
南北に抜けがあり、自然光と吹き抜ける風、
そして四季の移ろいや景観を満喫できる家
南北に抜けがある敷地
その特徴を最大限に活かす
杜設計は地域の設計事務所・工務店として家づくりを手掛けており、グループ企業と連携して土地探しから施工、外構、さらには家具の製作まで一貫して手掛けている。
その総合力が信頼され、過去の作品は “こだわりがとても強く、高い設計力が求められる”ケースや、“敷地選びに難航し、土地探しからトータルで依頼される”ケースが多いという。詳細は、他の作品の記事をご参照いただきたい。
しかし今回の作品は、こうした難易度が極端に高いプロジェクトとは少し状況が異なる。言いかえれば、より“一般的”な条件の敷地なので、参考になる方も多いだろう。
だからといって、ただ普通に設計することはない。なぜなら土地探しからプロジェクトがスタートすることが多いため、逆に言えばその土地の特徴を最大限に活かす設計を必ずおこなってきたからだ。
今回のケースは、杜設計の完成見学会にお施主様が参加したことがきっかけだった。その際、お施主様が探してきた、いくつかの土地の候補に優先順位をつける相談を持ちかけられた。
山本さんは南北の両方に抜けがあり、適度な広さの候補がもっとも良いのではないかと考えた。南側は平屋で、北側は田畑が続き、遠くに山々を望むことができる土地だったからだ。
その後お施主様がその土地を購入し、山本さんに設計の依頼をすることとなる。
基本的プランは、スムーズに決まった。アドバイスを受けた南北の抜けのすばらしさを、お施主様も気に入って土地を購入したからだ。そのため、山本さんが提案した“南北に抜けのある敷地条件を活かすプラン”に、お施主様も同じ気持ちで合意した。
山本さんは、土地の特徴を最大限に活かすことについて、次のように語った。
「土地が持つ特徴はすべて異なります。すばらしい眺望があるなど、わかりやすい長所があれば当然その特徴を活かします。一方で、たとえば住宅地など、一見すると“普通”に見える土地にも、必ず特徴があります。よく観察すれば、たとえば道路や隣家からの視線がわかるのです。そうすれば、視線のカットをどうするのか、あえてしないのかも考えられます」。
「逆に一見すると問題や短所となるように思える土地では、その課題を乗り越えるプランを考えるのが私の仕事です。建築家に注文住宅を依頼するということは、その特徴を把握し、プランや設計に落とし込めるということなのです」。
今回の作品も、こうした考えで誕生した。住宅地など、極端に特徴的な土地ではないというケースは多いだろう。しかしその場合でも、その土地が持つ長所を最大限に活かす。こうした提案ができる建築家は、とても心強いパートナーだと言える。
要望に応えるのは、あたり前
想像を上回る提案こそが存在価値
お施主様から細かな要望はあったものの、基本的には“お任せ”のような状況だった。
たとえば
・家事がしやすい動線にしてほしい
・家の外も楽しめる外構
・深さがある洗面化粧台
などの要望があったが、それらにはすべて対応した。
ただ対応するだけでなく、より良いアイデアを組み込んだ提案をしている点に注目したい。
家事動線はキッチンと水回りをつなげるだけでなく、室内干しができるサンルームとファミリークローゼット、さらには道路からは外から見えない場所で外干しができるエリアまで家全体と敷地全体がつながる設計とした。これであれば、入浴から洗濯、室内干しや外干し、そしてクローゼットへの収納まで楽にできる。
外構ではリビングと同じレベルでつながる広いデッキを設け、さらに桜や紅葉など四季を楽しめる植栽を施した。植栽は、外からの視線を遮る場所にも目隠しとして配されている。広いテラスや庭ではBBQも可能で、アウトドア好きのお施主様にとっては最高の場所になるだろう。
深さがある洗面化粧台はボウル単体での販売がなかったので既製品を解体し、造作で洗面台を作り直した。
これらは外構や家具製作まで手がける、杜設計ならではの特徴を活かしたものだと言える。
また、要望はなかったものの、パッシブデザインを取り入れた。
実はこの土地、方向が真南から少し斜めにずれていた。しかし建物を真南に向けることで、南北に風と視線が抜ける環境を実現。冬場は自然光を最大限取り入れ、さらに2階をテラスの上に張り出し、深い庇としても機能するパッシブ設計とした。
山本さんは、
「お施主様の要望を実現するのは、あたり前のことです。しかしさらに付加価値をつけたたより良い提案をすることにこそ、建築家の存在意義があると私は思っています」。
その他にも、この作品の各所には考えつくされた工夫が散りばめられている。ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
お施主様本人が切った、南三陸杉を使用
唯一無二の体験と思い出で、深まる愛着
杜設計が展開するブランド、杜ハウスでは地元の素材を活用することを心がけているという。特に南三陸杉を多用し、この作品でも多くの構造材に南三陸杉を使っている。
さらに驚くのは、伐採シーズンとタイミングがあえば、お施主様が自分で南三陸杉を切る「伐採式」を実施していることだ。この作品でも畳スペースのあらわし柱に、お施主様が現地の山で切った南三陸杉が使われている。
自宅の柱を、自分で切る。そのような経験がある方は、ほとんどいない。唯一無二の体験だろう。
その意図を、山本さんはこう語ってくれた。
「根本にあるのは、いつまでも家に愛着を持っていただきたいという想いです。お施主様が切った木材が、柱になる。その時の思い出や経験が、住み始めてからもずっと蘇るのです。また、地域材を使う事で、家づくりが地域経済にしっかり還元される事を、お施主様に体験していただきます。そのため、伐採式に参加したお施主様からはとても高い評価をいただいています」。
当然ながら、お施主様はこの作品にとても満足しているという。
土地の特徴を把握し、最善のプランを提示してくれる。必要であれば土地探しから関わってくれる。あるいは要望以上のアイデアを提案し、外構や家具の造作も意図を持って行ってくれる。そんな建築家と出会うことができれば、とても心強いのではなかろうか。
興味が湧いた方は、今回のお施主様のように、一度相談してみてはいかがだろう。
撮影者:越後谷 出
基本データ
| 作品名 | 南北に抜けがある、明るい自然光が心地よい家 |
|---|---|
| 所在地 | 宮城県石巻市 |
| 敷地面積 | 255.17㎡ |
| 延床面積 | 111.79㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子供1人 |
| 施主 | S邸 |
設計者情報
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