「Shinpoの家」は建築家・塩澤さんが自邸として設計した二世帯住宅。塩澤さん一家と義父、それぞれの暮らしに寄り添い、使い勝手を第一に考えて設計された。それだけではない。将来、暮らし方にどんな変化があっても柔軟に対応できるよう、多彩な工夫を随所に取り入れた住まいである。
この建築家に1階、塩澤さんのアトリエはもともと主寝室として計画された空間。設計当初から寝室の近くに小さなワークスペースが欲しいと考え、画像右の収納の一部にテーブルやコンセントを設けていた。画像奥、南側の窓から豊かな光が射しこむ、心地よい空間
2階の階段室から1階を見下ろす。右奥の通路を進むと、トイレやアトリエへと繋がる。左上に見える窓は、2階LDKのもの
2階の洋室は、子ども部屋として計画されたが、現在は家族の寝室として使用。シンプルなつくりだからこそ、幅広い用途を実現した好例といえるだろう。中央で仕切れば、独立した2部屋への変更も可能。他の部屋と同様に白を基調としているが、壁紙は子ども向けに強度の高いものを選んでいる
2階、リビングから望むキッチン。両側からアクセスできる動線が特徴。冷蔵庫や家電、食器類はキッチン奥の4枚引き戸の中にすべて収納でき、生活感を排除した。取り入れたシステムキッチンとは異なるメーカーの白いレンジフードを採用し、空間の意匠に調和させた
2階LDK。画像左上の開口はロフト。画像右、キッチン上の壁面の裏にも増床できるよう環境を整えた空間が隠されている。「いずれキッチン上の壁を取り払い、ロフトとブリッジで繋げるのもいいなと考えています」と塩澤さん
2階、手前から洗面・トイレ・浴室がひとつの空間にまとまった構成。視線が届きやすく、子育てに安心感が生まれた
2階LDK。住宅密集地という立地ながら、開口の妙で明るく開放的な暮らしを実現。正面の窓の先には大きなバルコニーが広がる。「その向こうに見えるのは郵便局です。壁面に窓がなく、夜間や休日は無人になりますから、この窓はカーテンを閉めることもほぼありません」と塩澤さん
2階ロフト。手前の2つは外部と繋がる窓、最奥の開口はLDKに向けたもの。LDKに接する壁は取り払うことも可能で、将来的に居室として使うことを想定し、エアコンの設置にも対応している。片流れ屋根を生かした設計により、天井高があり、十分なゆとりを感じられる
外観。お父様の要望により、塀を設けずオープンな外構に。郵便局利用者が塀の前に車を停めてしまうことを避けるための配慮である。2階左側はバルコニーで、直射を避けながらキッチンにやわらかな光を届ける設計