
内外空間を緩やかに繋ぎ、視線カットも実現
高低差を活かした宙に浮くテラスの多機能性
土地の特徴を把握し、活用する
要望にトータルで応えるプラン
すべての作品で外構もセットで設計し、高気密・高断熱住宅を中心に手がけているそうだ。
今回のお施主様から出された主な要望は、
①眼前に広がる田畑などの眺望を確保しつつ、プライバシーも大切にしたい
②無駄のない家事動線で、家族の気配を感じながら暮らしたい
③縁側空間があると理想的
というものだった。
一方でこの作品の独創的な点は、以下の3つに集約される。
1:80cmの高低差がある敷地の特徴を活かし、宙に浮くテラスを設置
2:高気密・高断熱住宅であるにも関わらず、家の外と内が緩やかにつながる設計
3:室内からの眺望を確保しながら、外部からの視線をカットする外構や室内設計
一見すると要望と解決策が一対一で対応していないように思えるが、これには理由がある。
本田さんは単にひとつの要望を解決するのではなく、その他の要望や土地の特徴、理想とするライフスタイルを総合的に考えてプランを提示しているそうだ。
そのために力を入れているのが、お施主様とのコミュニケーションだ。実際にこの作品でも、施工段階でお施主様と相談した変更がいくつかあったという。
また、要望にはない提案も必ずしているという。この作品では、縁側が宙に浮くテラスになったり、家の中と外が穏やかにつながる設計などがこれにあたるだろう。
詳細は次章以降でご紹介するが、このように自分の要望をすべてかなえつつ、さらに付加価値がある、よりよい提案をしてくれる建築家の存在はとても心強いのではないだろうか。
土地の高低差を活用した“宙に浮くテラス”
室内段差と合わせて視線コントロールを実現
そこで本田さんが考えたのが、縁側をテラスに変更し、宙に浮かせるプランだ。テラスを宙に浮かせ、その下には低木の植栽を配置。外構とセットで設計することで、大きな段差や空間の分断を感じなくなる。外観写真をご参照いただければ、その効果がおわかりいただけるだろう。
視線のコントロールは、テラスと室内の設計を連動させて解決した。テラスは窓際に設けられたL字型の小上がりと同じ高さに。小上がりに接するダイニングは一段低くし、リビングはさらにもう一段低く設計した。
テラスの立ち上がりの高さも現地で確認し、最適な高さに。テラスでくつろぐ時には腰掛けることもでき、眺望を満喫できる。室内に入って一段低いダイニングに座ると、テラスの立ち上がりと高低差によって外からの視線はカットされる。眺望を楽しむことも、もちろん可能だ。さらに一段低いリビングはより落ち着いた空間となる。
こうして外からの視線をカットしつつ、眺望を楽しむことができる空間が誕生した。
小上がりについても触れておきたい。なぜ、小上がりを設けたのか。
本田さんは常に、開口部付近の居心地を良くするようにしているという。この作品で小上がりを設けた理由も、そこにある。床の高さを調整する意味もあるが、この小上がりは腰掛けられる高さに設計されているのだ。
お施主様もこの小上がりが大のお気に入りだ。腰掛けてテラスで遊ぶ子どもを見守ったり、日向ぼっこを楽しんでいるという。子どもは小上がりをステージにして歌を歌ったりダンスをしたりしているそうだ。この小上がりの下は、すべて収納になっていて、とても便利だというお施主様の感想があることを付け加えておこう。
本田さんは、「実際に住んでから、その良さがよくわかった」とお施主様に言われることが多いという。提案やアイデアが、とても深く考えられているからだろう。
高気密住宅でも、外の気配を感じて欲しい
家の中と外を、緩やかにつなぐ工夫
本田さんは、住宅の高性能化が進む中、できるだけ外の気配や四季を感じられる家づくりを心がけている。
「高気密高断熱の家は、頑丈な扉や厚い窓によって、どうしても外と中が分断されます。しかし日本には四季があります。家の中に閉じこもるのではなく、窓を開けて生活できる季節には、家の中でも外の空気を感じてほしいのです」。
この作品のテラス側の窓も、全開放できるように設計されている。また、室内でも外の気配を感じられるような工夫が散りばめられている。
奥行きのある広いテラスの上は、大きな軒で覆われている。室内に入ってすぐにある小上がりの天井は水平で、テラスの軒と同じ高さに。小上がりからダイニングやリビングに入ると、その上部は吹き抜けの大空間で、しかも曲面天井となっている。
つまり、深い庇を持つテラスが外と内の緩衝地帯となり、家の中に入っても小上がり部分が外とつながりを持つ空間となり、その奥にゆとりある吹き抜けの大空間があるという構造なのだ。
広大な外の空気感が、テラスと小上がりで段階的に室内側の空気へ変えていき、室内はまた大きな気積を持つ大空間となる。これらの場所は窓以外に区切るものはなく、ゆるやかに、グラーデーションのように空気感を変えている点に注目したい。こうした工夫で、街に向かって開きつつも、居心地の良い守られた空間につなげているのだ。これらはすべて、本田さんが提案したものだ。
その他にも、家の各所に細かな工夫が散りばめられている。ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
その土地の特徴を最大限に活かした家をつくりたい。あるいは(一見すると)短所となる条件を長所に変えたい。自分たちの要望をすべてかなえるだけでなく、さらに素晴らしい提案をしてほしい。こうした希望がある方は、いちどコンタクトしてみてはいかがだろう。
撮影者:山内 紀人
間取り図
基本データ
| 作品名 | 清須の家 / 宙に浮く縁側テラスのある家 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県清須市 |
| 敷地面積 | 189.31㎡ |
| 延床面積 | 100.64㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
| 施主 | M邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

