
住宅街にありながら開放感たっぷり
八寸角の米松を大黒柱に据えた住まい
南側の「抜け」に着目し
住宅密集地でも開放感を演出
Aさんが思い描いていたのは、子ども部屋と、夫婦別の個室、ゲストルーム、書斎コーナーなどを備えた、「4LDKの縁側のある家」。これに加えて、家事動線が良い家であること、大容量の収納があること、などのオーダーも伝えられた。
これらの希望を受け、早速プランの検討に入ったatelier thuの3人。土地は住宅密集地で、東側と南側には住宅、西側には駐車場が。そして、北側には畑があった。
「畑がある北と、車が行き来する西を閉じつつ、開放感を出すにはどうしたら良いか…」。アイディアを出し合っているなかで見つけたのが、南側にかろうじてあった抜けだったという。
「敷地の南側には平屋の住宅が建っていたのですが、その上に視線の抜けをつくることができると考えました」。と語る、atelier thuのメンバー。その抜けを最大限に生かせるよう、土地に対して建物を斜めに配置。南側に縁側付きの庭を配置するプランを提案することにした。
当初、2つの箱を組み合わせるプランも検討したが、コストを考えて断念したとのこと。最終的に1つの箱に三角屋根を乗せるという、現在のA邸の形に落ち着いたそう。構造をシンプルにし、既製サッシを使用することでコストダウンを図った。こうして、無事予算内でAさんの希望通りの家が完成する。
南側の窓から陽光が降り注ぐ
天井高5ⅿのリビングが魅力
次に、A邸の間取りを詳しく見ていこう。まず玄関から中に入ると、1階には水回りとリビングが配されている。視線の抜けを考え、南に向けて開けるようにリビングダイニングを配置。リビングは天井高5mほどの吹き抜けになっており、南側から燦燦と日差しが差し込む、とても明るい空間だ。
そして、このリビングの主役ともいえるのが、八寸角の米松の大黒柱。この米松は奥様の知り合いの材木屋さんから入手したもので、ここから木材を安く譲ってもらえたおかげで、コストを抑えつつ、グレード感を出すことができたのだという。
もちろん、家事動線もしっかり考えられている。水回り、サニタリー、玄関がぐるぐると回遊できるようプランニングされているほか、サニタリーにある勝手口から物干し場がある外に出られるため、洗濯物もすぐに物干し場に運ぶことができるのも嬉しい工夫だ。
2階に上がると、そこには子ども部屋と、ご夫婦の個室、そして和室が。ご主人の部屋からはロフトにアプローチすることができ、このロフトがご主人の隠れ部屋のようなニュアンスとなっているのも面白い。
さらに、和室と吹き抜けの間に壁がなく、開けた空間となっているのもA邸の特徴の1つ。この和室には鴨居だけ通してあり、建具を入れることもできるようになっているそう。将来的には、子ども部屋や客間にもできよう工夫されているのだという。
暮らしやすさはもちろん、先々のことまで丁寧に考えられたA邸。その完成度の高さに、Aさんご夫婦もとても満足されているとのこと。
「庭に小鳥が来て季節が感じられるのが、とても嬉しいとご感想をいただきました」。と語る、atelier thuのメンバー。設計当初、奥さんはそこまで庭にこだわりはなかったというが、提案して植えたブルーベリーの実を小鳥がついばんでいく姿に日々癒されているそう。家を建てた後に生まれたお子さんも、小鳥が来るのを楽しみにしているという。
設計から完成までを振り返って、atelier thuのメンバーはこう話す。
「A邸は僕たち3人が独立して最初に手掛けた案件でした。手探りなところはありましたが、最終的には自分たちが想像した以上に良い住まいができたと思っています。Aさんが僕たちに任せてくれたおかげで、思う通りに設計できたのも嬉しかったですね」。
完成したA邸が雑誌に取り上げられるなど、思った以上の反響があり、驚いているという3人。これからも、3人それぞれの個性を生かしながら、お施主様の理想の家づくりのお手伝いをしていきたいとのこと。最後は、「設計から監理までしっかりできるメンバーがそろっていますので、ぜひ安心してご依頼ください」。と、笑顔で話してくれた。
間取り図
基本データ
| 作品名 | KATA |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県加古川市 |
| 敷地面積 | 272.16㎡ |
| 延床面積 | 109.3㎡ |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | A邸 |
撮影:©Hirofumi Imanishi
この記事に関わるキーワード
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

