
趣味を超えた工房と理想の間取り!
4年の設計期間を経た納得の家
快適な引きこもり生活を送るための家
Tさんは静岡のご実家の隣に家を建てるにあたり、自分が納得できる家を建ててくれそうな建築家を探した。4~5年ほど雑誌を見てピンときたのはアーキファーム。峯田さん、恩田さんのご夫婦で仕事をしている設計事務所だ。事例の写真は気に入ったが、同じものを建てるわけではない。初めての経験で不安もあったが、「いただいたお金以上の仕事はします」という恩田さんの言葉を信じた。
設計の主担当は峯田さん。さっそく現地へ赴いた峯田さんは、母家から続く生け垣や庭に育っているレモンやみかんの木を見て、建物のイメージを描き始めた。土地とともに大切なのが住む人のこだわり。アーキファームではこだわる部分を最初にすべて聞くことにしている。Tさんの普段の生活やこだわりを聞いて峯田さんはこう考えたという。「これは世に言う引きこもりだなと思ったんです。でも、健全な引きこもりというのもあるんじゃないかと」。部屋を移動すれば気分が変えられて、外に出かけなくても充実した時間を過ごせる家をテーマに据えた。
屋内駐車場を2台分にすると部屋が小さくなる、全部の部屋を希望の大きさにすると大きくなりすぎて1階と2階のバランスが悪くなる。あれこれ可能性を考えながら、どうしたら複数の条件を満たすかたちがつくれるかを検証する設計のプロセスは、ものづくりが好きなTさんにとって身近な考えかただった。階段の位置はこれでどうかと峯田さんから提案をもらうと、スケッチをスキャナでパソコンに読み込み、本当にこの位置で自分は納得できるか、他の位置ではなくここがいいのかを考える。「普通はそこまでじっくり付き合ってもらえないですよね。設計にかかった期間を話したら、工務店に勤める友人に驚かれました。でも、あらゆる部分でそうやってとり得る選択肢と可能性を確かめたので、なにか不便を感じることがあっても自分で選んだことだから仕方がないと思えるんです」とTさん。真摯に家づくりに取り組むTさんに、峯田さんもノート2冊に及ぶスケッチや模型で応え図面も普段の1.5倍ほどになった。
奥さまのご希望や猫の動線も考慮し、4年に及ぶ設計期間を経てT邸が完成した。1階にはTさんが集中して作業できる仕事部屋、工作機械が置かれた工房。2階には息抜きのバスタイムにピッタリの浴室とお気に入りの照明の下がる洗面、Tさんが腕をふるいやすいキッチン、南側の庭がよく見えるダイニングと冬には薪ストーブの火が楽しめるリビングが階段をぐるっと囲むように配置され、回遊性のある間取りとなっている。
「納得できる家を建てられた」と喜ぶTさん。なんでも家でできるのでやりたいことが山積みだそう。充実した引きこもり生活を送っているようだ。
一日中でもいたくなる本格的な工房
きちんと整頓された工房には、庭に面した大きな窓からさんさんと日がふりそそぎ、気持ちよく作業ができそうだ。
【峯田 建さんコメント】
建物を建てるためには必ず地面を掘って基礎を打つわけですが、普通であれば埋め戻してしまう、その床下空間を利用して工房スペースにしました。同じ1階にある仕事部屋の方はパソコンで作業するだけなので窓もなくていいということでしたので、仕事部屋よりも広い工房になりました。
スタイルにとらわれず居心地にこだわったリビング
そんな建築家探しの経緯を明かされ、「確かに様式では考えないですね」と峯田さんは話す。「お施主さんの好みや生活、土地に合わせて考えるので、自分でも初めはどんなものが出来上がるのか分かりません」。Tさんの好みを知るため、リビングに置くために買ったという椅子もショールームまで見に行った。革張りの重厚感のあるアームチェアだったが、Tさんはこの椅子に合わせた装飾的なリビングではなく、床も足場板のようなもので充分だという。「シンプルな空間とのコントラストに美的センスを感じる方なんだなと思いました」と峯田さん。
Tさんの好みと建物の状況を考え合わせていき、どこにもない心地よいリビングができあがった。
【峯田 建さんコメント】
薪ストーブが置かれているスペース半屋外のイメージの空間です。ちょうど玄関から入って階段をあがってくると生け垣が背後に見渡せ、ハイサイドライトから自然光が差し込みます。壁には家の外壁に使われている黒い焼き杉を使い、床には家の外周りに敷いてあるのと同じ大谷石を使って、家の中に居ながらにして屋外の雰囲気が楽しめるような場所にしました。
快適な引きこもりに欠かせない理想のお風呂
浴槽から照明から、すべてに選んだ理由がある、こだわりのお風呂。ときにはテレビを持ちこんで長居することもあるのだとか。
基本データ
| 所在地 | 静岡県駿東郡 |
|---|---|
| 敷地面積 | 424.57㎡ |
| 延床面積 | 164.37㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

