
子育てと共同体の模範!
シングルマザー向けシェアハウス《後編》
人との葛藤が、子どもだけでなく親にも人間関係のレッスン
〈石尾〉 よく聞かれます。私は、むしろ、入居者間でぶつかり合うのは当然のことだと思うんです、他人同士だし。誰々さんが歯磨きした後は洗面台が水びたしだとか、あの人がお風呂入った後はなんでこうなるのとかね。自分は当たり前と思っていることが相手は違ったりして、ビックリすることって、たくさんあると思うんです。今のお母さんたちももう少子化世代で、人との葛藤に慣れてなかったりするんですよね。
でも、そのなかで他人と暮らすって、こういうことなんだって気付くんです。結婚相手のことを思い出すと、一緒に暮らしていたときはそんなすれ違いはなかった、もしかして嫌いじゃなかったかもと思うようになって、子どもの面会で会ううちに復縁したっていう例もあるんです。シングルマザーになっても異性との恋愛関係もありますよね。でも、かつての結婚相手との失敗を、また次の結婚相手と同じように失敗、また次もと重なると、傷ついていくじゃないですか。でも、ここで同性同士なんだけど、他人と暮らすっていうことを体験したことで、元の人とではないけども、次の恋愛で子どもと一緒に3人で暮らすってなったときに上手くいっている方も結構います。
〈細山〉 普通の賃貸の管理とは違った、踏み込んだトラブルが起こることはあります。そういうときは、なるべく当事者から双方から話を聞くようにしています。人数がすくないと誰のことを言っているのか特定できてしまうので、全員で集まって、少し大きなテーマにして間接的に話を進めることもありますね。後は愚痴を聞いてアドバイスをしたり。できることだったら、ですけどね。女性の気持ちばっかりは私にはさっぱり分からないので、その辺は石尾さんに・・・。
〈石尾〉 チームワークですね。相手を変えて、話をしたり。でも、そういうトラブルは基本的に未然に防ぐようにしています。普段、時間帯がちょっとずれると顔も合わせてないなんていう方もいると思うので、入居者パーティーのような楽しい場で時間を共有してもらったり。なにか起きてしまった時も聞いてあげるだけで意外と落ち着くんですよ。誰々さんに私たちから言いましょうかっていうと、「いいです。聞いてもらってスッキリした」というケースがほとんどですね。
〈細山〉 そうですね。私たちはガス抜きって呼んでるんですけど、話を聞くのは基本ですよね。管理会社としてもよくやります。本当にイヤだったら出て行きますからね。それでもここにいるメリットがあるから悩むわけで。
〈石尾〉 人のことは知らない、自分の子どもさえ守れればって、かたくなになっていると自分たちが生活しづらくなりますよね。どうしたら人と仲良くできるんだろうっていうことを考えるきっかけにもなると思います。
----- では、仲良くなるきっかけは?
〈石尾〉 接点はなんと言っても子どもですね。子どもは垣根がないですから、どんどん仲良くなります。普通のシェアハウスより仲良くなるのが早いと思います。お母さんの方が離婚や別居でふさぎ込んでいても、子どもが「今日お友達になったよ、ママ。これもらったんだよ」とかって、おままごとの道具を持っていたら、「そうなの、ありがとう」ってなりますよね。「うちの子なんですよ、仲良くしてください」って。そこでもう話すきっかけがどんどんできるから。
〈秋山〉 OGは仲いいですよ。やっぱり。
〈石尾〉 そうそう。
〈秋山〉 来月、OGの結婚式があって、たぶんそこに全員集合ですよね(笑)。
〈石尾〉 ずっとペアレンティングホームにいてもいいと思うし、自分と子どもだけになって、最初の1年、2年だけでもいられたら、もう1回自分の人生設計とか取り戻すのにいいと思うし。やっぱり孤独にならないでいられますから。そこでまた次のステップとして、自分で単独で賃貸で出て行くっていう人もいるし。
〈秋山〉 それこそ本当に、新しいパートナーと再婚された方もいますね。
女性の子育てと仕事の両立を軸に、街を変えていく
〈秋山〉 僕としては、ひとつの家のシェアからもっと地域的な規模に広げていきたいですね。子育てだけじゃないかもしれないですけど、まちづくりみたいな観点で広げていきたいっていうのはすごくありますね。当初から、子育てと仕事の両立を実現することを目標にしているので、シングルマザーだけではなくて両親がいる家庭を対象にしたペアレンティングホームも実現したいですね。
〈細山〉 不動産屋としては、空き家、空室を埋めていくことはひとつの使命だと思っています。その利用方法としてペアレンティングホームが利用できればいいなと思っていて。1K・ワンルームの賃貸って、シングルマザーの方お断りのケースが多いんですね。音の問題もありますし、そもそも単身用なので家族で住むのはNGというオーナーさんも結構いらっしゃるんですよ。一方で、20年30年前に建てられた、いわゆる3点ユニット―お風呂とトイレと洗面が一緒になっている―の1K/ワンルームって今すごく余っているんです。そういった使われていない空き家、空き室を利用して、個々の生活ができる個室を残しつつ、1〜3室ぐらいの部屋をつぶしてリビングをつくってみんなで集える場所をつくる。そこにシングルマザーの方に入っていただいて再生させるっていうようなことはやっていきたいなと思います。
-----不動産のかたちもどんどん変わりますね。
〈細山〉 今、スピード感がすごく早いんですよね。過渡期だと思います。今まではハードを良くすれば賃貸物件ってお客さんが入る時代でしたけども、もうこれ以上、分譲と変わらないんじゃないかっていうぐらいまでやり尽くしたので、こういうようなソフトの部分で新しいことをとりいれようという考えをもっている人は最近、増えてきていますね。秋山さんを始め、建築でもそういう方がいます。我々35歳前後の世代は多いです。今後、ペアレンティングホームを始め、そういった実例をみてハード一辺倒だった人たちにも、こういうこともできるんだと気付いもらえたら、建築や不動産の業界も少しずつ変わっていくと思います。
〈石尾〉 私はシングルマザーの増加はしばらく歯止めがかからないと思うので、当面はシングルマザーのシェアハウスを増やしていきたいなと思っています。地域も広げていきたいですし、やっぱりいずれは両親が揃っている世帯のペアレンティングホームを実現していきたいですね。今はシングルマザーのシェアハウスがペアレンティングホームの代名詞のようになっていますけれど、ペアレントって愛情をもって育てるっていう意味なんです。そこにingをつけてペアレンティングホームと名付けたんですね。子育てをするための家を増やしていきたいですね。
-----歯止めがかからないというと?
〈石尾〉 私はおふたりとは世代が違って今51歳です。私の時代の結婚観と今の男女の結婚観って、だいぶ違うんですよ。お姑さんのあり方も、夫婦のあり方も。今、保育園で子育てしている20代、30代のママ、パパと付き合っていると、本当にパパが素晴らしいんです。送り迎えもオムツ替えも、ママが出張ならお風呂もご飯も全部、自分でやる。それも男だから、女だからっていうことではなくて、女性をすごく大事にしているのが感じられて、それを見てると、とっても幸せな気持ちになれるんですね。今、世の中がどんどん変わってきて、男女のあり方も対立関係じゃなくて協力関係になってきているから、いつかは離婚率が下がってくると思います。生きている間にそれを見たいですね。両親が揃っていたって子育ては大変なことなのなので、それをいかに楽しめるか。子どもが育つまでの人生の大事な10年、20年を親も楽しみながら、素晴らしい子どもたちを未来に残せるような仕組みにしていきたいですね。
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基本データ
| 所在地 | 神奈川県川崎市高津区 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
設計者情報
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