
100年の旧宅に出現!
驚きのエコ手法が生む、完ぺきな統一感
同じ板からすべて作る!デザインとコストに絶大な効果
「もともとは三世代7人ぐらいで住んでいた家なんですけど、家族も減っていました。東京だと、なかなか平屋なんて建てられないですけど、まとめて解体したら土地もかなり広い。そこで平屋が贅沢でいいのではないかと話しました」と久保さん。お兄さんの人となりは分かっていても、夫婦の生活スタイルまでは分からない。まずは、ヒアリングして要望を整理した。
「全体的に明るくて、風通しがいいということと、欲しい部屋以外は、あまり細かい希望はありませんでしたね。後は、普通の家は嫌だと」。欲しい部屋は、お兄さんがオーディオルーム。奥さまは、寝転がれるような畳の部屋。限られた予算も重要な条件だった。解体工事と平行して、模型を使いながら打ち合わせを進めていった。
久保さんが日ごろ提案しているのは、外観と内観、家具をトータルでデザインした空間。「統合空間と言っています。家具が個々に主張せず、空間になじんでいるのがいいと思っています。リノベーションでも、できる限り空間にあわせて家具をつくります。トータルで設計した方が費用対効果も高いんです」と久保さん。この家では、建物の構造から扉などの建具、ソファやベッドといった家具に至るまで、あらゆるところに同じロシアンバーチという木材を使った。「そうすることで、素材も統一されるだけでなく、材料のロス率も下がります」。一般的には、一枚の板からひとつの部材をとったら後は廃棄してしまうが、あらゆる家具や建材を同じ板から余りをなくすようにとることで、ロスになる部分は1/10以下だった、これは建築の世界では驚異的な数字。家全体の統一感が出るとともに、当然材料費も下がり、コストパフォーマンスも高い。
久保さんが家づくりで大切にしていることがもうひとつある。それは施主が家づくりに関わる場面をつくること。たとえば、ワークショップ形式で間取りを考えたり、家具を自分たちでつくったり。今回はお兄さん夫婦と話して、塗装に挑戦することにした。「木をいかすために植物オイルを使うんですが、わりと誰でも塗れるんですね。自然系のオイルなので、安全ですし。自分でできるところは自分で塗装した方が愛着もわきます。メンテナンスも自分でできるようになります。天井はすごく大変ですけど、それ以外の壁や床はわりと簡単ですよ」。
打ち合わせで模型やパースは見ていたものの、どんなかたちになるのかピンときていなかったという奥さま。塗装のために建築途中の家にはいって、独創的な間取りを目にすると、急に心配になったりもしたそう。
「斜めの壁は住みにくいんじゃないかとか、こんなに部屋のなかが外から見えるのかとか、言ってましたね。」と久保さん。しかし、約2年半後に家が完成すると、心配していた奥さまにも「斜めの壁も住んでみたら、気にならない。晴れた日は明るくて、いい。」と好評だった。オープンにしたお風呂場も換気が抜群にいいと、住みはじめて気付いた良さもあったようだ。
竣工後に久保さんが訪れると、ブラインドがかけてあったり、ベッドの位置が移動してあったり、いろいろと完成当初とは変化があったそう。自分たちの暮らしに合わせて、どんどん手を加え、お兄さんご夫婦らしい家になっていっているようだ。
同じ素材で統一した収納家具に、構造を支える役割を!
初めは、東京の梨園染めとコラボしてつくったスツールでした。普段、使わない来客用の椅子をコンパクトにしまえないかと考えていて、板のようにして壁に飾ったらどうかとつくってみたのがきっかけです。そこから板状の家具「イタカグ」をつくるようになった。
それが発展して、内装も全部、板でやってしまおうと、小上がりや壁面も板で「勾配天井の家」という住宅をつくった。
「今回の兄の家では、それを建築にまで発展させました。収納家具が建物の土台と梁に緊結(きんけつ)されていて、構造をサポートする役割も果たしているんです。ロシアンバーチという板は強度が高く、使ったのにはそんな理由もあります。土台と梁に止めている金具は、ひとつで20トン持つというものなので、家の耐震強度はすごく強い。構造設計を担当してくれた構造家に試算してもらったら、通常の約5倍の強度だということです」。
「建築から内装、家具まで、同じ素材で統一すると良いのは、スイッチや設備機器のような異質なものがあっても、空間の雰囲気が損なわれないことですね。木のフレームのなかにおさまっているようになります。家具や生活用品を入れた後にも見に行きましたが、空間の印象は竣工したときと、ほとんど変わりませんでした」。
【久保 和樹】
今回の”タテカグ”を使った家は、建築と内装と家具が一体化しているという、かなり特殊なものです。そのため、構造家にも初めから入ってもらいましたし、工務店も早くから何件かあたって、しっかりお任せできるところを探しました。今回、お願いした工務店は若い現場監督さんが張り切ってくれて。無事に完成しました。
基本データ
| 所在地 | 広島県広島市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 212.18㎡ |
| 延床面積 | 87.34㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | K邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
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