庭の景色をセンスよく取り入れた、心安らぐ茶室と癒やしのリゾート空間
高級料亭を思わせる佇まいが印象的なT邸。邸内には風情あふれる茶室と、高原リゾートの別荘のようなLDKが広がるハイエンドな住宅だ。さらには快適に過ごせる熱環境も万全。Tさまの要望に期待以上の形で応えた、建築家・奥野公章さんの設計の魅力に迫る。

手間暇惜しまず、じっくり寄り添い 施主の理想を実現した整骨院と自宅
柔道整復師・スポーツトレーナーをされている施主のTさん。出身地である古河市で、自宅兼整骨院を建てようと依頼をしたのは、茨城県結城市を中心に地域や風土に根ざした家づくりを行っている建築家、NIDO一級建築士事務所の飯野さんでした。

あえてのセオリー破りが叶えた 光が降り注ぎ、風が通り抜ける家
南北に長く南北からしか有効な採光が望めない土地においては、南面にリビングなどの主要な部屋を、北側に水回りや個室を置くのが一般的。そんなセオリーを打ち破り、LDKを南北に貫通させるというゾーニングで、光が降り注ぎ風も通り抜ける家をつくったのは、自然環境を巧みに取り入れた家づくりを行う建築家、TAWs DESIGNの田辺さんでした。

深緑を間近に感じるルーフテラス。多様な場所で自由に暮らす「空のデッキ」
ご紹介するのは、緑深い山懐という鎌倉らしいロケーションに立つ一軒家。設計を担当した伊藤寛さんは、美しい風景に馴染むデザインとともに、住まい手の暮らしに寄り添う住空間を提供。シンプルながら個性的な佇まい、暮らしを豊かに彩る空間体験、そして、家族が心地よく共存できる多様なスペースを生み出した。

木→コンクリ→ガルバリウム→サイディング 異なる素材を生かしたデザインで個性を演出
区画整理された分譲地だと、敷地形状が同じになるため、隣家の建物との違いを出しにくくなる。その中で建築家の塚本さんが設計したI様邸は、塀や外壁にあえて何種類もの異なる素材を使うことで個性を演出しつつ、奥行きにリズムをもたせる空間表現も考え抜かれた家。室内にも随所に、多彩な工夫が凝らされている。

快適動線と洗練デザインに大満足。 「図面の見える化」で納得の家づくり
完成イメージを写真のような画像にしながら、納得の家づくりを進めてくれる建築家の完山剛さん。M邸では少ない要望を見事にふくらませ、大満足の住宅を設計。洗練されたデザインや快適動線、吹抜けを活用した採光など、参考にしたいトピックが満載の家だ。
-1-640x428.webp)
光と風が心地よく通る!傾斜地を生かした「土間のある家」
ずっとマンション暮らしだったこともあり、憧れの一軒家を建てることを決意したⅯさんご夫婦。希望したのは、趣味の革細工や裁縫をするためのワークスペースと外につながる庭がある家である。購入した土地は、東側に位置する川に向って緩やかに傾斜する敷地。設計を担当した平山教博さんがトライしたのは、土地の利を生かし、光と風が心地よく通る家づくりだった。

外観や図面からではわからない開放感 光あふれるコートハウス
電車や踏切の騒音問題、通りを行きかう人からのプライバシーの確保。そんな課題を抱えた土地での設計依頼に、外観からは想像もつかないような、開放的で明るい住宅を生み出したのは、「空間づくりの匠」アトリエスピノザの井東さんと市原さんでした。

明暗と空間にメリハリを 店舗のような落ち着きのある黒い家
奥様の実家の土地に親世帯・子世帯それぞれの家を同時に建てるという「究極の近居」を選んだYさんご家族。外観に統一感を持たせながらも、親世帯とは違った「自分達好みのテイスト」「自分達らしい生活」を実現した黒い家をつくったのは、空間づくりの匠空-KEN design officeの竹中さんでした。






