
切妻屋根のワンルーム住宅
設計者情報
駅から少し離れた郊外の分譲地に立つ戸建て住宅の計画。大きな敷地を新規に20区画程度に切り分けて分譲されていたうちの1つの区画だ。こうしたよくある大型分譲地の場合、都市計画で定められた最低敷地面積という土地の切り分け最小値が存在する。この最小値は、地域によって異なるが約100㎡(30坪)程度の上物(家)が建つように設定されている場合が多く、本敷地もそうした都市計画の元に最小限に切り分けられた土地に一斉に新しい住宅が約20棟並ぶ計画となっていた。 施主は、夫婦と3人の子供含めた5人。要望は、広々とした空間にしたいこと、眺望を生かしたテラスが欲しい、収納は多いほうがよい、子供たちが勉強できるスペースをリビングにほしいなど様々な要望が混在し多岐にわたっていた。 多岐にわたる要望の中で、私たちが強く感じたのは約30坪の住宅に5人が住むことになる場合、個々の部屋を細切れに作ると、一つ一つの空間は手狭になり生活していく上で息が詰まるのではないかというところ。子供たちは小さかったので、子供部屋は最初から分ける必要はないということもあり、なるべく部屋を切り分けずワンルームに近い形で計画することを考え提案した。 ワンルームといっても、5人という人数が住む場合に、すべてが筒抜けになった大きな空間をつくれば、個々のパーソナルなスペースがなくなるし、しばらくすればその空間自体に飽きてしまうと考え、ワンルームながら空間に居心地の差異や起伏があるような状態を目指して設計していった。 「切妻屋根と回遊空間がつくる起伏あるマルチスペース」 予算も限られていたためなるべくシンプルな形状で、起伏ある空間をつくろうと考えた。ここでいう起伏ある空間とは、ある1点からの見え方がよいものではなく、天井の高低差や、空間の明暗、それらが空間体験として連続している空間。動き回っている中で、様々な体感がある空間の方が長く家にいても飽きの来ないものになると考えた。 様々な角度からのプランを施主と共に話合っていった結果、建築的には、シンプルな切妻屋根形状のヴォリュームの中央に、階段を配置しただけのシンプルなプランとなった。切妻屋根の方向性のある形状と、中央に配置した階段の周囲に各機能が配置された回廊状のプランである。階段の周りは四周が外部なので、東西南北それぞれに窓が配置でき光が室内に抜けるし、外に出れば1Fには庭、2Fにわテラスもある。2Fは屋根の形をそのまま空間にした勾配天井とすることで、方向性のある屋根形状が自然と空間の伸縮を生み出した。 さらに対角に貼ったロフトによって籠り感と、広々とした開放感がシームレスに連続するようにしている。各部屋の仕切りは水回りと、主寝室以外はなく、その寝室もドアを開ければ回遊できるようになっているので、1F~2Fまでほとんど仕切りのないワンルームとなった。家のどこにいてもなんとなく誰がどこにいるのか気配がわかる距離感。天井は5m近いところから、2m程度のところまであり、明るく眺望のよい場所もあれば、窓がない落ち着いた場所もある。 勾配天井は、頂部を金物でジョイントし開き止めを施した無柱空間となっている。屋根は登梁を24mmの厚ベニヤで固めて剛性を保っている。余計な構造をなくすことで、空間の伸縮をよりダイレクトに体感できるようにと考えた結果だ。道路から見るとシンプルな切妻形状をした外観が、同時期に立った分譲住宅に並ぶ。なるべく小さく見えるように軒高も極力抑えた。 都心に近いベッドタウンで戸建て住宅を探している子育て世帯からすると、家族が集まる場所はなるべく広くしたいが、個々のスペースは確保したい。リビングで勉強もしたいしリモートワークもする。収納はたっぷりとりたい。今日での住宅は様々な機能を背負ったマルチな空間であることが求められる。ただ、それぞれを分断してしまうと心地よい空間にはなりずらい。各空間は分断せずにシームレスな空間をつくりながら個別の雰囲気を持たせたい。限られた面積をとにかく有効活用して、ワンルームでありながら様々な様相が連続する、都心ならではの空間づくりを目指した。
基本データ
- 所在地
- 神奈川県川崎市
- 敷地面積
- 125.51㎡
- 延床面積
- 97.70㎡
設計者情報
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