これが敷地13坪? 居心地抜群の2世帯&バリアフリー住宅
13坪の敷地にバリアフリーの2世帯住宅をつくるという難題を、見事にやり遂げた菅家建築計画工房。完成した住まいは、下町情緒漂う街にふさわしいデザインや存在感も魅力。狭小地でも豊かな空間づくりができることを実感させてくれる家だ。

家族がふれ合えるくつろぎ空間が豊富! オトナ家族の家づくり
Kさん一家は、50代のご夫婦と20代のお子さまの4人家族。子育て期を過ぎたご家族の家づくりに臨むことになった建築家の植松利郎さんは、一家そろって、あるいは一人ひとりで快適に趣味や暮らしを楽しめるスペースづくりを提案。将来も見据えたアイデア満載のK邸の魅力とは?

限られたスペースを有効活用!築40年、37平米のマンションを素敵にリノベーション
都心にほど近い街で暮らす、kurachiffon 瀧内未来一級建築士事務所代表の瀧内未来さん。築40年ほどのマンションをリノベーションしたという物件は、自宅兼仕事場として、日々の生活を送りつつも、使い勝手や生活導線を考えながら設計をしていったそうです。以前は、日当たりや風通しがよいとはいえない部屋に住んでいたという瀧内さん。今回は、切望していた日当たり、そして風通しのよい新たな住居を造り上げていった過程や、リノベーションの魅力についてお話しを伺いました。

方形よさらば 新たな住宅のあり方を示した平行四辺形とアーチの家
「狭くても静かで安心して寛げる家」という施主からのリクエストはよくある話。しかし「庭があって開放的」「駐車スペースはマスト」という条件が加わると、そのハードルが一気に高くなる。間口10m奥行10m、2階までしか建てられない土地で、難条件をクリアし、家族の理想の家を実現したのは、「アソトシヒロデザインオフィス」代表阿蘓俊博さんが考えた、建物を平行四辺形にするという一見斬新とも思われるアプローチだった。

旗竿地を強みに。RC造で叶えた住みやすさ 住居と仕事場を併設する家
自宅を新築するため、購入したのは住宅街の中の旗竿地。かねてからRC造で建てることを決めていたお施主さまは、RC造の経験豊富でデザインにも妥協なく家づくりをする建築家の鈴木さんに設計を依頼した。自宅に仕事場を備えた、新しいライフスタイルの住宅は、旗竿地を強みに変え、暮らしやすく整えられている。

緑を眺めてゆったり、食卓で賑やか。戸建ならさまざまな空間を!
静かな時間も賑やかな時間もバランスよく織り交ぜて

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを
家をつくるならぜひ欲しい、「広々としたLDK」。だがワンルームの大空間をどんなLDKにするかは、設計者のセンスやスキルで大きく変わる。では、建築家の片山正樹さんの場合はどうだったのだろう? 「大田区の家」から片山さんの設計の魅力を探る。

親しい人と暖炉を囲む幸せなひととき。 地元の自然と工芸が、穏やかな時間を刻む家
「友人とお酒を楽しむ場所が欲しい」。古希を控えた1人暮らしの施主さまのために建築家の武川正秀さんがつくったのは、暖炉のあるウッドデッキとつながる居心地のよいリビング。地元の自然素材や工芸品を使った心落ち着くしつらえで、友人との憩いの時間にふさわしい穏やかな空間だ。

のびやかな空間で豊かに暮らす。 季節を感じ、夫婦がくつろげる住まい
「部屋数はあるけれど住みにくい」と、3階建ての建売住宅を建て替えたご夫妻の新たな家は、3つのテラスとロフトのある2階建て。空間ののびやかさ、季節を感じる心地よさ、使い勝手のよさまでパーフェクトな住み心地をかなえた新居には、設計を担当した齋藤文子さんの豊かな感性が活きている。
