
《大規模事例》ココで働きたい!
抜群のデザインと快適環境に驚き
大胆に窓を設置し、風の通りを実現!
と話してくれたのはJAG国際エナジー株式会社の田中奈月さん。工場を建てるにあたってのマネジメントを始め、クライアントであるSEW オイロドライブ・ジャパン(株)と伊波さんとの橋渡しを請け負った方である。
SEW オイロドライブ・ジャパン(株)はドイツに本社を持つ、ギヤモータ・減速機の世界トップシェアメーカー。日本には静岡に第1工場があるが、大型部品をつくる京都第2工場の建築を伊波さんが任されたのだ。
クライアントたっての希望が、通気と採光だった。工場は機械が多く、熱を持ちやすい。さらに京都は、夏暑く、空気も停滞しがちだ。伊波さんも、通気は絶対必須と考えた。
エアコンを設置すれば済むのでは? との問いに伊波さんは首を振る。
「工場は広いので、かなりの台数が必要となり、コストがかかります。また同様に、工場はあらゆるものが通常の住宅よりも多く必要なので、『ちょっと良いもの』を使うだけでも、トータルで考えるとコストは跳ね上がります」
高温多湿の日本では、通気に関しては古くから意識されてきた。そこで、伊波さんは先人にならい、風の通りを良くするために東西南北、全方位に開口部を設置した。
東と南の二面は、床付近から5mほどの高さまで採光通風が可能な窓を。5か所の搬出入口が並ぶ西面は、シャッターに透過性のある素材を用いて採光も取り入れた。将来増築計画がある北面は、引違いサッシによる窓を高い位置に配した。
さらに事務所と工場の間にも中庭を設けることで、窓を設置する壁面と風の流れをつくっている。
もちろん、やみくもに窓を設置したわけではない。西側からの風が多いことを踏まえ、一番開口が大きい西側シャッター部から、三方の窓へと風が吹き抜けることを想定して設置したのだ。
驚くのはその素材である。通常の住宅で使用しているサッシを積極的に取り入れている。南から東面にかけて、5mの窓は、サッシを二段重ねにしてコストダウンを図った。とはいえ、伊波さんはコストとデザインを天秤にかけない。サッシ窓を互い違いに配置して市松模様に見せるなど、コストを抑える分は工夫とアイデアで補った。おかげで工場は、コスト以上にデザイン性の高い外見に仕上がっている。
「暑さ対策は、風の通りだけではなく日差しのコントロールも重要です。そのため、特に床面や周囲の舗装に日差しが照り付ける西側と南側には大きなひさしを設けて、アスファルトが熱を持たないようにしています」
大きなひさしは奥行き5m。かなりの奥行きになるが、日の差し込みを考えるとどうしても必要だった。
「これのおかげで、日差しの強い日でも工場内は涼しいですよ」
とは田中さんの言葉。ひさしの効果は抜群のようだ。
こうした伊波さんの細やかな計算とアイデアで、コストと環境づくりの両方をクリアできた。
各所に詰まった、こだわりのデザイン
「クライアントからは京都っぽさを盛り込んでほしいとのご希望がありました」
ドイツに本社があるSEW オイロドライブ・ジャパン(株)は、海外からのお客様も多い。日本のアイコンともいうべき京都を感じてほしいという、おもてなし精神を感じるご希望だ。
ただ、一方で伊波さんは言う。
「和のテイストを大事にしながらも、とらえる人によって違う印象が持てるような、抽象的なデザインを目指しました。どなたでも馴染みを感じられるようなものになればいいと思っています」
分かりやすいのが、ファサードとなる南側の赤い柱。施主の要望である京都の名所・伏見稲荷大社の千本鳥居をイメージさせるデザインだが、見方によっては西洋のコロネードを感じさせる。どちらを強く感じるか、はたまた、それ以外のものを感じ取るかは見る人次第ということだ。
2階の会議室には、日本の伝統・和紙を使用した遮光用のふすまが取り付けられている。また、先ほど述べた市松模様の窓も和の意匠が感じられる。
さらに、工場の東側、道を挟んだ先の住宅地への配慮も忘れない。
「もともと、住宅地より工場の建設予定が先にあったので、その旨は住宅購入時に了承いただいています。とはいえ、家は一生に一度のお買い物ですから、周囲の景観や住み心地を損なわないようにと考えました」
安全を考慮し、大型車両の出入り口は住宅地から最も遠い南西の隅に設けた。一方で、住宅地側には、機械よりも人の気配が感じられる事務所棟を配置。1階2階ともに大きな窓が設置された建物だ。そのうち、2階の窓には有孔折板を設置し、日差しと視線をコントロールしている。
「透過性の高い窓は、見られているような感じがして落ち着きません。ただ、すべてを覆うと、閉鎖的で圧迫感を与えてしまいます。そこで、見下ろされるような視線が気になる高い窓には目隠しをして視線を遮りました。一方で、視線が近く植栽帯により距離感が生まれる1階は開放感を与え、あえて人の動きがわかるようにしました」
1階のカフェのような食堂と、大きな窓に黄や赤のアクセントカラーが映える外観。住宅地からの眺めは、今どきのショッピングモールのような洒落た建物になっている。威圧感はなく、狙いは大成功のようだ。
伊波さんの信条のひとつが、「既存のものをいかに上手に使うか」。工夫やアイデアを盛り込んで、日常的な素材に新たな使い方やデザインを与える…市松模様に仕上げたサッシなどが好例だろう。
「工場は学術研究都市にあり、周りには大手を含め、ほかの工場も多くあります。でも、この工場が一番かっこ良くてデザインもステキだと、私は思っています」
胸を張り力を込めながらも、笑顔でおっしゃった田中さん。彼女の言葉と表情に、伊波さんの信条が、素晴らしい形になったのだと感じられた。
【伊波 一哉さん コメント】
工場の規模や増築の際のスペースなども考慮するため、敷地を選ぶ時点から僕も参加しました。工場内レイアウトはクライアントから来るので、それに合わせての設計となります。とはいえ、柱の配置や部品棚など細かい部分は、機械の大きさや働く人の動線を考慮しつつ考える必要があります。そうした必須条件を満たした上で、環境やデザインのご要望をコスト内でかなえられたと思っています。
基本データ
| 所在地 | 京都府相楽郡精華町 |
|---|---|
| 敷地面積 | 約16974㎡㎡ |
| 延床面積 | 約5478㎡㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 施主 | 工場 |
撮影:GEN INOUE
設計者情報
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