日本人に古くから親しみ、楽しまれてきた 「縁側」のある家特集_VOL.2

技術の進歩や文化の発展と共に、家のつくりやデザインも多様化してきた今もなお、 愛され続けている「縁側」。 季節の情緒を楽しみ、社交の場としての役割を果たすことはもちろん、考えに耽る、趣味を嗜む、 のんびりする場とその使い方は十人十色。 ここでは、古くから形を変えずに、いくつもの機能を生み出してきた「縁側のある家」をご紹介いたします。 ぜひみなさまの住まいづくりの参考にしてください。
通り土間で居場所を増やし、家をひとつに。 風が気持ちよく抜ける、深い軒がある家

室内を見てみよう。まず、しっかりした設えの和室を計画した。地窓や床の間を備えた本格的な和室だが、押し入れの襖紙の色合いがキリリとしていて現代の生活にマッチしている。すだれなどにも使われる山葭(やまよし)を貼った天井と、Kさまが選ばれたレトロなダウンライトの組み合わせも素敵。また、和室のデコレーションを楽しみたいとの要望から、押し入れにディスプレイに適したスペースを設けた。 さらに、LDKから続く土間、縁側、庭という流れによって空間を穏やかにまとめた。土間から1段上がって縁側に出る窓があるおかげで、庭が窓枠によってフレーミングされ1枚の絵画のように見える。縁側の部分にはあえて雨どいを設けず、雨が自然に落ちる様子も眺めたいという要望に応えた。
築15年の鉄骨造の家を大胆リフォーム。 森のような庭を楽しむための贅沢な住まい

1階の和室からも庭が楽しめる。「苦楽園の家」は道路からかなり上がった敷地の上にあり、さらに庭もはさんでいるため道路側は大開口が実現できた。以前の家でも、息子さまにとってお気に入りの場所だったという和室の縁側。「リフォーム後も残してほしい」という要望に応えながら、さらに居心地のいいスペースに変化させた。 まず窓や障子を引き込み戸とし、余計なものなく庭が見渡せる視界を確保。さらに、室内の板の間と縁側の床を同じ素材で揃えてフラットに繋げ、また室内の収納と同じ雰囲気の設えを縁側にも取り入れた。室内外の境界線が曖昧になったおかげで庭まで意識が繋がり、豊かな自然を享受できる。風が抜け、和室らしい静謐さと穏やかさが同居するこの空間は、息子さまにとってさらに大切な場所になっているに違いない。
家族や親せき、ご近所さんとの「縁」を育む 老境を迎える夫婦のための、縁側のある家

建物は新築することにした一方、暮らしに関してはこれまで慣れ親しんできたライフスタイルはそのままに、利便性や快適性を高め、自然体の暮らしを続けられるような家づくりを目指した。 たとえば、旧家では縁側があり、畑仕事をするお父様が作業の合間に腰掛けたり、作物を置いたり、近所に住む友人たちがこの縁側に集まるような場となっていたという。 「縁側が育んできた人と人とのつながりなどは、新しい家でもなくさずに残したいと思いました」と岡さん。
家族が1つになる、1人にもなれる家 「ズレ」によってできる家族の「新たな間合い」

外観は大きな切妻屋根に小手しごきの塗装。周辺に立ち並ぶ家々に違和感なく馴染むデザイン。地場産の桧や杉で支えられた深い軒下には、セカンドリビングとして活用できる、ウッドデッキを設置。「内」と「外」、「家族」と「地域」が交わる「縁側」のような役割を果たしている。 玄関へのアプローチは、奥様の要望にもあった車2台分が置ける、家と一体となった屋根付きガレージ。 玄関を入りリビングへ向かうと、そこにはいくつもの「ズレ」が見えてくる。まず1つめは、天井にぽっかり空いた三角の吹き抜け。2階から降り注ぐ光が、壁に作り出す陰影が面白い。
存分に「和」を楽しめるデザイン。 高級旅館のような上質な空間を実現

