
2つの階段がポイント!
一世帯にも二世帯にもなる家はこうつくる
階段を2か所に配置。1階と2階を手前と奥でつなぐ理由
お二人が希望したのは「将来二世帯住宅となる可能性もあるため、そうなった場合自分たちは1階のみで生活できるようにしておくこと」。
あくまでも夫婦2人暮らしが前提の家づくりだが、先のことはどうなるかわからない。状況によっては二世帯としても使える住まいにしておきたい、とのことだった。
こうした要望を受けてアパートメントの滝口聡司さんが設計した現在のN邸は、2階が生活空間の中心となるLDK。エントランスのある1階には、ご主人の仕事場や客間などの居室、バスルームなどの水まわりがある。
そして、間取りの大きな特徴となるのが階段の“位置”と“数”である。滝口さんはエントランス近くの階段のほか、邸内の一番奥にも階段を配置して、1階と2階の間に2つの動線を確保した。「家の入口から見て手前と奥の2か所に階段があることにより、エントランスから2階へ、2階の奥から1階へ、そして手前のエントランスへ戻って来るという立体的な回遊性を実現しました」
都心の住宅地であり、また、隣地は不特定多数の人が出入りする児童公園。外部の視線を避けやすく、光も採りやすい2階を生活空間の中心としたのはこうした環境をふまえてのことだが、ともすれば「移動がおっくう」ということにもなりかねない。しかし、手前の階段は1階エントランスとLDKを、奥の階段は2階と1階の水まわりや仕事場をつなぐ廊下のような役割を果たしているから、家のどこからどこへでも移動しやすい、というわけだ。
それだけではなく、階段のおかげで動線がすっきりとしオープンな場とプライベートな場をきっちりわけられるようになった。たとえば、エントランス部分の階段の向かいには土間を挟んで現在客間として使用されている和室があり、生活空間を一切通らずにダイレクトでお客様をお通しできる。また、キッチンはエントランスからの階段を上がってすぐ。買った食材を運び込む際などに、アクセスしやすいのが嬉しい。
一方、奥の階段はプライベートな空間の動線として活躍する。寝室は2階の奥に位置するリビングから数段上がったロフトにあり、奥の階段を使えばLDKを横切らずにバスルームへ行けて便利。リビングから1階のご主人の仕事場への移動も同様だ。エントランスに一度出る必要がないため、奥様が客間に友人を迎えているときでも顔を合わせることなく仕事場へ。逆に、仕事中のふいな来客時には客間を抜けてエントランスへ出られる。
では二世帯住宅となった時には、どのように変化するのだろう。
まずは玄関。二世帯の場合は1階の親世帯と2階の子世帯に分かれる想定で、親世帯は共用の土間から直接1階の和室へ。子世帯は同じく共用の土間から階段で2階へ上がる。
1階の奥にあるバスルームは両世帯で共用することになるが、「奥の階段を使えば、1階世帯からも2階世帯からもお互いの生活空間を通らずに行けます」と滝口さん。トイレは1階2階両方に設置、1階にデッキテラス、2階にバルコニーがあり洗濯物も別々に干せるようにするなど、各世帯のプライバシーを守る細かい配慮もなされている。
また、現在はご主人が仕事場として使用している居室にはあらかじめ配管を整えておき、キッチンとしてリフォームできるようにした。この居室にはエントランスとは別に外からの出入り口をつけており、将来キッチンとした場合のアクセスもとても良いものになっている。
四季を感じる風景と暮らす。隣が公園であるということ
「道路に面した西側が家の顔ではありますが、公園がある南側の景観にも責任を持たなくてはなりません。それはとても難しいけれども、やりがいがあるポイントでした」と滝口さんは語る。
建物の外観は、1階部分は白っぽい吹き付けであるのに対し2階部分はぐるっと木材で囲ってインパクトを持たせ、外からの視線が建物の上半分に向かうようにした。
公園から家を見上げると、大きさや間隔、角度までもがランダムに設置された窓が見える。
窓枠を建物の内側に持ってくることで、木を切り取って作った穴のように見える窓は公園の木々と調和し、まるで遊具の一部のようにも感じられる。使用されている木材のレッドシダーはこれから段々風化してグレーになっていくそうだ。この変化を楽しみながら月日を重ねることでいっそう環境に馴染み、公園を利用する人たちにとってもより親しみ深い存在になっていくのだろう。
窓は外側からの見え方のみを考えたわけではない。「換気ができるように開け閉めできるものとそうではないものと両方ありますが、景色がどう見えるかを考え、位置やサイズは建物の大枠が形になってから決めました」とのこと。イチョウ、サクラ、モミジに大きな2本のケヤキの木。様々な表情を持った公園の木々を室内の窓ひとつひとつから眺めることができ、壁面は美術館で連作の絵画を眺めているような気持ちにもなる。
ロフト部分の寝室は人の目が届かない高さがあるので、大きな窓を取り公園の風景を楽しめるようにした。この窓からの光はロフトまで吹き抜けになっている階下のリビングにも降り注ぎ、とても明るい。
「最初からこのようにと決まっていたわけではなく、色々なご要望を伺っていくうちに今回のプランが出来上がっていきました」と滝口さん。ご夫妻はこの建物をとてもよく気に入り「お友達を呼んで自慢なさったりもしてくださっているそうです」とのこと。
今、居心地がよく、家族構成やライフスタイルが大きく変化しても対応できる。将来を長期的に見つめ、さまざまな可能性に応えることにフィーチャーしたN邸のような家づくりは、これからもっと増えてくるのかもしれない。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 東京都渋谷区 |
|---|---|
| 敷地面積 | 101.59㎡ |
| 延床面積 | 119.53㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | N邸 |
設計者情報
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