
わずか建坪9坪の狭小住宅とは思えない
光と風、そして広さを感じられる住まい

宮本 恵美子
みやもと えみこ
㈲光風舎一級建築士事務所
東京都 品川区
湘南の江の島近くで育ちました。広い海と大きな青空、明るい陽射し、心地よい風、のんびりした環境で育ったせいか都心で暮らしていても、青空や白い雲、陽の光、風に吹かれること、緑や花、ちょっとした自然を見つけ、日々楽しみながら暮らしています。 新築、リノベーションどんなことでもお気軽にご相談ください。
制約が多い土地に家を建てる場合には、
経験豊富な建築家への依頼をお勧めします
事務所代表の建築家である宮本恵美子さんによると、狭小住宅設計には、一般の住宅設計とは異なるノウハウが必要になるという。主にどのようなものなのかを、説明していただこう。
「そもそも、狭い土地や制約がある土地に家を建てる場合こそ、その分野に詳しく経験が豊富な建築家に依頼すべきだと私は考えています」。
「一般的な間取りでプランを考えると、どうしても諦めなければならないことや、我慢しなければならないことが出てきます。しかし経験が豊富な建築家であれば、その土地が持つ制約や周辺環境をよく調べ、諦めや我慢が少なくてより快適なプランを作ることができると思います」。
この作品のケースでも、敷地が狭いこと以外にいくつかの制約があった。敷地の隣には木造アパートがあり、その他の隣家も敷地境界線のギリギリに建っている。そのため、窓の位置によっては視線が気になるはずだ。また、敷地前面の私道はとても狭く、建築資材の搬入にも苦労することが予測された。
こうした土地にどのようなノウハウを注ぎ込み、冒頭でご紹介した “驚くほど明るく、風が通り抜け、自然を感じられ、数値以上の広さを感じられる” 家を創りだしたのだろう。
次章で、その詳細をお伝えしたい。
坪庭を中心にコの字型とし、螺旋階段と
多くの窓から光と風を取り込むプラン
・建物全体が、坪庭を中心としたコの字型となっている
・建物の中心に、螺旋階段が設けられている
・数多くの窓やハイサイドライト、トップライトが設けられている
ことだろう。
建物をコの字型とした理由は、視線を遮りながら大きな窓を設けることで、太陽の光と自然の風を取り込めるからだ。また、屋内の広さを感じられる効果もある。
螺旋階段は階段室を設けず、各階ともオープンに繋がっている。これにより、光と風の通り道を作るだけでなく、広さを感じることもできる。
数多くの窓やハイサイドライト、トップライトも、明るさを確保するためだ。その効果は絶大で、昼間であれば照明が不要なほどだ。
ぜひ写真をご覧いただきたい。隣家が迫る狭小住宅とは思えないほど明るく、開放感があることがおわかりいただけるだろう。
その他にも数多くのノウハウが注ぎ込まれている。例として全館空調の導入をご紹介しよう。全館空調といっても、高価なシステムではない。1階と3階をダクトで繋げ、ファンで風を送るだけのものだ。
しかしその効果は絶大だ。たとえば冬、温かい3階天井付近の空気をダクトで1階に送ることで1階は暖かくなる。1階の暖かい空気は螺旋階段を通じ、2階・3階へと上がっていく。宮本さんによると、狭小住宅の場合、この簡易的な全館空調がとても効果的でよく導入しているという。いわば狭さをメリットに変えるものだと言えよう。
その他にも細かな工夫が各所に施されている。取材の際にもっとも感心したのは、外部からの視線が気にならないことだ。繰り返しお伝えしているが、都心の狭小住宅で窓を作ると、どうしても外からの視線を感じてしまう。そのため、曇りガラスやカーテンを閉めることが多くなる。
しかしこの作品の場合、その多くが透明なガラスで、カーテンもない。すべての窓が視線を遮る位置に設けられ、青い空や美しい夕日の空を見ることができる。トップライトからは、月や星を眺めることもできるのだ。
こうした工夫は、他にもたくさんある。ここではご紹介しきれないため、ぜひ写真の説明文もご参照いただきたい。
土地が狭いという理由で、諦めないで
お施主様の夢を、丁寧に作り上げます
宮本さんは、「家は“買うもの”ではなく“作るもの”だと考えています」と答えてくれた。
すべての敷地と周囲の環境は異なるため、宮本さんはまず、その特徴を深く調査することから始めるそうだ。そしてお施主様が大切にしたいことや心地よいと感じることを整理し、その夢を実現できるプランを考えるという。
また、コストコントロールにも気を配っているという。「見積書のチェックを第三者の立場でおこない、適正な価格であるかどうかを確認します。また、予算オーバーの場合には、お施主様と優先順位を話し合いながら、仕様変更や代替案を考えるなどの工夫をしています」。
さらに、「今後、建築コストはさらに高騰する見込みです。そうした中、コストコントロールをしつつも、省エネや耐震など考慮しながら、できるだけ室内は自然素材を使った温かみのある空間にしたいと思っています」。
とのことだった。
このように柔軟な対応をする一方で、構造については妥協なく取り組んでいるという。すべての作品は構造専門の構造設計一級建築士事務所と協力して構造計算をおこなっているそうだ。
「この事務所兼自宅の土地も、地盤改良をする必要がありましたが、地盤改良ではなく支持地盤まで深基礎を作り、事務所は半地下にしました。ただ半地下にするだけでなく、メリットを生み出す工夫もしています。事務所以外の半地下スペースは9畳分の収納スペースとしました。また半地下のスペースは年間を通じて15℃ほどなので、先ほどご紹介した全館空調に活かしています」。
まさに、狭小地をはじめとする制約がある土地に家を建てようと考えている方にとって、とても心強いパートナーではないだろうか。実際、光風舎一級建築士事務所には狭小地での設計依頼が数多く寄せられているそうだ。東京の都心部、特に品川区の依頼が多いという。
「特に狭小地専門でやっているわけではないのですが、過去の実績を参考にしてご依頼いただくケースが多いです。実は都会の密集した地域では、法規制が一般地域と異なります。また、自治体によっては補助金制度がありますので、都心部の制度に詳しいという点でもご信頼いただいているようです」。
いかがだろう。極端な例だが、東京都心部で狭小住宅の建築を検討している方は、一度コンタクトしてみることをお勧めしたい。
基本データ
| 作品名 | 中延の家 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都品川区 |
| 敷地面積 | 52.7㎡ |
| 延床面積 | 83.5㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
設計者情報
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