エッジの効いた庇にぐるりと囲まれた家 パッシブ効果で、夏涼しく冬暖かな住まい
冬場はホワイトアウトも起こるという北海道石狩市。環境に負けない家にすべく計画したのは、家のアウトラインを深い庇で囲うプランだ。設計を担当した建築家の一原さんは、お施主さま好みのデザインと、機能性を両立。室内はパッシブ効果を最大に引き出す計画のおかげで、一年通して快適に過ごせるという

住宅密集地なのにこんなに明るい 2.5階という発想がもたらした開放感
隣家がすぐ隣に迫る住宅密集地に佇むG邸。中に入ってみると、外からは想像もつかないほど明るく、開放的な空間が広がっている。この家を設計したのは、建築家の村上康史さん。2階建ての建物に大きな吹き抜け空間を作っても、家族4人が狭さを感じずに暮らせるのは、2.5階をつくるというアイデアだった。

わずか建坪9坪の狭小住宅とは思えない 光と風、そして広さを感じられる住まい
東京都品川区中延の、下町情緒が残る住宅地に建つ作品をご紹介しよう。敷地は16坪、建坪はわずか9坪という木造3階建ての狭小住宅だ。屋内に足を踏み入れると、その内部は驚くほど明るく、風が通り抜け、自然を感じられる。そして、数値以上の広さを感じられるのだ。この作品に込められた工夫の数々をご紹介しよう。

祖父が設計した家が新たな形で生まれ変わる メリット多数の「増改築」という選択肢
高校時代からの友人だった施主から、祖父が設計したという旧家の建て替えの相談を受け た建築家の鈴木隆介さん。新築のプランをいくつも作ったにも関わらず、あえて手間もか かり難易度も上がる、既存の建物を活かした「増改築」プランも提案。施主のことを第一 に考えた増改築とは?

クラシカルな親世帯×リゾート風の子世帯 2つの魅力が光る、代々木の二世帯住宅
以前の家のクラシカルな雰囲気を望む親世帯、テラス付きの開放空間を望む子世帯。建築家の角倉剛さんは異なる要望に応え、大満足の住まいを実現。二世帯、建て替え、都市部の家づくりなど、さまざまなヒントが詰まった『代々木の二世帯住宅』の魅力を追う。

懐かしくて新しい!大きな屋根の下で、家族も緑も守られる暮らし
上空から見下ろすと ひと際目立つ白い屋根 その下には60歳を超えたご夫婦が暮らしています。もともとは夫婦で静かに過ごすつもりで建てた家でしたが、今では週末ともなれば、近くに住む娘たちが家族連れで集まり、賑わいます。

里海の暮らしがすぐそこに。 自然の恵みを体感できる店舗併用住宅
「海が見える場所に店舗併用住宅を建てたい」と、レストランオーナーのお施主様より依頼を受けたあわデザインスタジオの岸田一輝さん。お施主様にとっての「普通の暮らし」を叶えるため、また、この場所だからこその海の風景を楽しむように岸田さんが作り出したのは、「くの字」に曲がった建物だった。

メキシコの風を感じるハンモックでゆらり。 好きなものと暮らす、土間と吹抜けのある家
コーデザインスタジオの小嶋直さんが設計した『カーサ・コンコルディア』は、明るく陽気なメキシコらしさと、ホッと落ち着く日本らしさが調和した住宅だ。Nさまご一家が毎日楽しく暮らすこの家には、どのようなストーリーがあるのだろうか?

施主、大工、建築家の「共創」から生まれた 北アルプスを望むハーフビルドの“新築古民家”
北は北海道から南は九州まで、移住先を探すため日本各地を訪ねたというクライアントご夫妻。そしてようやく巡り合ったのが、北アルプスを一望する山間の集落の土地だった。その素晴らしいロケーションを活かした「土間の家」を手掛けたのは、建築家の坂利春さん。さて、どんな家となったのか、これから見ていこう。

