
広大なワンルームに屋上庭園!
光と緑あふれるアーティストの家

勝田 無一
かつた むいち
有限会社 創設計
東京都 渋谷区
建築家・造園家として活動。多種多様の建築設計実績多数。 特に住宅については「楽しくなければ住宅じゃない!」と言う信条のもと、 住むための「道具」という枠を超えて日常を楽しむ住宅設計を目指している。住宅雑誌等への作品・掲載多数。
青空を望むスカイライト、屋上庭園…。ビル最上階で自然を満喫
立地は湾岸。施主さまはビルの上階から海を望む気持ちのいい環境を見て、「ここに住んじゃおうかな」と、ビル設計を託した勝田無一さんに自宅の設計もオーダー。本業のアパレルデザインから趣味の写真まで多彩な制作活動を行う施主さまは、本格的な撮影スタジオやアトリエも希望。アーティスティックなライフスタイルを投影する家づくりがスタートした。
完成したビルは6階建てで、1階~2階が配送センター、3階が製作工場、4階~6階が施主さまのための空間である。このうち4階は撮影スタジオ、5階はアトリエ、純粋な住空間は6階のペントハウスとなっている。
ビル最上階という都会的なお宅だが、勝田さんは住宅と庭のトータル設計を得意とするガーデナー建築家。空、光、緑などの自然を暮らしにとり込む作風は、こちらのお宅にも色濃く現れた。
筆頭は6階の住空間の窓越しに広がる屋上庭園だ。ここは5階の屋根にあたるルーフバルコニーで、ガラスでつくられた三角形のオブジェの周囲に豊かな緑が生い茂る。実は、このガラスは4階から5階に至る吹抜けのトップライト。燦々とそそぐ日差しは4階の撮影スタジオまで届き、被写体を自然光の中で撮ることができるのだ。
「トップライトを三角形にした主目的は強度を高めることです。平面よりこの形のほうが強度が出ますし、メンテナンスと換気が容易。しかも、光が多面的に入る。もちろん、屋上庭園のアクセントとしてのデザイン的な意味合いもあります」
勝田さんの言葉通り三角形のガラスはどことなく、かのルーブル美術館のピラミッドを思わせる。日中は陽光、夜はやわらかな照明で美しくきらめき、リビングでくつろぐひとときを充実させてくれるだろう。そして何より、屋上庭園はビル最上階にいながら木々の緑を楽しめることが魅力。植栽は多忙な施主さまのためにほとんど手入れのいらないものを選んでいる。庭づくりに詳しいガーデナー建築家、勝田さんならではの嬉しい配慮だ。
暮らしの中で自然を楽しむアイデアは室内にもおよび、水まわりに立派な植栽コーナーをしつらえた。緑に包まれた洗面台は森の中の水場のようで、朝は爽やかに身支度を、夜は心癒やされながら就寝の準備ができる。
最上階のメリットを活かした空との接点も注目だ。リビングスペースは2フロア分はあろうかというほど天井を高くとり、上部には光を採り込むスカイライトをぐるりと設置。青空をすぐそこに感じる心地よさはなんとも言えず、のんびり流れる雲を見ていると室内にいることを忘れてしまうほど。さらに、キッチンの背面には広々したサンルームもあり、あちこちから届く光と風、刻々と表情を変える空が暮らしを彩る。無機質な事業用のはずだったビルは多彩なアイデアによって、生き生きとした自然がクリエイティブへの英気を養う多目的空間にグレードアップしたのである。
レイアウトと素材使いが光る、表情豊かでスタイリッシュな住空間
これだけの広さをLDK、ベッドスペース、水まわりのみで使う……。広過ぎて逆に所在なく感じるのでは?と懸念してしまうが、勝田さんは施主さまとアイデアを出し合い、スタイリッシュで居心地のよい住まいに仕上げた。その大きなポイントが造作家具のレイアウト。四角い空間の対角線に沿うようにキッチンカウンターを斜めに配し、それと平行してテレビ台や本棚を造り付けたのだ。この斜めの配置によって視界や動線が単調にならず動きが生まれ、かつ、のびやかさも感じられる。
居心地のよさは、内装や造作家具の素材使いによるところも大きい。リビング・ダイニングの床は強靭で変色しにくいチークの無垢材。最高級木材として珍重されるだけあって木目も色味も美しく、空間に上品な重厚感をプラスする。また、ダイニングテーブルは天然石、キッチンまわりの棚や収納扉は古材を使用。一方、テレビ台や膨大な書物を収める本棚は明るくナチュラルな色合いの木材とし、キッチンはクールな印象のステンレスを用いた。
深みのある素材に対し、軽やかな素材を適宜合わせる足し算・引き算のバランスは実に絶妙。ともすればのっぺりとしがちな大空間はレイアウトと素材の相乗効果で趣ある表情を生み出し、感性を研ぎ澄ますアーティスティックなライフスタイルを後押しする。
【勝田 無一さん コメント】
ビル最上階でも自然を感じていただけるよう、空を切りとるような大きな窓や屋上庭園、水まわりの植栽などをご提案しました。間取りはご要望に合わせたワンルームタイプ。広さがある分、高さも出しておおらかなスケール感を保ちつつ、造作家具の個性的なレイアウトや素材使いで大空間特有の“所在なさ”を回避。ビル内には撮影スタジオやアトリエもあり、施主さまのアーティスティックな暮らしに合う住宅になったと思います。
基本データ
| 所在地 | 千葉県千葉市 |
|---|---|
| 敷地面積 | 661.6㎡ |
| 延床面積 | 214.01㎡ |
| 家族構成 | 一人暮らし |
| 施主 | G邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

