
暮らし方はそのままに、思い出の母屋を一新
桜を望むテラスを備えた「風が通る家」
暮らし方や生活動線を想像し
ストーリーを提案する
以前の住まいのライフスタイルは変えずに、新たな住まいを構えたい。そんなTさんの希望を聞いた水野さん。設計に入る前にまず行ったのが、Tさんの暮らしの物語を想像することだったという。家づくりをするときは必ず、家族の生活を思い浮かべながら空間のしつらえを考え、暮らしのストーリーを提案するという水野さん。
「いつも、お客様の物語に参加させていただいて家づくりをしていきたいと思っているんです。そのために、打合せの時に聞く音楽や好きな服、ブランドなどを聞かせていただきつつ、イメージを広げていく感じです」と話す。
打合せの中で水野さんが捉えたTさんの暮らしの物語には、Tさんの古くからの人付き合い、交流があったそう。「今はコロナ禍で減っているようですが、Tさんのお宅には来客が多く、人を招いたときの動線などをしっかり考えたプランが必要だと感じました」。
そこで水野さんが考えたのが、可動式の間仕切りを活用し、来客によって可変する空間をつくるというユニークなプランだった。
南北に広い開放部を設け実現した
光と風が通る心地よい住まい
南北に広い開口部を設けることで風通りが良くなるよう工夫されているT邸。桜の名称として知られる東川に面している敷地の北側にはテラスを設置。春には桜を見ながらくつろげる空間が出来上がった。「川は見えないのですが、川のせせらぎは聞こえます。ちょうど打合せをしたときが春だったので、桜を見ながら過ごせる、京都の川床みたいな場所を作れたら…と思い、テラスを設置することにしました」。と水野さん。このテラスはゲストルームとダイニングに面しており、さながらアウトドアリビングといった雰囲気だ。
そして、反対の南側、主寝室とリビングに面する場所には、光沢のあるタイル張りの濡れ縁を設置。タイルを用いたのは、差し込む日差しをタイル面の反射により内部空間が明るくなるようにという配慮からだという。
ちなみにこの濡れ縁の前には、雨垂れ石として薄いピンク色の天然石が敷き詰められている。「桜のシーズンになると、東川にたくさんの桜の花びらが浮かびます。この天然石はその花びらをイメージして選びました」とのこと。素材にもストーリーを持たせるところは、まさに水野さんならではといえるだろう。
可動式の間仕切りを活用し
スペースの可変を実現
水野さんがデザインしたモダンなドアを開くと、そこには広々とした玄関スペースが。大きなシューズインクローゼットを備えているため、すっきりとした印象を保つことができる。
この玄関の横に設けられているのが、Tさんの要望にもあった応接室である。T邸には地域の人、仕事関係の人、友人知人などいろいろな来客が来訪するということで、来客者の親密度によって招き入れる空間を変えることが多いとのこと。家に招き入れない来客には、ここだけで対応することができるようになっているのだという。
ホールを介して右手には、同居している長女の寝室、親戚が泊まるゲストルームが続く。生活リズムが違うTさんご夫婦の主寝室と長女の寝室の距離を離すことで、プライバシーを確保しているそう。トイレもゲスト・長女用トイレとTさん夫婦用と2つ設けられており、お互いに程よい距離感を保てるようになっている。
そして、左手に設けられたのが、広々としたリビングダイニングと、Tさんご夫婦の主寝室である。リビングダイニングには可動式の間仕切りが設けられており、来客が来る時間や親密度によって、フレキシブルに開いたり、閉じたりすることができる。「来客があるときでも他の家族がお風呂やキッチンを使えるよう工夫しました」と話す水野さん。来客時の家族の過ごし方、生活動線まで考え尽くしたからこそ、生まれたプランといえるだろう。
その甲斐あって、最終的には希望通りの住まいが完成。Tさんも「想像以上に素敵で快適な住まいが完成し、この家での暮らしを毎日楽しんでいます。親戚や友人が訪れると必ず素敵な家ですね。と言われるので嬉しいです」と話してくれているという。
お客様のご要望に寄り添うことをモットーにしているという水野さん。最後に、「建築家に頼むのは敷居が高いと思うかもしれませんが、一緒に理想の住まいをつくり上げていけたらと思っています。暮らしの風景を一緒に描いていきたいですね」。と笑顔で話してくれた。
間取り図
基本データ
| 作品名 | 東新井の家 |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県所沢市 |
| 敷地面積 | 1116.06㎡ |
| 延床面積 | 147.75㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 5000万円台 |
| 施主 | T邸 |
撮影:JINGU Ooki
設計者情報
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