
家族がふれ合えるくつろぎ空間が豊富!
オトナ家族の家づくり
LDKだけじゃない。家族が自然にふれ合える空間づくり
Kさん一家は、50代のご夫妻と20代のお子さんの4人家族。先代から受け継いだ工場兼住居で建具業を営んでいたが、都道の拡幅計画で立ち退きを余儀なくされた。そこで、たまたま巡り合えた近隣の土地に建設したのが、建築家の植松利郎さんが手がけたこの新しい工場兼住居である。
お子さんが成人しても一緒にコンサートやひいきチームのプロ野球観戦に出かけるほど仲が良く、家族そろって音楽鑑賞や読書が大好きというご一家の要望は、「家族で団らんできる住まいを」というものだった。そう聞くと、つい、「じゃあ広々したLDKがあればいい!」と思ってしまいそうだが、そこはプロ。植松さんはそんな発想を軽く飛び越え、家族が一緒に過ごすためのスペースを邸内のあちこちに生み出した。
まず、家族団らんのベースとなるLDKは2階に配置。LDKは、3階への階段がある通路との間に引き戸を3枚とっている。そして、引き戸の素材に選んだのは半透明のポリカーボネート。階段スペースにたっぷりそそぐ明るい日差しが柔らかく入るうえ、3階へ行き来する家族の気配もよくわかる。それでいて、“リビング内階段”とまではいかず適度な距離感も保つ絶妙な一体感は、お子さんが成人しているKさん一家にぴったりだろう。
このほか、植松さんは家族団らんの場として3階の“家族室”を提案した。3階は2人のお子さんの個室が主寝室を挟む形で3つの部屋が並んでおり、“家族室”は3つの部屋の入口に面した通路にあたる。植松さんはこの通路をテーブルや椅子が置けるほどに広くとり、多目的に使えるようにしたのだ。ここには、読書好きなご一家のためにたくさんの本を収納できる書棚も造り付けた。2階~3階への階段に面しているので2階の気配もよくわかり、読書にふけっていてもどこかで家族との一体感を得られる。階段のある東に大きくとった窓と南のバルコニーから自然光がさんさんと降りそそぎ、居心地も抜群だ。
もうひとつの家族団らんの場はバルコニー。バルコニーは2階、3階のどちらにも設けてあり、いずれもゆったりとした広さでBBQなどにうってつけ。天気のいい日はご主人が日なたぼっこしながら日焼けを楽しんだりもするという。
実は、K邸の南東は住宅や3階建てビルと密接していてプライバシー面が懸念され、かつ、形が斜めになった変形敷地。南東に居室ではなく階段や通路、バルコニーを配したのはこうした事情からだった。しかし、これらの空間で採光や通風を確保し、自然光を半透明の引き戸でLDKに採り入れたり、通路を“家族室”とするなどの工夫で居心地満点の家族団らんスペースをつくり上げた植松さん。LDKはもとより、街並みを見渡せる“家族室”や光と風が爽やかなバルコニーは、今や、Kさん一家の暮らしになくてはならない空間となっている。
家族の変化に応えるシンプル設計と、さりげないデザインの工夫
シンプルな間取りにさりげないセンスを織り交ぜた空間デザインも、植松さんが手がける住宅の魅力だ。例えば、1階にある自宅の内玄関に続く外玄関からのアプローチ。ここは「工場とご自宅が同じ建物だからこそ、仕事とプライベートのスイッチ切り替えの場になれば」と、木目が表情豊かな天然木や白い玉砂利で彩り、和風旅館のような空間に。LDKの隣には、落語好きなKさんの希望で間接照明が柔らかな雰囲気を醸す和室をつくるなど、心落ち着く“和”の情緒をところどころに取り入れている。
一方、“家族室”やバルコニーとの一体感が高い2階~3階への階段はステップの間を空けたオープンなタイプで、階段に沿って白いアイアンをパーティションのように設置。手すりもホワイトで統一し、デザインの中になじませた。奇をてらった印象はまったくないが無駄のない洗練されたセンスが感じられ、階段そのものがひとつのアートのようですらある。もちろん、見通しがよく採光を遮らないことや、階段まわりがすっきりと広く見えるのもメリットだ。
これらのデザインアイデアはすべて植松さんの提案だが、「Kさんご一家は快く賛成してくださいました。キッチンは奥さまのご希望で赤を、個室の壁はそれぞれご自身の好きなクロスを選んでいただいています。家づくりを楽しんでくださるご家族で、僕にとってもとても楽しいお仕事でした」と植松さん。「都会の住宅密集地ではありますが、光や風を存分に感じていただける住まいになったと思います。シンプルな間取りですからそのときそのときでベストな使い方をしていただき、Kさんご一家の新しい“家族の物語”が生まれていったら嬉しいですね」と、笑顔で語ってくれた。
【植松 利郎さん コメント】
作った人
植松 利郎
南と東に住宅があるため南東で最も光の入る場所に階段やバルコニーを配し、邸内全体に光や風を採り込むスペースとして活用しました。2階のLDKは光を通す扉とし、階段まわりの明るさをLDKにも効率よく届けています。3階は固定観念にとらわれず、階段まわりそのものをご家族で趣味を楽しんでいただける空間に。とはいえ、間取りはとてもシンプル。ライフスタイルが変わっても快適に暮らしていただけると思います。
基本データ
| 所在地 | 東京都北区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 78.77㎡ |
| 延床面積 | 181.09㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 施主 | K邸 |
設計者情報
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