
アフターケアも行なうということ
家族とともに成長をする家
家族とともに成長をする家
宮谷さんは「実際に見せていただいた過去の設計事例も素敵だったし、新しい人にお願いすることで、今までにない視点が加わるのはいいと思った」と言う。「上條さんご自身も、お子さんがいらっしゃるから、子どもを持つ親の視点もよくわかっているし、それに基づいた提案をしてくれるんです。細やかに対応してくれるのでとても助かりました」と奥さん。
今回リフォーム対象となった子供部屋は、2階にある1室。今までは、そこをお子さん3人で使用していたそう。高い天井と24畳もある広々とした空間は、まるで体育館のようだ。リフォームに向けて物を片付けたとき、この部屋の中で宮谷さんと息子さんはキャッチボールをしたという。それぐらいに広い。
「子どもが小さいうちはのびのび遊べていいなと思って、あえて広い部屋にしました。でもいつかは部屋を仕切る必要があるなと考えていました」と宮谷さん。上の女の子ふたりが小学6校年生と小学校3年生、一番下の男の子が小学校1年生になったときにリフォームを決めた。
一番の課題は、この部屋を3人でどうわけるかということだった。均等に3つにわけるのか、4つにわけてひとつを共有スペースにするのか。ほかにも部屋のなかに、島状に小さな3つの個室を点在させ、その周りに共有スペースを作るというユニークなアイデアもあったという。「広すぎるこの部屋をシンプルに3分割するぐらいしか浮かんでいなかったけど、驚くようなアイデアをいくつも出してくれた」と宮谷さん。
上條さんは「話し合いを重ねるなかで、宮谷さんの言葉のなかにある本心というか、一番重要視しているものが何かを掴んでいくように心がけました」と言い、「お施主さんとのやり取りで一番大切にしているのが、どこまで本音に近づけるのかということです」とも教えてくれた。
宮谷さんが「いい設計士さんとは、依頼している側の考え方の根底にあるものを汲みとった結果、アイデアを出してくれる」と語るように、話し合いを重ねるなかで、上條さんは、宮谷さんができるだけ「可変性」を持たせたがっていることを見抜いた。そして各部屋のクローゼットを可動式にする、各部屋の壁を棚の付け外し可能の自由にレイアウトを組めるものにするといった、最終的な設計のアイデアを提案した。
「図面を書くのって決断の積み重ねなんです。いくつか選択肢が浮かんだときに、どれを選ぶかという判断基準になるのが、一見関係ないように思える会話だったりするんです。だから、お施主さんとたくさん話をすることが大切」と上條さん。
彼女は、リフォームが終わった後も、子供部屋以外のメンテナンスを手伝っている。「作った後もきちんとその家や部屋に責任を持ちたいんです。メンテナンスやリフォーム、家具についてのちょっとした相談にも対応したくて。人の暮らしや生き方が生まれる場所に関わるのが好きなんです」。
実際にインタビュー当日、家のなかを案内してもらっている間にも、宮谷さんから「今この本をどうするか悩んでいて」とまた新たな相談が生まれていた。
帰り際、編集部スタッフと宮谷さんご一家に手作りのお菓子をプレゼントしてくれた上條さん。相手に気を遣わせることのないさりげない渡し方。そんなところにも、彼女の人柄を感じた。
子どもにも責任を持たせること
そしてこのドアにはもうひとつ上條さんの想いが込められている。「ドアを開けると、ほかの子の部屋につながる設計になっています。戸袋付きの引き戸なので、ドアを開けると扉が隠れるので、自分が選んだ色が見えません。ドアを開けることは、自分の世界とほかの人の世界を共有するということ。そして反対に閉じたときは、自分の好きな色に囲まれて自分の世界が生まれる。ただの戸袋なんですが、このタイプのドアにしたのには意味があるんです」。
子どもたちにも責任を持たせるという考えは、部屋をどう区切るか考えていたときにも重要視された。上條さんが区切り方の案をだしたとき、なかには共有スペースを作るというものもあった。その案が採用されなかったのは、共有スペースがあるとそこが物置になる可能性があるからだ。共有エリアには、いったい誰が片付けをするの?と責任の押し付け合いが生まれる。それを避けるために、3つの部屋を作るという案が採用された。
「この責任をどうするかという視点は、共有スペースの案があったから気がついた」と宮谷さん。採用されるされないにかかわらず、案を複数出すことは、新しい課題に気づかせてくれ、その後の指針につながることもある。つまり回り道ではないのだ。実際に上條さんは、部屋をどう分割するかというフェーズ以降も、いくつもの案をだしたという。
ご自身も弁護士として活躍されている宮谷さんは、お施主さんに当たるクライアントの根底にあ るニーズをくみ取り、また雑談を重ねることで本人も気づいていない欲求や注意点を探し出すの が日々の仕事で最重要だと言う。日頃からその意識があるが故に上條さんに対しても雑談を惜し まず、よく無駄話をしているとのことだが、宮谷さんは「その重要さを知っていればこそ、上條 さんのプロ意識が結果に反映されるのは当然と理解できるんです。逆に普通のお施主さんこそ、 上條さんのように積極的にアイデアを出すことで真の問題を探り出してくれる方に依頼してい かないと、自分が語る表層的な目標だけが反映されて、でも結果として物足りないという事態に 陥ってしまうのではないでしょうか?自分の弁護士業務については自戒を込めての話しですが (笑)。」
基本データ
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
|---|---|
| 施主 | F邸 |
撮影:阿部稔哉
設計者情報
この実例を見た人はこちらも読んでいます

