
建築家が考えたアイデア家具をDIY。
ローコストリノベで住み心地アップ
つくりやすさ、価格、強度も優秀。
プロのノウハウを詰め込んだ家具をDIY
そんなとき、検討課題の1つになるのが家具だ。もっと機能的に収納したい、家具を変えて住まい方も変えたい……etc.
とはいえ予算の問題もあるし、DIYでつくるとしても、製作はともかく設計図を描くのはハードルが高い。
ところが、多くの注文住宅とそれに伴う造作家具を設計してきた建築家が、機能的かつ実用的な家具のDIYをサポートしてくれるサービスがあるという。H2DO一級建築士事務所の久保和樹さんが手がけるそのサービスの名は『イタカグDIY』。いったい、どんなサービスなのか。
久保さんいわく、「イタカグDIYは家具の設計図と組み立て説明書をお届けし、その設計図をもとにDIYをしていただくサービスです。造作家具のように空間にフィットしますが壁に取り付けたりしないので、賃貸住宅でも気軽にお使いいただけます」
イタカグDIYのコースは以下4つ。
【1】スタンダード家具
イタカグDIYの定番家具。HPにある設計図を無料で使える
https://ryudoshoten.tokyo/diy/diy/
【2】セミオーダー家具
スタンダード家具を指定サイズにカスタムした設計図を作成
【3】フルオーダー家具
要望に合わせてオリジナル家具の設計図を作成
【4】部屋ごとリノベーション
イタカグDIYを利用してリノベーションする設計図を作成
設計のプロが家具の設計図を描いてくれるとは、なんとも贅沢。しかも、スタンダード家具の設計図は無料。HPから自由にダウンロードできるという大盤振る舞いだ。
イタカグDIYの魅力の1つは、そのつくりやすさにある。ホームセンターに設計図を持ち込んで指定の材料を購入・カットサービスを利用すれば測って切る手間が省け、部材が容易に手に入る。あとは自分でビスを打ち込んで組み立てるだけ。インパクトドライバー1本あれば手軽につくることができる。
価格面の魅力も大きい。設計料はセミオーダーが1万円~、フルオーダーが10万円~。指定された材料でつくると材料費も安価で済み、材料費込み総額約30万円のフルオーダーで、ロフトや家具付きの子ども部屋をつくったクライアントもいるという。
そして設計のプロならではの頼もしさを実感するのが、強度への配慮だ。
住宅設計が本業の久保さんは、当然、木材についての知識が豊富。その知見を活かして選んだのは構造用合板。ビスを打ち込みやすくローコスト、何より、家の骨格づくりに使われるものだから強度が高い。
久保さんはこの構造用合板の性能をふまえ、安定感があり耐荷重も大きい家具を設計してくれるのだ。さらに、設計図通りにつくれば材料の無駄はほぼ出ない。趣味のDIYではなかなかできることではないだろう。
イタカグDIYで快適・便利に。
総額30万円のリノベーション事例
要望は、ご夫妻ともにリモートワークが増えたのを受け、仕事も生活もしやすい空間にリノベーションすること。併せて、収納のないワンルームの部屋にクローゼットや食器棚も欲しいと考えていた。賃貸なので原状回復できることも条件だが、前述の通りイタカグDIYならこの点は問題ない。
まず、クローゼットは設計料無料のスタンダード家具で製作。空いてしまったスキマにはバーを設置し、吊るすタイプの小物収納で空間をフル活用している。食器棚はスタンダード家具をカスタムするセミオーダー。空間にぴったり収まるように調整した設計図を久保さんが用意した。
リモートワーク対策には、「気分やTPOに合わせていろいろなところで仕事ができるように」という久保さんの配慮で、ボックスルームと『ノビルーム』を導入。
スタンダード家具のボックスルームは半畳ほどの広さで、場所をとらずに個室感覚で使えるすぐれもの。扉を閉めればWEB会議も気兼ねなく行える。
フルオーダーのノビルームは、久保さんが住宅設計時にも取り入れることがある可動式の個室だ。イタカグDIYでは収納ボックスを並べて小上がりをつくり、引き出し式の間仕切りを設置する。間仕切りを出して囲えば小上がりがコンパクトな個室になり、仕事にも最適な空間に。夜はここに布団を敷いて寝てもいい。逆に、間仕切りを引き込めば小上がりやベンチとして利用でき、来客時に大活躍してくれる。
注目すべきは、この住まいに取り入れたイタカグDIYの設計料・材料費の総額が約30万円ということ。30万円で実用性が担保された機能的な収納を得て、間取りを変えられるフレキシブルな空間にDIYリノベーションできたことに驚く。
ご夫妻も、「広いワンルームの開放感を損ねずに、仕事もプライベートも充実する住まいになりました。クローゼットも食器棚も安定感があって使いやすい家具です。ノビルームは仕事部屋のほか寝室にもなるので、ベッドが不要になって空間はすっきり。とても暮らしやすいですね」と大満足。
おそらく久保さんは、世の中の全ての住空間に愛がある建築家なのだろう。最後にこんなことも話してくれた。
「僕は普段、注文住宅やその住宅に合わせた1点物のオリジナル家具をつくっています。でも、『注文住宅×オーダー家具』の対極ともいえる『賃貸住宅×DIY』でも豊かに快適に暮らせたら……との思いもありました。その思いを形にしたのが、イタカグDIYなのです」
住み心地のよい洒落た住まいをつくる久保さんのセンスとスキルを享受できるのは、自邸の設計を依頼した施主だけではないのだ。
https://ryudoshoten.tokyo/diy/diy/
間取り図
基本データ
| 作品名 | イタカグDIY |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
| 延床面積 | 45㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | K邸 |
撮影:新 良太
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

