の仕事も増え、現在は住宅と店舗がほぼ半々の割合になっているそうだ。竣工したお施主様から次のお施主様を紹介して頂くことも多いという。
今回の作品は、人通りが多い角地に立つ古民家のリフォームだ。延床面積は200㎡を超えるため、制限がある予算の中でのプラン作成が重要になる。
お施主様の要望は、“趣味で集めている雑貨に囲まれて生活をしたい”というものだった。
つまり、今回のプロジェクトは
・大きな古民家を限られた予算内でリフォームする
・お施主様の要望を叶えるプランを実現する
ことがポイントとなる。
yasuhiro sawa design office.の代表である建築家の澤さんによると、お施主様の要望は“趣味で集めている雑貨に囲まれて生活をしたい”というもの以外には、ほとんどなく、“ほぼお任せ”だったという。
建築家にとって“お任せ”されることは、自由な発想ができる反面、難しさも伴うためにあまり好まない人もいる。この点を澤さんに聞くと、「まったく問題なかったです(笑)。
ご夫婦のかっこいいと思う雑貨や家具などを写真で見せて頂き、自分と好みが合うなー!!と感じました(笑)。かっこいいい空間が作りたいと素直に思いました!! お施主様と楽しみながら、日々のくらしがワクワクする空間をつくりたいといつも考えています」と答えてくれた。
では今回の作品で、どのような解決策がとられたのか。次章で、その概要をご紹介しよう。
京町家の間取りを参考に、リフォームする
場所にメリハリをつけたプランが解決の鍵
一般的にはリフォームを予算内で行う際に、リフォームをする場所を限定することが多い。しかしこの家は大きすぎるため、限定した場所のリフォームだと手をつけない場所が大半になってしまう。
それでは“趣味で集めている雑貨に囲まれて生活をしたい”というお施主様の要望が、一部の場所でしか実現できないことになる。
そこで澤さんが考えたプランが、京町家(商屋)のようにゾーニングされた間取りだ。
京都の商売をする古民家には、“店(見せ)の間”という通りに面した土間の空間がある。その土間は、店舗と街や道が融合したあいまいな空間として利用されていた。
また多くの場合、奥に進むと炊事場や中庭があり、その先に居間がある。
このような京町家の間取りからインスピレーションを受け、角地の道路に面したエリアを人々が集まったり、趣味の雑貨を並べたりすることができる、“店の間”のような多目的スペースとした。幸運なことに、このスペースにあった床の間や内装の状態が良かったので、できる限りそれらを残して活用した、土間スペースとすることで費用を抑えた。
新旧入り混じった独特な空間をあえて作ったことで、まさに人が集まったり、雑貨を並べてギャラリーのように使えたりできるスペースが誕生したのだ。お施主様は「将来の使い方について、どんどんアイデアが湧くスペースですね」と満足していたそうだ。
その奥には中庭があった。そこで中庭はそのまま残し、居住スペースはその場所を中心に考えられた。最初に考えたのが、キッチンとダイニングの場所だ。中庭が見える場所で料理を作り、食事をすることができる。そして一番奥に、リビングを配置した。京町家のような配置で、とても落ち着くことができる空間が広がっている。
この居住スペースはゼロから設計され、その場所だけを見ればリフォームとはわからないほど洗練された空間となっている。小さな雑貨を置く棚も用意され、お施主様の要望を実現できる場所が誕生した。
このようにリフォームをする場所にメリハリをつけることで、予算内におさめることができた。その基となるプランを京町家からイメージしたのが、成功の鍵と言えるかもしれない。これは数多くの京都市内の店舗を設計した実績がある、澤さんらしい発想だと感じた。
雑貨だけでなくライフスタイルも見てもらう
新たな情報発信の場所を目指す、斬新な提案
そもそも“店の間”があった場所は、道路に面する2面には大きなガラスドアが設置されていた。そのため、今回のリフォームでも“店の間”には大きなガラスドアや窓が設置されている。
一方で居住スペースにあたる奥のエリアには、大きな窓はなかった。そのままの状態だと室内は暗くなり、大きな窓を設置すると窓のすぐ前を人が通ることになる。
そこで澤さんが考えたのが、“家の前を通る人たちに、所有する多くの雑貨だけでなく、自分たちの生活をもショールームのようにみてもらう”というコンセプトだ。
このアイデアが生まれた背景には、お施主様ご夫婦の人柄やライフスタイルがある。
澤さんは、こう語った。
「ご夫婦の雰囲気がとてもおしゃれで、おふたりの暮らしが町に溢れていくといいなーと感じました」。
「そこで道路に面しているのでぎりぎりのプライバシーを持ちながら、できるだけ大きな開口部を設け、前を歩く人たちの興味をそそる計画としました」。
“家の前を通る人達に、所有する多くの雑貨だけでなく、自分たちの生活をもショールームのようにみてもらう”というコンセプトだ。
亀岡の商店街が近く、多くの人がこの家に並べている雑貨を見るだろう。そして雑貨だけでなく、ご夫婦の暮らしぶりも見てもらうことで、地域への情報発信の場にしたいと考えたそうだ。おしゃれに敏感な人だけではなく、なんだろうと人が気になって中を覗くイメージだそうだ。
こうしてダイニングにも、大きな窓が設置された。
いわばライフスタイルまで変えるような提案に、お施主様は当初驚いたそうだ。しかし今では、その提案が気に入っているという。
澤さんは常に、お施主様のキャラクターにあう建物を作るように心がけている。その方が心地よく、長く住まい続けられるからだ。今回の提案は、まさにその考えが形になったものだと言える。
澤さんは「今回のリフォームはその建物の大きさからコストという制約があったものの、お施主様と一緒にアイデアを共有し楽しく進めることができました。打合せの時間がとても充実していました。これからもお施主様との対話を通じ、最適なプランを生み出せるように成長していきたいと思っています」と語ってくれた。
今回のリフォームでこだわった点は、他にもたくさんある。ぜひ写真の説明文もご参照いただきたい。
基本データ
| 作品名 | n house / MISENOMA |
|---|---|
| 所在地 | 京都府亀岡市 |
| 延床面積 | 214.7㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 2000万円台 |
撮影:akari kuramoto
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

