
想いを最大限に具現化する
「十人十色」の家づくり

遠藤 彰
えんどう あきら
インカラーアーキテクツ株式会社
群⾺県 高崎市
建築士の知り合いがおり、小さい頃から建築がとても身近でした。ただ「家」という形を作るだけではなく、家族やご近所さん、街並み、窓、素材など、一つひとつが「ここちよさ」につながっていることを知り、私もいつかはこんな家に…という思いでこれまでやってまいりました。 ご依頼をいただいたら、みなさまの暮らし、叶えたい生活や人生をもお伺いし、それぞれを存分に詰め込んで設計しています。利便性のみを追求するのではなく、群馬県をはじめ地域に根差した、季節を感じられる「ここちよさ」を大切にした家づくりを心がけています。
施主の気持ちを汲み取り
プラスアルファまで提案
Nさま夫妻は家を建てることを考えた際、いくつものハウスメーカーや設計事務所を訪ねたそうだ。さまざまなプランを出してもらったが、コストや間取りなどにどこか引っ掛かるところがあり、なかなか決定には至らなかった。そんな折、たまたまインターネットでインカラーアーキテクツのことを知ったお二人。事務所へ足を運び、建築家の遠藤さんといろいろと話をするなかで、心の中では「ここに決めていた」という。
「とても話しやすい雰囲気で、第一印象から良かったです。プランについても私たちの要望を柔軟に受け入れてくれて、なおかつ、自分たちでは考えもしなかったアイデアを提案してくれました。もう建てる前からワクワクしっぱなしでした」とは、Nさま夫妻の言葉。加えて、デザイン性だけではなく、耐震や断熱、シロアリ対策と行った性能・ハード面についてもしっかり説明してくれて、「プロフェッショナル」だと感じたという。
Nさま夫妻の要望は大きくふたつあった。ゲームが好きなご主人が部屋にこもってしまわず、なおかつ独立したゲームスペースを確保すること。そして、共働きなので家事動線にも配慮してほしいということだ。
「ご要望を叶えることはもちろんなのですが、最初のヒアリングのときにお二人から『何かプラスアルファみたいなものが欲しい』という印象を受けました。自分らしい住まい方とは何かを模索している様子でした」と遠藤さん。なかなか家づくりの第一歩を踏み出せなかった理由も、その「何か」が見えなかったからだろう。「建築家に設計を依頼するということは、いわゆる建売はイヤなわけですよね。その辺りの気持ちは汲み取ってあげなきゃいけない。それには、お客さまのご要望からさらに踏み込んで、お客さまが求めている本質は何かを嗅ぎ取ることが大事だと思っています」と話す。
具体的に見ていこう。まずはゲームスペース。
「曖昧な空間にしたかった」という遠藤さんの言葉どおり、ゲームスペースである書斎は1階でもなく2階でもない、吹き抜けに面した階段途中の踊り場に配置。高さを変えたことで、こもらない程度の独立性が保たれると同時に、ゲーム機などで少々散らかっていてもリビングからは見えることはない。また、あえて壁や建具で完全に仕切らないことで、リビングや2階にいても声と目線が届く。その絶妙な距離感にはご主人はもちろん、奥さまも満足された様子だ。
家事動線はどうだろう。
玄関を入るとまず玄関ホール、その先には靴のまま入れる土間がある。例えば、土の着いた野菜などをそのまま置いておくという使い方もできるだろう。その奥にはパントリーがあり、米や缶詰といった常温保存できるものをそこにストック。パントリーとキッチンはつながっているので、買い物帰りなどにもリビングを介することなくキッチンに直接アクセスできるのも便利だ。
キッチンの北側には風呂や洗面所、トイレといった水回りとウォークインクローゼットを一直線に配置。ウォークインクローゼットのすぐ横には洗濯物の室内干しに使えるユーティリティスペースがあり、洗濯から洗濯物を干して、取り込んで、収納までの一連の動きを流れるようにできるようになっている。
さらに特筆すべきは、図面を見ていただくと分かると思うが、1階には廊下らしい廊下がないことだ。廊下をつくるのにもコストが掛かり、その分だけ生活空間も圧迫される。それを避けるためにも「家事動線を確保しつつも、なるべく無駄な空間はつくらないようにしました。廊下をつくらずとも部屋をうまく通りながら無理なく動けるよう、極限までコンパクトなプランニングにしました」と、遠藤さんは話す。
Nさま夫妻の要望を十二分に叶えつつ、さらに“痒いところに手が届く”プラスアルファをも実現した家、それが「中庭のある家」であることは間違いないようだ。
最初のヒアリングから竣工まで
理想の家づくりをトータルでサポート
「私たちは家の設計はもちろんですが、施工も手掛けています。そのため、プランニングから素材選び、設備選び、工法までトータルで家づくりを提案できます」と遠藤さん。最初のヒアリングから竣工まで自社内ですべて行うことができるため、無駄なコストを抑え、また品質管理にも目が届くので、予算内でより理想に近い家を提案できるのが強みだという。Nさま夫妻の「中庭のある家」も、インカラーアーキテクツが設計から竣工まで手掛けて完成させた家だ。
遠藤さんは独立する前に、大手工務店に長年勤めていた経歴の持ち主。そこでは設計はもちろんだが、住宅の設備や品質の研究開発にも携わっていた。いわばその道の専門家でもある。快適な住環境に必要な性能はクリアして当然。そのうえで、クライアントの想いを予算内で実現するのが自身に与えられた役割だという。
一番大切にしていることは「クライアントのみなさまの声に、真摯に耳を傾ける」こと。
「私が作ったものを『どうですか?』と押しつけるのではなく、お客さまの考えや想いを最大限に具現化する、そのお手伝いをしたいと考えています。お客さま主体で歩んでもらい、私たちはこの歩き方がかっこいいですよ、こちらの道がより良い目的地に着きますよ、みたいな感覚です。私たちと、お客さまとは二人三脚の関係だと思っています」。この関係を築くには、クライアントと幾度となくヒアリングを重ね、求めているものや人となりを深く理解することが欠かせない。
例えば、写真を持ってきて「こんなサッシが欲しい」というクライアントもいたとか。しかし、よくよく話を聞いてみると「そのサッシが欲しいのではなく、その窓の開き方がいいとか、窓のサイズがいいという話でした。そうなると、そのサッシを使わなくても要望を叶える方法はいくらでもあります。結局、何を求めているのか、どこまでこだわるのか、優先順位はどうか、なのです。ヒアリングを通して、お客さまにとって『何が一番大事なのか』という優先順位を整理してあげることを意識して話をします。そうするとお客さまが本当に求めているものが浮かび上がってきますから」と、遠藤さんは話す。
インカラー=incolore。フランス語で「無色」を意味する言葉だ。インカラーアーキテキツの建築思想の根幹にあるもの、それは、まだ何も色のついていない“無色”の敷地に、クライアントが持っているそれぞれの色をつけていくこと。「私たち自身の色をもたない”incolore”な立場で、みなさまが大切にしている『ここちよさ』に色をつけていくお手伝いをいたします」と、遠藤さんが話すように、どんな色で夢を描くのかは自由。十人十色、人の数だけ理想の家がある。
基本データ
| 作品名 | 中庭のある家 |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県伊勢崎市 |
| 敷地面積 | 270.29㎡ |
| 延床面積 | 117.64㎡ |
| 間取り | 4LDK |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | Nさま邸 |
撮影:仁尾
設計者情報
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