テーマは「スカイリビング」。まるで空中を浮遊しているかのような大パノラマ別荘
芦ノ湖から駿河湾、富士山までもが一望できる、見事なパノラマビューが眼前に広がるセカンドハウス。手掛けたのは、STAR(有限会社エスティエイアール)代表の佐竹永太郎氏。施主であるKさんは、自分たちにとって理想の住まいづくりをトータルで任せられる佐竹氏にすべてを託したのです。今回は、建築家を信頼し、すべてを託したからこそ誕生した美しい住まいを紹介します。

設計の力で、制約をデザインに昇華。快適・豊かな二世帯住宅にリノベーション
リノベーションは既存建物の梁や柱の影響で、空間デザインが微妙な仕上がりになることも少なくない。だが、二世帯住宅に改修したこの家では、リノベーションとは思えない洗練空間が誕生。設計を担当したドキアーキテクツ・熊田康友さんの秘策とは?

2つの階段がポイント!一世帯にも二世帯にもなる家はこうつくる
すっきりとモダンな空間で快適に暮らすことを一番の希望として、奥様の実家の建て替えを決めたNご夫妻。加えて、状況によっては息子さん夫婦との二世帯住宅にもなるような可変性の高い家ができないかとも考えた。とはいえ二世帯はあくまで可能性の話。玄関にキッチン、水回り…一世帯と二世帯の場合で変化するポイントはたくさんある。設計依頼を受けたアパートメントの滝口聡司さんは、どのようにこの要望に応えたのだろうか?

家作りは突然に!?中庭で90歳の母の暮らしをこんなに豊かに!
建築家の石井 保さんが2人暮らしの親子のためにつくった住まいは、細長い敷地を活かした中庭付き。石井さんが、まず中庭を設けようと思った理由とは? また、中庭があることで、住み心地はどう変わるのか。快適さとくつろぎをもたらしてくれる“中庭のある家”の魅力を紹介しよう

もはや建築物ではなくアート。約200㎡のマンションを美しくリノベーション
長い海外生活を経た後に日本で暮らしているという依頼主のAさん。生活の基盤を日本国内に置くすることが決まり、それを機に、現在の住まいであるマンションのリノベーションを決意。そんな、海外経験が豊富なAさんが選んだパートナーは、STAR(有限会社エスティエイアール)代表の佐竹永太郎氏でした。Aさんが思い描くハイセンスな世界観を見事に具現化した住まいを紹介します。

1階は保育園の園庭で2階が住居?併用住宅に夢と可能性を感じさせる居心地の良い家
Mさんは、代々暮らしてきた土地に建つ戸建てでひとり暮らしだという。そんなMさんが、現在の住み慣れた土地に新たな住まいを構えようと考えたとき、単身女性でも安心かつ居心地の良く暮らすにはどうすれば良いのか?結果的に導き出された答えは「1階の一部をお隣の保育園の園庭にする」という斬新なものでした。このプランを見事に実現したのは、「松浦荘太建築設計事務所」代表の松浦荘太さん。ちなみに、依頼主であるMさんとは、実は松浦さんのお母様なのです。母親と息子。親子ならではの、お互いを知り尽くしているからこそ実現できた「皆が幸せになれる住まい」について、松浦荘太さんにお話しを伺いました。

3人の建築家のアイディアが結集! 斜面地で実現した理想の住まい
奈良県、生駒市の斜面地に建つH邸。一見デメリットとも思える傾斜をうまく生かし、Hさんが希望する住まいを完成させたのが、atelier thuの坪井飛鳥さん、細貝貴宏さん、上田 哲史さんの3名だ。それぞれが得意分野でアイディアを出し合って進められたという今回の家づくり。その詳細についてお話を伺った。

つくるのは、住まいではなく暮らし 今見直される、これからの暮らしのカタチ
コロナ禍において、通勤することを前提とした住まいが見直されつつある今日。 いち早く都心の喧騒を脱し、ワークライフバランスを確立されている建築家、増木奈央子さん。 街にいながらも、自然豊かな環境でゆったり過ごす「トカイナカ」暮らし。 そこには、ポストコロナに相応しい、人間本来の暮らしがあった。

おもてなしが溢れる、悠々4台分のガレージと非日常のリビング!
東京・世田谷区の一戸建てに暮らすYさんは、大切な愛車を守る屋根付きガレージをつくりたいと考え、隣接する敷地を買い増し。建築家の金田崇さんにガレージの設計を依頼しました。金田さんの提案は、ガレージに加え、「セカンドリビングのある家」という斬新なものでした。