
北海道、離れ、定年後...
すべての条件を調和した自然素材空間
家を、家族を支えながら寄り添う「壁」がある住まい
漠然とした想いが具体的に動き出したのは、築30年の自宅を改修した親戚の家を訪れたことがきっかけだった。「同じ市内で暮らす親戚宅を訪れたら、壁や天井、壁を埋め尽くす本棚にも道産のカラマツが使われていて、とても居心地の良い空間でした。私たちも、木のぬくもりに抱かれながら暮らせたらいいなと思い、同じ建築家に依頼しました」。
建築家の及川さんが提案したのは、邸内の至るところに道産を中心とした木材を採り入れた住まい。地産地消を実践しながら、気持ちの良い空間を作り上げた。「躯体にはトドマツの集成材を使い、あらわしにする部分には同じ樹種の無垢材を採用。軽やかで清潔感のある樹種なので、家全体が優しい雰囲気に仕上がりました。床には厚さ38ミリのデッキ用の道南杉を、接合部に凹凸を作って組み合わせるサネ加工を施して敷設。キッチンや洗面台などの家具や階段の手すりは、比較的傷がつきにくく、年を経るごとに赤みがかっていく様子を楽しめるカラマツで統一しています。外壁は、トドマツの下見板をグレーで塗装。玄関廻りにはレッドシダーを使うなど、様々な樹種の持ち味を引き出しながら、色や風合いの変化を楽しめる家になればと思いました」と及川さん。
全体計画を考える中でポイントとなったのが、先すぼまりに変形した敷地のどこに、どのような形状の家を建てるかということだった。「隣地がO様のご自宅なので、隣地の庭も含めて空間の広がりが感じられるよう、外壁を斜めにしました。リビングダイニングの中央にも白く塗装した壁を斜めに立てることで、午後の光を家の中に導きました」。室内の壁は、北国の住宅で少しでも長い時間、明るく過ごせる工夫であるとともに、裏側の寝室を緩やかに仕切って落ち着きを生む効果も。暖房器具の設置や本棚のスペースとして、ロフトの床を支える耐力壁としても機能している。
「娘の家族を呼んだり、入浴のために訪れたり、今は別荘のような感覚で楽しんでいます。トドマツを始めとする道産の木に囲まれた空間は、まるでリゾート地を訪れたようで、自宅と離れの行き来が気分転換になっています」とOさん。「別荘」から「終の棲家」へ。歳を経るごとに役割が変わりながらも、住む人を見守り続けてくれる、包容力のある家が完成した。
母屋との関係や北国の冬事情に配慮した設計
外壁にはトドマツを採用。北海道ではお馴染みの下見板張りで、反りにくいよう通常の板よりも分厚くし、強度のある長ビスでしっかりと留めている。グレーの塗装を重ね、落ち着いた雰囲気を醸し出している。また、北国の住まいでは冬期、隣地への落雪に頭を痛めがちだ。無落雪型の平屋根にするケースも多いが、O邸は幸いにも、南面に庭が広がっている。そのため、庭に雪を落とす前提で屋根勾配を計画。庇も設けて、雪や太陽といった自然と共生できるよう配慮されている。
【及川 敦子さん コメント】
以前、60台のご夫婦の住まいを設計させていただいたことがあるのですが、打ち合わせの際に「できるだけ長い時間、太陽の光が感じられる家にしてほしい」とおっしゃっていました。O様も同年代ですし、家で過ごす時間がほとんどとのこと。雪の多い地域にお住まいなので、なおのこと自然光を取り込みたいと考えながらプランニングしました。
【夫婦】
グレーで塗装したトドマツの外壁は、この家の中でも特に気に入っているところです。角地で2面が道路に面しているため、周辺は人の往来が多いエリア。犬の散歩などで通りかかった人が、離れを立ち止まって見て行くことが多く、ちょっと嬉しくなります。
基本データ
| 家族構成 | 夫婦 |
|---|---|
| 施主 | O邸 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

築43年のマンションを一新。 やわらかな発想で実現した豊かな環境
建築家の小野さんが70年代の建築にこだわって物件を探し、見つけたのは1977年築のマンション。建物の丈夫さは申し分なかったが、自宅として快適に暮らすためには多くの問題を解決しなくてはならなかった。大規模リノベーションによって生まれ変わった空間を紹介しながら、「豊かな環境」について考える。

狭小・北向きでも明るく快適! 家族が集まる居心地抜群のLDK
首都圏の狭小住宅でよく見かけるのが「3階建て・2階がLDK」というパターン。だが、東京を中心に数多くの狭小住宅を手がける(株)ホープスの清野廣道さんは、敷地14坪のU邸のLDKを3階・北向きに配置した。一見するとセオリーに反するようなこの間取りには、実はいいことが盛りだくさん。その魅力とは?

親子三代で、星が見える家に住む家族は、ぜったい幸せ!
とある住宅地の一角に、道行く人の目を引く外観の建物ができました。まっ白な外壁に散りばめられた大小の窓枠が特徴的な二世帯住宅です。名付けて「マドワクの家」。この家には外からの見栄えの良さはもちろんのこと、室内にも、狭い敷地に、6人の大人が快適に暮らせるための工夫がたくさん詰まっていました。

もはや建築物ではなくアート。約200㎡のマンションを美しくリノベーション
長い海外生活を経た後に日本で暮らしているという依頼主のAさん。生活の基盤を日本国内に置くすることが決まり、それを機に、現在の住まいであるマンションのリノベーションを決意。そんな、海外経験が豊富なAさんが選んだパートナーは、STAR(有限会社エスティエイアール)代表の佐竹永太郎氏でした。Aさんが思い描くハイセンスな世界観を見事に具現化した住まいを紹介します。

屋根裏部屋風の2階は総畳敷き。庭と建物の境界を感じさせない「繋がる家」
見た目はもちろん、長く暮らしていくうえで快適な住環境づくりを実現するため、図面を詳細に至るまで検討し、熱の動きや空気の流れまでを設計することに努めているという「ELEPHANT DESIGN」の門脇さん。周囲の環境に溶け込むデザイン、可能な限り既製品を使わずに、その1軒の建物のためだけにデザインするという姿勢が、家づくりの常識の枠を超えた、Y様邸のような住まい空間を生み出すのだ。

これは老舗旅館!?非日常感と使いやすさも両立の圧倒的高級別荘
軽井沢にあるKさん夫妻の別荘は、民家とは思えない上質な非日常感をまとう。しかし、意外にも素材などのスペックに「贅を尽くした」わけではないという。建築家の谷内田章夫さんは敷地のポテンシャルを最大限に活かし、空間の見せ方で圧倒的な高級感を演出した。

日当たり良好 さまざまな窓が生み出す 「開かれた家」の居心地の良さ
住宅の顔ともいえる窓は。窓の大きさや数、形によってその家の印象はもとより、暮らしやすさにも左右する重要なアイテム。大きな窓をはじめとした、さまざまな窓で、陽当りや開放感を実現し、居心地の良い家を作ったのは、伊藤明良一級建築士事務所の伊藤さん。つい長居したくなる、この家の秘密に迫る。

住宅街にこんなにも豊かな空間が誕生 緑・光・風を楽しみながら暮らす
新築でありながら、ずっと前からここにあったように周囲に溶け込む家がある。設計を手掛けたのは、遊び心あふれる発想と、自然との調和を大切にするアトリエウィの宇佐美さん。周囲環境にも住む人にとっても馴染む設計によって、心地良い住まいが実現した。

木製ルーバーが暮らしを守る、中庭でつながった二世帯住宅+アトリエ
笹野さんの自邸『猪高台の家』は、親の住まいと完全に機能を分離した二世帯住宅+建築事務所からなっている。制限の多い土地条件に対して、過剰な3つの空間を収めた間取りと、それでいて採光や通風といった快適さを損なわない住空間。難解なプランを明快な答えへと導いた、笹野さんのユニークかつ的確なアイデアや工夫を紹介します。
