
未来を見据えた、可変性のある住まい。
都市の中で、光と白に満たされる住まい。
完全分離の二世帯住宅
暮らす人それぞれの使いやすさを第一に設計
青い空によく映える白い外壁に、伸びやかな片流れ屋根。シンプルでありながら確かなセンスが感じられるこの家の1階には、それぞれの玄関やお父さまの住居のほかに、塩澤さんのアトリエがある。塩澤さん一家の主な生活空間は2階。LDKや家族の寝室として使用している洋室、水回りなどを配置した。
設計は、お父さまと子育て真っ只中の塩澤さん一家、それぞれに合わせた暮らしやすさを意識して進めたという。お父さまの住居は、バリアフリーを考慮し床はフラットに。建具は引き戸のみとし、コンパクトに移動できる空間として仕立てた。
一家の住まいにおいては、やはり子育てしやすい動線を重視。「元気な男の子が3人ですから、手を洗ってから2階に上がってほしくて」と、玄関付近に手洗いを設けた。その後、コロナ禍もあり、大いに役立っている。
階段を上がると広がるのは、天井が高く広々としたLDK。キッチンを中心とした回遊動線を取り入れたことで、水回りや寝室を含めた2階全体で移動しやすい。また、キッチンからはLDKを見渡すことができ、お子さまたちがどこで遊んでいても安心だ。
キッチンの背面には大容量の収納棚を設けた。4枚の引き戸の中に食器や調理器具だけでなく、冷蔵庫などの家電まで収納。来客時には引き戸を閉じることで生活感のないスッキリした空間に整えられる。
また、2階の水回りは洗面・トイレ・浴室をひとつの空間にまとめた。トイレに仕切りがないのは珍しく感じるかもしれないが、来客用トイレは1階にあり、ほぼ家族のみでの使用であるため問題はない。一筋縄ではいかない三兄弟をトイレに行かせ、そのままお風呂に入れて……という一連の流れが、仕切りのない構成によってスムーズにでき、とても便利だという。さらに、同一空間に洗濯機、物干し場も近くに配置することで、家事効率を向上させた。
思い切ったプランの水回りは、「自邸だからこそ、やってみたかった」と塩澤さん。賑やかに楽しそうにお風呂へ向かう子どもたちの姿が目に浮かぶ。子育てにフォーカスしたことで、家族みんなが暮らしやすい住まいが実現した。
暮らし方がどのように変わっても、大丈夫
バリエーション豊かに変化できる住まい
例えば、1階の塩澤さんのアトリエは、主寝室として設計された空間。ただ、計画当初から寝室の近くに小さな作業スペースが欲しいと考え、収納の一部にテーブルを備え付けるなど、環境は整えていた。
夫妻の寝室をアトリエとしたため、子ども部屋として設けた2階の洋室を寝室として利用している。竣工当時は2人兄弟だったため、将来的に洋室を2部屋に分けられるように設計していたが、「その後3人になったので、それでは部屋が足りないわけです」と話す。
そうした大きな変化があっても対応できるのが、この住まいの大きな魅力だ。
なぜなら、水回りエリアの上部に、広々としたロフトがあるからだ。現在はキャンプ用品などを収納しているが、いざとなれば居室として活用できる。ロフトには窓があり、採光・通風が確保できるほか、エアコンも設置も可能なように、室外機置場もあらかじめ計画されており、用意周到だ。
それだけではない。キッチン上部、天井まで伸びる壁の裏側にも、片流れ屋根の高い天井高を活用した空間が隠されている。増床可能なスペースとして、床や壁面の下地材を建設時に施しておいたという。LDKを挟んで向かい合うように位置するロフトと増床可能スペース。「行き来できるように壁を取り払い、2つの空間をブリッジで繋いでもいいですね」とのこと。
さらに、将来的な変化も見据えている。お父さまの住居部分を含めて耐震壁の位置を工夫し、設計段階から複数パターンの間取り変更案を想定。「これからどのような変化が訪れるのかはわかりませんが、いかようにも対応できます」と塩澤さん。機能性を重視したあまり、間取り次第では手狭に感じることがあるかもしれない。しかし、そうした状況にも柔軟に対応できるのが、この「Shinpoの家」なのだ。
自邸だからこそ実現できた、「真っ白な家」
高級感と開放的を兼ね備えた、明るい住空間
塩澤さん一家の玄関に入ったとたん、その「白」の印象はさらに強まる。大理石の床・壁・階段までが真っ白でまとめられており、外部からの光が反射し、室内は明るく、吹き抜けによって開放感もある。2階の生活空間も、同様に白を基調としている。
この「真っ白な家」も、塩澤さんが自邸だからこそ実現したかったことのひとつだという。「掃除も大変ですし、お施主様にはなかなかご提案できませんが、私は掃除が好きなので」とのこと。ただ、この空間の明るさ・高級感・非日常感を一度体験すれば、きっと取り入れたいという施主が現れるに違いない。
インテリアや室内の設えにも、塩澤さんならではのこだわりがある。存在感のあるインテリア照明の選定や、カーテン・ソファなどのカラーコーディネートも得意とする。一日を通した光の入り方や拡散など、パースではわからないことを現場で感じ、建設段階でも積極的にアドバイスしているという。引き渡し前後問わず、インテリア提案も依頼可能だ。
また、2階のキッチンは塩澤さん曰く「一番使いやすく、メンテナンスもしやすい」というホーローメーカーを選択。ただ、空間に馴染むレンジフードの取り扱いがなかったため、それのみ違うメーカーのものを採用した。選択肢が幅広く、自由に選べるという点は、建築家に依頼する大きな利点といえるだろう。
現在、藤井建築空間設計の代表取締役を務める塩澤さん。ご両親が30年以上にわたり経営してきた、住宅をはじめとした豊富な実績を持つ建築事務所を引き継いだ。もちろん今も相談に乗ってもらうこともあるというが、何より近くでずっと両親の仕事を見てきたことが、大きな財産になっている。
「長年の実績で培ってきたノウハウがあります」と塩澤さん。施主の意向を汲み取り、トラブル対応はもちろん「心配事や不安を先回りして取り除けるよう心がけています」とのこと。勘所をしっかりと押さえて対応することで、施主はより明るい気持ちで住宅の完成を待つことができることだろう。確かなノウハウと実力があるからこその細やかな気遣いに、瑞々しい感性がプラスされた塩澤さんの家づくり。藤井建築空間設計の新たな実績として、どんな家が加わっていくのか楽しみだ。
基本データ
| 作品名 | Shinpoの家 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市 |
| 敷地面積 | 193.86㎡ |
| 延床面積 | 177.2㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+父+子ども3人 |
| 予算 | 4000万円台 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

