
光と人が集まる広い家にしたい。
丸ごと実現した、吹き抜けと2つのテラス
中から外へ、外から中へ。性質の異なる
2つのテラスが感じさせる「広さ」
望んだのは「広くて明るい空間」の「人が集まる家」。土地が南北に広いため、南側に吹き抜けが欲しいという具体的な要望もあった。それらを叶えるための敷地面積は十分にあったが、建物にかけられるコストには上限がある。そこで伊原さん夫妻は、コストとのバランスから床面積を100㎡くらいのボリュームに抑えた2階建てを提案し、プランニングを開始した。
完成したのは心が晴れやかになるような、明るいLDKがある家だ。LDKは道路に面した南側の壁面を1階2階それぞれ大きく開口し、家中に光を届けるようにした。さらに窓から外へ、吹き抜けから2階への視線の伸び方がすごい。期待するその先まで視線が届き、思わず手を伸ばしたくなるような驚きさえ覚える。
その秘密はLDKと繋がる2つのテラスにある。1つ目は1階のリビングに付随するテラス。床を室内とフラットに繋げ、手すりを設けただけの開放的なつくりだ。一方で、正面にはコンクリートの壁を立てた。視線避けの意味もあるが、しっかりした壁があることで室内にいる人が「ここまで領域が伸びた」と明確に認識でき、より広さを感じられるのだという。「戸棚から引き出しを引っ張り出すように、中から外へ、リビングからテラスを延長させるイメージ」と伊原さん。
LDKと繋がる2つ目のテラスは、なんと2階にある。1階テラスを正面に見たとき右上に視線を移すと現れる、大きなガラス窓で室内と仕切られた屋根付きの空間がそれだ。このテラスはLDKとの仕切りガラス以外は木材が多用され趣が異なっているため、「新たに獲得したスペースだ」とより強く感じられる。家の中にあるのに外という、リビングの一部でもあり庭でもあるような不思議なテラスは「外部空間をトンネルの中にぎゅっと押し込めたイメージ」なのだそう。
1つは中から外へ出し、もう1つは外から中へ入れる。性質の異なる2つのテラスをLDKに付けたことで、室内から見る景色が立体的になった。実際の床面積よりも広く感じられ、まるで敷地いっぱいに建物を計画したかのようなLDK。晴れ晴れとした吹き抜けがある空間は、こうして叶えられた。
リビングの中に設けた階段が
緩やかに空間を仕切り、居心地よいLDKに
大きな役割を果たしているのは、リビングエリアの中を走る2階へのスケルトン階段だ。階段を挟んでリビング空間の領域は分けられているが、手すりや踏板には室内に溶け込む色や素材を用いていることもあり、視線が遮られる印象はない。
階段によって分節され、生まれた空間は子どもたちが遊ぶ「子どもリビング」とした。2階テラスの真下にあたる子どもリビングは、吹き抜け側と比べて天井も低く、子どもにとってちょうどいい落ち着きが与えられる。壁面にはスペースに合わせて設計した収納が置かれ、片付けもしやすい。大人と子どものエリアを分けたことで、子どもが元気いっぱいに遊ぶことと大人がゆったりと過ごすことを同時に、目は届きつつ干渉しないかたちで可能とした。
また、「遊んでいるお子さまのもとへすぐに駆け付けられる位置に」との要望からキッチンは子どもリビングの隣に計画。玄関を入ると廊下を挟んでLDKと水回りに分かれているが、玄関からLDKへの扉とは別に、キッチン側にも扉を設け水回りへアクセスしやすいようにした。とりわけトイレとは直線で結ばれており、子どもリビングで過ごすお子さまたちも便利に使える。
LDKの室内では、階段への上り口にリビングと子どもリビング両方からアクセスできる。玄関とLDKを仕切る扉とキッチンの扉とあわせて、1階全体で大きくぐるりと回れるように回遊性を確保した。さらに、階段の下に配置したL字型のソファがアンカーとなって8の字のような動線が生まれ、LDKのどこへでも自然な流れで行けるようになった。
部屋のあらゆる場所に向かって座ることができ、思い思いに過ごせるL字型のソファには家族みんなが集まってくる。他にも、階段へのステップを利用して、子どもリビングの窓際にステージのようなスペースを設けた。ぽかぽかと日が当たる場所でのんびりと読書をしたり、ちょっと腰掛けたりするのにちょうどいい。
集まるのは家族だけではない。Oさま一家が移住して、新しくできた友人たちがすでに集まるようになったという葉山の住宅。「Oさまの素敵なパーソナリティーによるもの」とhm+architectsの2人は言うが、LDK空間での居所の多さや、大人と子どもが絶妙な距離感で過ごせるつくりもおおいに魅力になっているに違いない。
人柄を加味したプランニングで
機能性もデザインも想像以上の家になる
1階テラスの脇は壁を設けず手すりのみとしたのも、閉じた感じにならないように配慮した結果だ。またOさま夫妻が選んだ南側の窓のカーテンも、目隠しというより光を和らげる程度で、かなりの透け感がある。さらに、要望を受けて2階のテラスにはハンモックを複数吊れるように計画した。テラスが庭のように使えることはもちろん、ライン状の照明を取り付け、昼夜関係なく心地よいひとときが過ごせるようにしている。
外観のデザインもチャーミング。2階テラスのバルコニー部分を出発点として、屋根を通って地面まで、のの字を描くように壁面が連続している。また、2階テラスから軒天まで木材を貼り、アクセントとしたのと同時に親しみやすさを加えた。
コストの都合もあって敷地の広さから考えると建物がコンパクトになったが、それがかえって家全体の雰囲気をよくしたともいえると伊原さん。「建物をぐっと奥に下げられたので、道路との距離が取れました。敷地の奥にある玄関までのアプローチもゆとりを持ってつくれましたし、1階テラスの前にきちんとした植栽も設けることができたんです」と話す。
葉山を気に入り、葉山で暮らすならとイメージしながらの家づくり。Oさま夫妻は「伊原さん夫妻の合理的かつ抜群のセンスによって、思い描いていたよりも何倍も素敵で機能的な家ができました」と喜ばれている。これからも、明るく開放的なこの家には多くの人が集まり、笑い声が響くだろう。
基本データ
| 作品名 | 葉山の住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県三浦郡葉山町 |
| 敷地面積 | 198.73㎡ |
| 延床面積 | 103.88㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | O邸 |
撮影:小川重雄
設計者情報
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