
ご先祖、面影、家相、耐震!
一族の家長ならではのリノベとは?
長く暮らしてきた家を、現代の家族に合う家にリノベ
叔父夫婦の家が台風の被害を受けて建て直しをすることになり、甥にあたる渡辺さんが新しい家を設計することになった。建て直す予定の家のすぐ隣には、渡辺さんの父である渡辺明さんが設計した"衾(ひぶすま)の家"がある。建て直しで、親子の設計した家が並ぶことになった。
歴代の家が残る土地には、松や椿など、立派な庭木が育っていた。代々、家族を見守ってきた木々は残し、芝をはったり、石を並べたりして庭を整えた。庭の隅には昔あった大谷石の壁の一部を敷きつめ、面影を残した。「もともとあったものを残したかったのですが、やはり難しく、唯一、再利用できたのがこの大谷石ですね」と渡辺さん。庭に面した部屋はコーナーをガラス窓にして、広い庭と一体化したような空間に。春になると見事な桜が見られるという。
この家に住む叔父さんは一族の家長にあたる。そのため、家にはご先祖様をまつる仏壇を置く部屋も必要になった。玄関脇に日本間をもうけ、そこに仏壇をおさめる専用のスペースをつくった。そうした代々の歴史をしっかり引き継がなければならない部分もあったが、住むのは現代の東京に暮らすご家族である。二人の息子さんは成人したら出て行くだろうと、将来的に貸家にすることも視野に入れたプランにした。息子さん達が生活する2階の部屋は1階とは独立させ、アプローチから直接、2階の玄関に入れるようになっている。
「この建物が1階はRC、2階が木造なんですが、その構造を決めてもらう日がちょうど東日本大震災があった3月11日でした。その日の夕方に叔父さんから電話がかかってきて。やはり、あれだけ揺れると怖いと、1階はRCにすることに決まりました。そこから一気に計画が動き出しましたね」と渡辺さん。叔父さん夫婦は特に好みもうるさくなく、間取りも大幅な変更は必要がなかった。
「その分、建築的にはかなり色々な要素を取り込みました。たとえば、夜間の照明にも凝りましたし、前庭の砂利も浅間石という、水が入ると黒くなる砂利を使いました。ここには普通の石は合わないと思って、スタッフとトラックで買いに行きました」と渡辺さん。浅間石は浅間山のふもとでとれる石で、軽井沢に別荘を持っている叔父さんには親しみもあった。
父である渡辺明さんが設計した"衾(ひぶすま)の家"に並んで、立派な衾の住宅が完成した。「後からふりかえると、気合いを入れて詰め込んでしまった面もありますが、第一作目としては良くできたと思います。良い経験をさせていただきました」
専門家による家相診断にも対応
どんなことでもまずはお客さんの声に耳を傾けようとする渡辺さんは、専門家に相談して家相のよい家にしたいという奥さまの希望を受け入れることに。建物のかたちや水周りの位置、入り口の位置などが細かく決められており、専門家のチェックを受けると、当初の基本計画とはだいