
「都心のログハウス」をコンセプトに、
木の風合いあふれる空間を
木造建築の構造の美しさが際立つ、日当たりのよいリビング
家づくりにあたってTさん夫妻が希望したのは、「駐車スペースが2台取れること、「同じ敷地内に住む、母の家との行き来がしやすいこと、「天然素材を使用することということだった。いくつかの工務店や設計事務所から提案を受けたものの、予算が限られていたこともあり、なかなか満足の行くプランに出会えなかったという。そんな中で清水さんが提案したのは、「都心のログハウス」。斬新な三角屋根のデザイン、かつ夫妻の希望を取り入れた丁寧な設計に一瞬で魅了されたという。建築家ならではのアイデアが詰まった設計のポイントを清水さんは語る。
「うちに相談に来られた方には、まずヒアリングシートを書いていただくんです。全部で8ページあり、その時点で挫折してしまう方も(笑)。「旦那様の要望」「奥様の要望」など個別になっていて、生活スタイルから趣味、好きな映画まで、細かくお伺いします。そこから見えてくるその家族ならではの家を考えていきます。そうやって何回目かの打ち合わせをしていた時、“本当に豊かな暮らしって何だろう”という話になったんですね。そして、“豊かな暮らしとは、本物に触れられることだよね”と意見がまとまり、そこからスタートしました」。
本来、「天然素材を使用したい」という希望と、「低予算で押さえたい」というT夫妻の希望は本来相反するもの。そこで清水さんはこう切り出した。「本物だけを使用しましょう。ベニヤ板だって本物の木です。それを隠さずに大胆に美しく見せることで、都心のログハウスを実現しましょう」。
今、T夫妻が最も気に入っているログハウス風の天井は、天井板を張らないためコストを削減しつつ、木造建築の美しさを堪能できるのが魅力だ。ベニヤ板や配線がむき出しとは思えない仕上がりの美しさには、綿密な設計と職人の丁寧な仕事が垣間見える。そうしてコストダウンした分、リビングの床など直接子どもたちが触れるところは質のよい無垢材を使用した。
もう一つの要望だった「駐車スペースを2台取る」というのは、小さな土地において、かなり難しい課題。そのせいか、2台横並びで駐車できる案を出したのは、SOU設計だけだったという。その秘密は、家の正面に玄関を配置しなかったこと。「玄関は意外に場所を取るし長くいる場所じゃないので、家の重要な位置に作る必要はありません。また、敷地の奥には、祖母の家があるので、そちらからのアクセスも考えると、玄関は家の奥の方にあればいいと考えました。最初に”玄関は見えなくていいですよね“とお話しした時はT夫妻も驚かれたようですが(笑)」。
その見えない玄関にも、実は一工夫ある。見えない場所だからこそできた思い切った決断とは壁の色。「どんな色にするか何度も相談して、元気になる色、風水的にもよいとのことで黄色に決定しました」。家の横の長いアプローチを進むと、突如現れる鮮やかな黄色い壁の玄関。通称“幸せの黄色い玄関”は、訪れる人に嬉しいサプライズを与えているようだ。
印象的な三角バルコニーには理由がある。「2台横並びの駐車場を実現するために、あえてバルコニーの柱を敷地端部1か所で済ませられるようにしました。四角いバルコニーだとどうしても両側に2本の柱が必要になり、駐車の邪魔になってしまいます」。伸びやかに張り出したその先端には、1Fに植えた植栽が育つとそのままバルコニーに開けられた三角の隙間から突き抜ける大胆な構造に。「1本の木を1Fからも2Fからも眺められるので一石二鳥です(笑)」。建築家の遊び心が感じられる一工夫だ。
清水さんが得意とすることは「その人らしい家になる」こと。打ち合わせを重ね、施主の意志を尊重しながら、隠れた要望を引き出し、優先順位を明確にしつつ、丁寧に仕事を進める。その手間を惜しまないことで、スペックやデザイン、住む人の気持ちすべてに応えた「Tさん家族らしい家」が完成した。
【清水 義文さん コメント】
「こだわりとバランス」の両立をテーマに、住まい手が心から満足する安心快適な住宅を目指す。じっくりと話を聞きながら、その人ならではのコンセプトハウスを提案するので、一軒として同じ家はない。「住まう人、使う人の可能性が広がるような建築を通じて、人々の暮らしを豊かにしていきたい」がモットー。
【夫婦+子ども3人】
打ち合わせの多さにはびっくりしましたが、最初に作っていただいた模型が素晴らしく、こちらが思っていた以上のアイデアが詰まっていて感激。迷わずSOU建築設計室を選びました。おかげさまで思い描いた以上の家ができあがり、とても満足しています。これからも長くお付き合いしていきたいですね。
基本データ
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
|---|---|
| 施主 | T邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

中庭に大きく開いた開口部が魅力!構造にヒノキを贅沢に使った上質な住まい
60代のAさんご夫婦が終の棲家として建てた、神奈川県・二宮町の一軒家。土台や柱といった構造部にヒノキをふんだんに使い、細部まで「上質」にこだわった住まいである。設計を担当したのは、建築家の腰越耕太さん。その細部にわたる家づくりのこだわりを、詳しくご紹介しよう。

居場所を見つけるのが楽しくなる 心地よさが詰まった自然体の住まい
建築家の熊澤安子さんの自宅兼アトリエは、光や緑が自然に溶け込んでくるような心地よい空間。しかも、単に自然を感じられるのではなく、気持ちよく落ち着ける穏やかな品がある。日本人が本能的に「幸せ」と思える居場所を数多くつくり出す、熊澤さんならではの設計のルーツとは?

映画の家?3年間工事を止めて待った!理想の家追求ストーリー
さまざまな人生経験を重ねてくると、良いものを見極める目が養われます。Sさんもご自身の経験から、自分が生活する住まいに対しては明確な理想像を持っていました。その理想を大事にしてくれる建築家を探し続け、とうとう出会ったのが菅原浩太さんでした。

密集地×狭小地でも抜群の開放感。 大人が憩える、土間と吹抜けのある家
横浜の高台に佇むF邸は、青空を望む吹抜け空間でゆったりとくつろげる住まい。建物に囲まれた狭小地で土地のポテンシャルを見抜き、大人が憩える快適空間をつくったBATTIRI DESIGN(バッチリデザイン)金刺久順さんの設計の魅力とは?

画家夫婦のこだわりと創作を支えるのは、快適なOMソーラー!?
アトリエ付の自宅を建てることにしたYさんご夫婦。夏は涼しく、冬は暖かい家が欲しいと考えたときに、1人の建築家の顔が浮かびました。

生活にメリハリができる多様な空間構成。 伸びやかな天井の下、優しい光と暮らせる家
建築家の岡さんは富山移住を機に自邸を新築した。移住を決意するきっかけとなったのは、連なる山々の美しい風景だ。後立山連峰と田園風景が楽しめる絶景の地を購入し、思い浮かべたのは「大樹に守られた暮らし」。大きな屋根が包み込む家で、テーブルを囲んで集う家族の暮らしぶりを見てみよう。

エアコンが足もとに? 家族を笑顔にする 高気密・高断熱二世帯住宅
住まいにおける不満で挙げられることの多い「暑い」「寒い」といった冷暖房問題。それをたった1台のエアコンで解決してしまったのは、田口建築設計事務所の田口さん。新築のご自宅に導入した、次世代の空調「階間空調」の秘密に迫ります。

敷地を最大限活用し、空間を使い切る。 質感が感じられるLDKが魅力的な木造住宅
お施主さまは自宅を新築するにあたり、家族が集まる広々としたリビングが欲しいとお望みだった。建築家の鈴木さんは敷地いっぱいに建物を計画したうえ、可能な限り柱や壁を減らした広々空間を技術により実現。重厚な質感の内装が魅力的で、暮らしやすい。コストパフォーマンスにも優れた「これぞ都会の家」ができた。

趣味の自転車を大事に、そして難しい採光も実現の技が知りたい!
愛車の自転車が手入れできる土間と、桜並木を眺められるバルコニーのある家を希望した施主のFさん。テレビ番組の『建物探訪』を数年分録画でストックするほどの建築好きというFさんが納得する家を完成させた、建築家の工夫の数々をご紹介!