狭いけれど狭くない 車3台分の敷地で仕事場もテラスも
敷地面積約10坪、車3台分のほどの敷地。そこに家族3人が住む自宅を建てたのは、島村香子建築設計室の島村さん。実はこの家には島村さんの仕事場や駐車場、テラスまであるのだという。島村さんの狭いけれど狭くない住宅づくりの秘密に迫る。

廊下、壁、格子が想像以上の奥行きを実現 住宅街でも気持ちよく視線が抜ける家
細長い敷地の特徴を生かし、奥行きが感じられる家にしたいと考えられていたお施主さま。建築家の神谷さんは、ただ見通しをよくするだけでは十分な感覚が得られないという。その先を予感させる壁などの配置により、長い廊下を生かし切って奥行き感だけでなく、暮らしやすさ、豊かさも申し分ない家をつくり上げた。

街とつながり、「楽しい」が増える場所。 北向きでも採光抜群、緑豊かな店舗併用住宅
暮らしも、仕事も、街の人々との交流も充実し、毎日が楽しい。福井啓介さん、森川啓介さんが設計した『HOUSE F』は、そんな新生活がかなう店舗・オフィス併用住宅。人生までぐっと豊かになりそうな、幸せな予感を与えてくれる建築だ。

素材も間取りも理想を現実にした、納得と愛着の家づくりとは?
無垢のフローリングに漆喰の壁、天井まで届く南向きの大きな窓。東京の下町にあるKさん邸は、周囲を住宅に囲まれているとは思えないほど開放的で明るいお住まいです。家族が一番長い時間、一緒に過ごすリビングを中心に考え、さまざまな工夫でコストを抑えながら、希望どおりのマイホームをつくりあげました。

ホテルのような贅沢さに、毎日感動する。 20年後も、年を取らない家をつくる
建てたい家のイメージはあるのに、実現してくれる施工会社が見つからないという問題に直面する人も多いだろう。T様もその一人だったが、建築家の桑名さんと出会って状況が一変した。 要望の本質を探ることでイメージを的確に形にし、かつ、期待以上の魅力をプラスした桑名さんの家づくりを紹介する。

ポワザ羽根木
古くからの樹木が多く残る地域に建つ庭付き賃貸テラスハウスである。 敷地形状を生かした雁行配置により、専有感の高い戸建感覚のプランとなっている。

木製ルーバーが暮らしを守る、中庭でつながった二世帯住宅+アトリエ
笹野さんの自邸『猪高台の家』は、親の住まいと完全に機能を分離した二世帯住宅+建築事務所からなっている。制限の多い土地条件に対して、過剰な3つの空間を収めた間取りと、それでいて採光や通風といった快適さを損なわない住空間。難解なプランを明快な答えへと導いた、笹野さんのユニークかつ的確なアイデアや工夫を紹介します。

こんなに心地よい自然素材の上質空間!を低価格で実現の秘訣は?
「できるだけお金をかけずに、質の高い本物の木材で建てた家に住みたい!」。30代、共働きのSさんご夫妻は、建築家・市川均さんとともに、都会の喧騒を忘れさせる緑豊かなエリアにこの家を建てた。なぜ、ここまで費用を抑えられたのか?そこには、これまで多くの上質なローコスト住宅を手がけてきた市川さんならではの細やかな配慮や工夫があふれていた。

近隣に家が増えても環境を変えずに暮らせる 壁に囲まれた中庭がある、明るい家
新規分譲地に自宅を建てるにあたり、考慮すべきなのはこれから家が増え環境が変わる可能性があること。お施主さまが要望されたプライバシー性や開放感を実現するため、建築家の池田さんが出した答えは「中庭を壁で囲うこと」だった。完成したのは壁の存在を忘れてしまうほど明るく、風通しのいい家だ。

