
川のせせらぎも、もはや我が家!
自然と一体の家づくりの極み

勝田 無一
かつた むいち
有限会社 創設計
東京都 渋谷区
建築家・造園家として活動。多種多様の建築設計実績多数。 特に住宅については「楽しくなければ住宅じゃない!」と言う信条のもと、 住むための「道具」という枠を超えて日常を楽しむ住宅設計を目指している。住宅雑誌等への作品・掲載多数。
自然と川へ降りていきたくなる、オープンな家
自然が好きなQさんは、山と海にひとつずつ家を建てようと構想を持っていて、まずは山をひとつ手に入れたというわけだ。手頃な価格で購入した土地は手入れがされておらず、木や草が生い茂っていた。そこをどうしたら楽しく週末を過ごせる家になるのか、分からない。当面はセカンドハウスとして利用するが、いずれは定住も考えており、快適な家にしたかった。そこで、Qさんは、庭と家をトータルで設計しているという勝田さんに相談をもちかけた。
「まずは土地を見てほしいということで現地に同行しました。行ってみると、水の流れる音は聞こえるけれども、木で覆い隠されて全く川が見えなかったんです。川を楽しむ家にしたいというお話でしたので、とにかく木を整理しないことには始まりません。この渓流を見ないことには、ここに建てる意味がないですからね」と勝田さん。工務店さんと協力して崖の下に生えている木を切り倒していった。
木を整理して、ようやく川が見えるようになった。残っている木々と川を部屋から同時に眺めるには、大きな窓が必要だ。川の側に置いたリビングは2面をガラス窓にして、川の流れから木の梢まで見えるようにした。視界を横切る水平の梁もなくし、大きな吹き抜けで縦にも横にも広がりのある「山の空気が伝わってくるような」リビングにした。
夏になると、川はカヌー下りや釣りをする人や、川遊びをする子ども達で賑わう。鮎も上がってくるという。そんな楽しげな川がリビングよりもっと近くで楽しめるのは、広々としたデッキだ。窓を開けるとリビングとフラットにつながり、部屋の延長のようだが、より山の空気を肌で感じられる。
デッキには、川を楽しむ仕掛けも施した。デッキの一角には、川に向かって張り出した細長いスペースがある。足元の一部はエキスパンドメタルという金網でつくられており、下を流れる川が透けて見える。スリリングな突き出しデッキの反対側には、弓なりにのびている太鼓橋をつくった。優雅に景色を眺めながら降りていくと、川原に着く。橋の下には芝をはり、ちょっとした広場にした。
実は、太鼓橋のある辺りは建物をたてられない。自然いっぱいのこの場所は行政上、調整区域とよばれるエリアに区分されており、建物をつくることが制限されているからだ。しかし、部分的に建築可能になっているエリアにポコンと家だけ建てても、周りの自然から切り離されてしまう。建物と庭や外回りは、住む人の視点からすれば同じ環境だと考える勝田さんは、敷地のひと山全体で川を楽しめる住まいになるように計画を進めていった。
完成した家は川囁庵(せんしょうあん)と名付けられた。自然と川へ降りていきたくなるような太鼓橋にはQさんも大喜び。「自然を感じながら住める家は良いよね。」と、この家を満喫しているそうだ。木も草もぼうぼうだった小山が、周囲の自然に溶け込み、川を楽しめる家に生まれ変わったことに勢いを得たQさん。今また、勝田さんと海を楽しむ家を計画しているという。
茶目っ気のある解決案が山小屋感のあるインテリアに
風呂場の工事では、何かここに水をせき止めるものがあった方が良さそうだ、という工務店さんの申し出に、庭にあった石を持ってきて置くという対応策をとった。
将来的には毎日生活するところでもあり、使い勝手が悪いのは困りものだが四角四面に処理をせず、遊び心のある解決をしたことで、週末を過ごす山小屋らしさが増した。玄関口に掲げられた名称看板も、勝田さんの手づくり。どうやら楽しい家になっている背景には、勝田さんも山小屋づくりを率先して楽しんでいることも関係しているようだ。
基本データ
| 家族構成 | 夫婦 |
|---|---|
| 施主 | Q邸 |
設計者情報
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