
家族の距離感、街との距離感が絶妙。
ほどよいつながりが心地いい、大人の二世帯

熊田 康友
くまだ やすとも
ドキアーキテクツ
東京都 目黒区
ドキアーキテクツは2世帯住宅に特化した『二世帯住宅プランニング』を運営しています。 「親のくらしも、子どものくらしも、どちらのくらしも一緒にかなえたい。」 一生に一度、あるかないかの住宅づくり、それも二世帯で生活をするとなると、かなえたいことがたくさん出てくるのは自然なことではないでしょうか。 1つの住宅をつくるのにもたくさんの要望が出てきます。それが二世帯分ともなるとまとめるのは大変です。また、親世帯と子世帯の関係性もそれぞれの家族ごとに異なります。 私たちが設計するのは、ふたつ分の夢をかなえる二世帯住宅です。二世帯住宅だから相談したいこと、悩んでいることすべて聞かせてください。私たちがまるッとプランニングします。
「検査済証」ありますか?
意外と知らない増築、リノベの落とし穴
1階の親世帯は70代のAさま夫妻と長男の息子さん。
2階の子世帯はAさま夫妻の長女である娘さんと、そのお子さんで既に社会人のご兄弟。
合わせて大人6人が住むこの家は、Aさま夫妻から見ると息子が1階に同居し、2階には娘と孫2人が暮らしている。
当初Aさま夫妻は、建て替えではなく増築を考えていた。だが、築年数を経た既存の家が現行の建築基準法に適合しているか不安があり、リノベーションにおける法規制対策に詳しい『ドキアーキテクツ』の熊田康友さんに相談。すると調査の結果、以前のA邸は「検査済証」がないことが明らかになった。
「建物は行政機関から、着工許可に該当する『確認済証』と、完成した建物の使用許可に該当する『検査済証』の2つを発行してもらう必要があります。けれど20年以上前につくられた建物は、半数以上が『検査済証』を取らずに引き渡されているんです 」と熊田さん。
A邸のように検査済証がない建物は増築時に多くの制約が生じ、手続きも煩雑になる。加えてA邸では玄関や水まわりを世帯ごとに分ける造りを計画していたのだが、増築で完全分離の二世帯にするのは至難の業だ。
そこでAさま夫妻は、熊田さんのアドバイスで増築から建て替えに計画をチェンジ。
Aさまはリノベーションのコンサルティング経験が豊富な建築家をネットでリサーチし、熊田さんにヒットしたという。すぐさま課題を洗い出し、最適な解決策を提示してくれた熊田さんは、願ってもない適役だったといえるだろう。
採光とプライバシー確保を両立させた、
吹抜けの中庭風ウッドデッキ
十分な広さがあるように思うが、Aさま一家は完全分離、かつ、客間や6人全員分の個室を希望。2世帯分の水まわりや生活空間、多くの個室を備えた住まいをつくるとなると広い庭を取るのは難しく、必然的に建物も奥行きのある細長い形状となった。
ここで問題になったのが、採光と、外部に対するプライバシー確保だ。
というのも、細長い建物を複数の空間に分割すると、部屋と部屋に挟まれて採光しにくい住空間ができてしまう。
またA邸は、南の前面道路の向かいに家があり、北と東にも隣家、西にはAさま所有の集合住宅がある。つまり、4方向に対してプライバシーを守る配慮が必要だった。
「全ての方角に家があるし建物は細長いし、無理!」と投げ出したくなりそうだが、熊田さんは2つの策でこれらのハードルを乗り越えた。
策の1つは、長い建物の真ん中あたりをコの字型にくぼませて、中庭風のウッドデッキをつくること。こうすると、ウッドデッキに面したスペースはほかの部屋に挟まれていても外光を得やすくなる。さらに、ウッドデッキを1階から2階にかけて吹抜けにすれば、両フロアともウッドデッキからの爽やかな光や風を取り込める。
もう1つの策は、室内にコーナー窓を設けることだった。コーナー窓なら周囲の家の窓と真向かいにならず、プライバシー面も安心。外光もしっかりと入ってくるし、部屋の角の行き止まり感がなくなり、空間を広く感じられるというメリットもある。
