志向の違う共働き夫婦が、揉めない!
いや心地よい!リビング作り

共働きのFさんご夫妻は、あるきっかけから住み慣れた場所での建て替えを決意。ライフスタイルの違うふたりがめざした住まいは「ひとりでも、ふたりでも心地のいい空間」。建築家・松本直子さんは、さまざまな工夫でコンパクトな敷地内にLDKのほかふたつの寝室や書斎なども備えた理想の住まいを実現させた。

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LDKを1階から2階へ移動。風通しのいい明るい空間に

都心に近い住宅地でありながら、家の南側が学校のテニスコートという開放感にあふれた好立地に建つF邸。建て主ご夫妻は、もともとこの場所に建っていた中古の住宅を購入し、リフォームをしながら住んでいたとのこと。この家への建て替えを決めたきっかけは、建物に入った大きな“ひび”だった。

 「またリフォームするのでは耐震性の面でも不安が残る。このタイミングで思い切って建て替えようと決めたんです、ということでした。ご夫妻はこの場所をとても気に入っていらっしゃるご様子でしたね。南北に長いこの敷地は、南側に学校のテニスコートと大きな常緑樹があり、北側の道路も広いという、開放的でありながらプライバシーを保ちやすい好立地です」と、この家を設計した建築家・松本直子さんは話す。


 もともと建っていた家は個々の部屋が独立した造りで、1階にリビング、ダイニング、キッチンがあった。「建て替え前の家にも何度かお邪魔しましたが、築年数が経っているせいもあり、せっかくのすばらしい環境を活かしきれていないように思いました」と松本さん。「建ぺい率も非常に厳しいところだったので、従前どおり1階にLDKを置くと吹き抜けなどのスペースが取れない。ご夫婦の『家の雰囲気を変えたい』とのご要望を受け、眺望もよく天井を高くとれる2階にLDKを持ってくることにしました」

 漆喰の壁とトップライトで明るさを演出した階段を上がると、まず目に飛び込んでくるのは枝ぶりの立派な常緑樹。その眺めを最もダイレクトに楽しめる場所にダイニングスペースをとった。「来客があったとき、一番すてきな場所でおもてなしをしたい」という希望をかなえることとなった。


 ダイニングからリビングへは、ちょうど内階段の段差ふたつ分ほど上がっている。ここにも、ご夫妻に対する松本さんの細やかな気配りがあった。「ソファに座ると、目線がダイニングテーブルより低くなりますよね?そうなると残念なことにリビングから南側の景色が見えなくなってしまう。それを解消するために、リビングの床を36センチ底上げし、ソファからでも視線の抜けがいいようにしました。さらに、高い位置にいくつか窓をつけて空が見えるようにし、できるだけ広がりを感じられる工夫をしています」

【松本直子さん コメント】
便利な場所にありながら自然を感じられる、都内ではなかなか貴重な立地を活かした家づくりを心がけました。延床面積が28坪弱とコンパクトなため、可能な限り開放的に見せた上で、部屋のバリエーションもあって楽しく住めるような工夫を凝らしました。設計の際にはご夫婦のもとに何度も足を運び、どんなに小さな要望でも包み隠さずお話しいただいたこともあり、ご満足いただける家が完成したと思っています。
  • リビング~和室/広さ6畳とコンパクトなリビングは天井を4メートルと高めにし、天窓をつけた。日中は豊かな陽の光を採り入れられる、開放感いっぱいの造り

    リビング~和室/広さ6畳とコンパクトなリビングは天井を4メートルと高めにし、天窓をつけた。日中は豊かな陽の光を採り入れられる、開放感いっぱいの造り

  • ダイニング~キッチン/キッチンは、ダイニングテーブルと向かい合うように設計された対面型。食器棚やパントリー、冷蔵庫スペースには壁と同色の引戸をつけた。生活感のあるものを隠せて見た目にも美しいだけでなく、必要に応じて開け閉めすることで汚れにくいというメリットも

    ダイニング~キッチン/キッチンは、ダイニングテーブルと向かい合うように設計された対面型。食器棚やパントリー、冷蔵庫スペースには壁と同色の引戸をつけた。生活感のあるものを隠せて見た目にも美しいだけでなく、必要に応じて開け閉めすることで汚れにくいというメリットも

  • リビング/テレビ上部にはハイサイドライトをL字に配し、陽の光が白い壁に反射することで、光を部屋全体に行き渡らせるような仕組み。造りつけのサイドボードは、今後映像機器が増えてもいいように余裕を持たせた

    リビング/テレビ上部にはハイサイドライトをL字に配し、陽の光が白い壁に反射することで、光を部屋全体に行き渡らせるような仕組み。造りつけのサイドボードは、今後映像機器が増えてもいいように余裕を持たせた

撮影:小川重雄

基本データ

施主
F邸
家族構成
夫婦