外とつながる。家族がつながる。暮らしを豊かにする「吹抜けのある庭」
建築家の西川拓さん・平田悠さんが設計する住宅は、空間のオリジナリティと住み心地のよさが大きな特徴。H邸もシンプルだが個性的な空間構成で、庭は「吹抜けのある庭」だという。光も風も気持ちよく入る快適な住まいから、2人の設計の魅力を探ってみよう。

スケール感あふれる吹抜け空間でかなえた、 光と空がきらめく「緑と戯れる家」
暮らしの中で植物を楽しみたいという施主さまの思いに、「天井に緑を映す」という独創的な発想で応えたのは、かまくらスタジオの福井啓介さんと森川啓介さん。希望を表面的に捉えず、本質を見極めた提案で期待以上の住まいをつくる設計スタイルに迫る。

これは老舗旅館!?非日常感と使いやすさも両立の圧倒的高級別荘
軽井沢にあるKさん夫妻の別荘は、民家とは思えない上質な非日常感をまとう。しかし、意外にも素材などのスペックに「贅を尽くした」わけではないという。建築家の谷内田章夫さんは敷地のポテンシャルを最大限に活かし、空間の見せ方で圧倒的な高級感を演出した。

建てる前に知っておきたい!「本当に快適な家」のつくり方
家を建てるなら、こんな間取りでこんな床。窓はこうして照明は…。多くの場合、インテリアの延長で家への夢を描きがちだが、長く快適に住むには機能性も大事。天井高約5mの開放的なリビングのある住まいを建てたC様ご一家は、建築家・関太一さんとの出会いで「あること」への意識が高まり、想像をはるかに超える住み心地の良さを実現。プロのアドバイスがなければなかなか気づかない、その「あること」とは?

LDKから庭までが一続きになる大開口 平屋ならではのデザインで隅々まで明るい家
面積の広い敷地を購入されたお施主さまに、平屋を提案した建築家の石さん。広い家にもかかわらず家中に日の光が届くのは、平屋の特性を生かしたからだという。リゾートホテルのような雰囲気も感じられるLDKで過ごしていると、ここが幹線道路にも面した住宅街にあることを忘れてしまうほどだ。

建材の伐採に施主様も参加! 安心とぬくもりの「自然素材の家」
シンプルな木の家をテーマにこだわり、建築材の“地産地消”に取り組む建築家の福田義房(ふくだ・よしふさ)さん。川越市にある一級建築士事務所アーキクラフト代表であり、森と町を結ぶNPO法人「山のめぐみ」理事なども務める福田さんが設計する家は、何とも言えないぬくもりと安らぎに満ちている。埼玉県東松山市のH邸を例に、その細やかな仕事ぶりを見てみよう。

妻の趣味と夫の仕事を両立し、快適な暮らしも叶えた建築家の自邸
偶然に紹介された土地が運命の出会いとなり、設計事務所兼自邸を建てたいという気持ちがふつふつとわき上がったアトリエ住之舎の角野さん。ところが、奥様は土地に縛られるのがイヤで、持ち家にはかなり否定的だった。諦めきれない角野さんが、奥様を納得させ、ついに念願の一軒を完成させるまでの経緯を伺いました。

築30年で断熱も家事効率も向上 暮らしが変わる自然素材のマンションリノベ
築約30年のマンションを、自然素材の上質空間に一変させたBois設計室の藤田敦子さん。フォトジェニックに生まれ変わった新空間は、断熱性能もZEH基準並みにグレードアップ。ラクしてすっきり暮らせる工夫も満載だ。

通り土間で居場所を増やし、家をひとつに。風が気持ちよく抜ける、深い軒がある家
和モダンな雰囲気を持つ家を新築したいと考えていたお施主さま。依頼を決めたのはこれまでも多くの和の家を手掛けた、建築家の湊さんだ。要望を芯から理解し、デザインが洗練されているだけでなく、心地よく風が抜ける光に満ちた家を実現。鍵となったのは通り土間と深い軒、そして吹き抜けだという。