1階の親世帯は奥さまの部屋が中ほどに位置するが、ウッドデッキに面した窓から明るい光が入ってきて閉塞感は皆無。同様に、部屋と部屋に挟まれた2階子世帯のLDKもウッドデッキの上部に面した窓があり、視線の抜けや光を得られて気持ちよくくつろげる。
光が入りにくく暗い印象の部屋は、結局、デッドスペースや物置になりかねない。住宅に囲まれた奥行きのある建物でありながら、そんな部屋を1つもつくらなかった熊田さん。A邸は、その手腕に拍手を送りたくなる住宅だ。
家族の想いに心を配る温かな設計。
建築の仕掛けで、外部と交流する豊かさも
だが完全分離の場合、親世帯は子世帯の意志を尊重しつつも「少しはつながりが欲しい」との本音をもっていることが少なくない。
Aさま夫妻が直接そう言ったわけではないが、二世帯住宅の打ち合わせでは、とかく、誰かが何かを遠慮しがちでもある。そのため熊田さんは、打ち合わせの様子やさまざまな二世帯住宅を手がけてきた経験を踏まえ、2つの世帯にさりげないつながりを生む仕掛けを組み込んだ。
それが、先述のウッドデッキだ。ここは内部空間に光を届けるためのものだが、熊田さんの中では「ウッドデッキが吹抜けになっていれば上下のつながりが生まれ、気を使わない程度に各世帯の気配が伝わるのでは」との思いもあったという。何かとセンシティブな側面がある二世帯住宅の家づくりで、熊田さんのこうした心遣いは実にありがたい。
つながりでいうと、A邸には街とのつながりを創出する仕掛けもある。南の道路側に設けられた植栽スペースだ。
植物が好きなAさま夫妻の要望に応え、熊田さんは玄関前にコンパクトながらもきれいに整えた植栽スペースをつくった。
加えて熊田さんは、植栽スペースにベンチを設置。あえて、敷地を囲う塀も設けなかった。
「塀なし」「ベンチ」、この2つの仕掛けの効果がすごい。道路に面した植栽スペースは街に対してオープンだから、庭仕事をしていれば、通りかかったご近所さんとの会話が増える。新たに引越してきた植物好きな人と挨拶を交わす機会も生まれるだろう。
塀がないから道行く人もAさま夫妻に声をかけやすいし、話が盛り上がればベンチで座ってお茶を飲みつつおしゃべりできる。実際、既にそうしたコミュニケーションを楽しんでいるとのこと。
家族やご近所さんとのつながりや距離感は、建築の仕掛けで全くといっていいほど変わってくる。だから熊田さんは建築が生むコミュニケーションの濃淡に心を砕き、施主が「ちょうどいい」と感じるラインを探っていく。
そうやって熊田さんがつくり上げる住宅は、単に要望に応えただけの味気ないものに仕上がらない。自分たち家族にとって距離感がほどよく、自分が住む街をもっと好きになる。その魅力は、住めば住むほど実感していくはずだ。
基本データ
| 作品名 | 三鷹市A邸 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都 |
| 敷地面積 | 169.51㎡ |
| 延床面積 | 183.82㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+長男+長女+孫2人 |
| 施主 | A邸 |
設計者情報

熊田 康友
くまだ やすとも
ドキアーキテクツ
東京都 目黒区
ドキアーキテクツは2世帯住宅に特化した『二世帯住宅プランニング』を運営しています。 「親のくらしも、子どものくらしも、どちらのくらしも一緒にかなえたい。」 一生に一度、あるかないかの住宅づくり、それも二世帯で生活をするとなると、かなえたいことがたくさん出てくるのは自然なことではないでしょうか。 1つの住宅をつくるのにもたくさんの要望が出てきます。それが二世帯分ともなるとまとめるのは大変です。また、親世帯と子世帯の関係性もそれぞれの家族ごとに異なります。 私たちが設計するのは、ふたつ分の夢をかなえる二世帯住宅です。二世帯住宅だから相談したいこと、悩んでいることすべて聞かせてください。私たちがまるッとプランニングします。
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