ダイニングキッチンと、隣接する和室は庭に向かって大きく開口。縁側もあり、庭の景色がゆったりと楽しめる。木々で視線を避けているとはいえ、それなりに道路からの距離が遠いこともあり障子も設けた。その障子は、普通の開閉に加えて1枚の下半分を上に重ねることもできる雪見障子を採用。視線だけでなく日射も調節でき、庭をより身近に楽しむことを可能とした。 また、ダイニングキッチンから和室までが一続きとなった空間の心地よさは、見事としか言いようがない。南側に位置するこの空間は2階が乗っていないため、天井を屋根の勾配そのままにデザインし、高さを確保。また、ダイニングと和室を仕切る襖の上部を空け、視線を通すことで、奥行き感を出し広々とした印象を高めた。
街並みに寄り添い、よい距離感を保つ。 暮らしも人間関係も良好にする家づくり

道路に面した南側には玄関がある。ガラスの引き戸でつくられた玄関はオープンな雰囲気があり、親しみやすさを与えている。それでいて、玄関とLDKを繋ぐ入り口は90度折れた位置にあり、外からは生活空間が見えないようになっている。 道路に面した南側と東側は閉じた印象にした一方で、LDKには西向きの大きな窓を設けた。庭と繋がるこの窓は幅が3mもあるが、庭は水路に面しており隣家からの視線は届かない。また植栽もあるので、窓を開け放っていても人の目を気にせず過ごせる。玄関側の道路から庭に直接アクセスすることができ、地域の人や友人たちを招きやすいように工夫した。縁側のようにちょっと腰掛けて話をするなど、気軽な交流に役立っている。
緑豊かな風景を取り込む開口と、 環境に左右されない佇まいを実現した大屋根

前面道路から家までは距離があり覗かれる心配がないことから、家は外部から見てもオープンな雰囲気だ。玄関の隣にある窓からLDKまで見通せるほか、玄関の上、2階の開口も行き止まりなく室内へと視線が伸びていく。玄関の脇から縁側がはじまり、LDKの大きな開口部へと誘われる。近所の人たちが声掛けしたり、縁側を使った人の出入りもあるという。オープンな雰囲気は環境の良さを取り込むのと同時に、Wさまご一家の仲の良さが家の外へにじみ出しているようにも感じられる。 「周辺環境と共存できる家に」という思いを、家のフォルムそのものから表現している部分が、深い軒の平らな大屋根だ。水平に延びた大きな屋根が、周辺の環境へ開かれるイメージだけでなく、そこにあるいろいろなものを懐深く吸収するイメージも与えている。「竹やぶは隣地のものですから、いつか風景が変わる可能性もあります。そのとき、どのように変容しても成り立つようにしたかったのです」と橋本さん。大きな屋根のどっしりした佇まいからも、その意図を十分にくみ取ることができる。
すぐ隣の母屋と庭を共有。視界いっぱいに 緑を取り込む大開口を実現した「斜めの軸」

リビングの窓をフルオープンさせることにこだわったのは、そこを縁側のようにできたらと考えたからだという。縁を深めに取り、座りやすい高さに計画してベンチとしても使えるようにした。窓を開け庭に向かって座れば草花が揺れる音も聞こえ、この上ないくつろぎの場になるだろう。また、母屋に暮らすご両親とのやり取りの場にもなっているとのこと。 リビングからはキッチン、ダイニングがワンルームで続く。平野さんはダイニングの一角にも、大きな掃き出し窓を計画。母屋と重なる位置だが、梁や垂木の流れに加えてダイニングテーブルの位置を計算し、真横にある母屋の外壁ではなく斜め前の庭へ視線が流れるようにした。
どの部屋からも庭の緑が愉しめる 自然と共に過ごす、事務所兼自邸

中庭を取り囲むように、リビングやダイニングキッチンにつながるL字の広場、子供部屋が並んでいる林邸。最後の1辺は夫婦の寝室。しかし、この寝室へとつながる廊下がない。いわば、離れのようなつくりとなっている。そのため、寝室へ行くには、中庭を通る必要がある。そう、一度外に出て再び室内に入るのだ。 「外の空気を吸い『さあ寝るぞ』という気持ちの切り替えを促すような設えにしたいと思ったんです」と林さん。 このプランを思いついた当初は、廊下を作ることも考えたそうだが、奥様の「一旦、外に出るくらいいいじゃない」との言葉で、このプランが実現したのだという。