祖父が設計した家が新たな形で生まれ変わる メリット多数の「増改築」という選択肢
高校時代からの友人だった施主から、祖父が設計したという旧家の建て替えの相談を受け た建築家の鈴木隆介さん。新築のプランをいくつも作ったにも関わらず、あえて手間もか かり難易度も上がる、既存の建物を活かした「増改築」プランも提案。施主のことを第一 に考えた増改築とは?

4年かけて土地探しするほど施主が惚れた デザイン性と使い勝手と両立させた家
女性目線を大切にしながら「暮らしやすさ」と「デザイン性」を兼ね備えた住宅を生み出している株式会社人と古民家 ヒトコミデザインの牧野嶋さん。施主のTさんご夫妻は、牧野嶋さんに自邸を設計してほしいと、約4年もの間土地を探し続けていたのだという。 Tさん夫妻の理想の住まいを実現した、牧野嶋さんの手腕に迫る。

「施主の想い」に寄り添ってプランニング 高低差のある段丘地形を活かした共同住宅
「周辺環境に調和し、近隣に配慮した住宅」という言葉は、住宅建築においてよく耳にするキーワードのひとつ。「栗の木テラス」は経済合理性が求められがちな共同住宅ながら、まさにそのキーワードを体現した好例だろう。設計を手掛けた建築家の苅部寛子さんのインタビューを通じ、誕生へのプロセスを紐解いてみたい。

とことん拘ったローコスト住宅!建築家が自分の為に建てた家とは
建築家が自分の為に建てたローコスト住宅。拘った部分や反省点、そして建築に掛った金額など、普段はあまり聞けない部分も丁寧に説明をして下さる建築家石田摩美子氏。敷地の魅力を最大限に生かすことを心がける石田氏の住まいは、土地探しに1年、条件の厳しい立地に工夫を重ねた拘りの家だ。

壁を取り払いスケルトンに 中古住宅のリノベの一つの解
東京の都心近くで事務所兼自宅を持ちたいと考えていた、Lods一級建築士事務所の幸地俊一さん。予算に合った物件がなかなか見つからない中、出会ったのが築32年の鉄骨造4階建ての住宅でした。

築43年のマンションを一新。 やわらかな発想で実現した豊かな環境
建築家の小野さんが70年代の建築にこだわって物件を探し、見つけたのは1977年築のマンション。建物の丈夫さは申し分なかったが、自宅として快適に暮らすためには多くの問題を解決しなくてはならなかった。大規模リノベーションによって生まれ変わった空間を紹介しながら、「豊かな環境」について考える。

建物のポテンシャルと魅力を最大に活かした 歴史ある町家の大規模なリノベーション
石川県にある町家のリノベーションが完了した。この建物は中庭を囲んで町屋部分、収納蔵、そして撚糸工場を改修した住居+事務所の3つで構成されている。延床面積が500㎡にも及ぶ、大規模な建物だ。長い歴史を持つ町家部分を残しながら、快適な生活の実現を目指した、この作品をご紹介しよう。

家の価値は広さや部屋数ではない 中庭が生み出した、自然とつながる家
どこか懐かしさを感じさせるけどオシャレ。新築なのにずっと前からそこにあったように感じる。住まう人・訪れる人をほっこりさせ、自然体でいられる家を作ったのは、橋野文設計事務所の橋野さんでした。

室内を区切るものは壁ではなく、光と影。 美しい景色を、より魅力的に切り取る家
目の前に広がる田園風景と、裏山の間に位置するE邸。ハナトアーキテクツの保科陽介さんと堤理紗さんは、田園と裏山の空気感を繋ぐような家にしたいと考えた。異なる素材を使い分けて両者の特徴を入れ込んだ室内空間には、夏はひんやり冬暖かくと、快適に暮らせる工夫も隠されている。