森を取り込む! お隣や森の木々へ別荘地ならではの配慮とは?
木々に囲まれ、最高にリフレッシュできる環境ではありながら、お隣がちょっと気になる別荘地。この場所でどう過ごしたら気持ちいいかを突きつめて考えていくと、新しい別荘のかたちが見えてきました。

懐かしくて新しい!大きな屋根の下で、家族も緑も守られる暮らし
上空から見下ろすと ひと際目立つ白い屋根 その下には60歳を超えたご夫婦が暮らしています。もともとは夫婦で静かに過ごすつもりで建てた家でしたが、今では週末ともなれば、近くに住む娘たちが家族連れで集まり、賑わいます。

素材も間取りも理想を現実にした、納得と愛着の家づくりとは?
無垢のフローリングに漆喰の壁、天井まで届く南向きの大きな窓。東京の下町にあるKさん邸は、周囲を住宅に囲まれているとは思えないほど開放的で明るいお住まいです。家族が一番長い時間、一緒に過ごすリビングを中心に考え、さまざまな工夫でコストを抑えながら、希望どおりのマイホームをつくりあげました。

防火地域の10坪の土地に豊かな空間を 不可能を可能にした「天空の光庭」という発想
家づくりはときに、厳しい現実に直面することがある。土地条件や予算により、ハウスメーカーから「その条件では無理」と言われ、思い描いていた家を諦めたり妥協したという人も多いことだろう。Oさんもそうなりかけた1人。そんなOさんの救世主となったのは、キトキノアーキテクチャの小林玲子さんだった。

東京・軽井沢の2拠点生活を満喫。緑に包まれたアウトドアリビングのある別荘
軽井沢に別荘を建て、東京との2拠点生活を計画していたAさま一家。設計を担当した奥野公章さんは、環境を読み解き快適な住まいをプランニング。高原リゾートの非日常感と、テレワークをしながらの日常生活、2つのライフスタイルを包み込む家が完成した。

コンパクトながら広々した空間を実現 静かな環境と視線の伸びを両立する「間」
読書とテレビ鑑賞という、ご夫妻で異なる趣味をお持ちのお施主さま。建築家の武本さんは、2人暮らしの家としてそれぞれが気兼ねなく集中して趣味が楽しめる空間づくりがしたいと考えた。疎外感なく、様子が伺え、しかしノイズはカットできる環境を叶えたのは、ダイニングとリビングに挟んだ小さな「間」だ。

自然とともに、地域とともに、人とともに 現代の力で実現した、日本の家の新しいカタチ
新築なのにずっと前からそこに存在していたように感じる家。これは褒め言葉。その家が周囲の環境と見事に調和し、違和感なく佇んでいるから。自然や地域環境との共存を大切にしながらも、住みよさと美しさを兼ね備えた自邸をつくりあげたのは、建築家のナカタヒロヨさんでした。

天然素材と杉の香りに包まれる!14坪に実現した5人家族の団欒
施主のIさんは、ご夫婦と子ども3人の5人家族。今回家を建てることになったのは、14坪という決して広いとは言えない土地だった。限られたスペースを最大限に生かし「何を取り、何を捨てるか」を明確にしたうえで進められた、家づくりの軌跡を見ていこう。

オーディオルームで趣味に浸る、集う場所と趣味の場所の共存術!
施主であるMさんが望んだのは、家族の時間を共有しながらも、それぞれも趣味に没頭できる場所がある住まい。完成したのは、家族が集まれるワンルームのようにオープンなLDKと、趣味の音楽や映画を楽しむことができる個室を備えた家だった。









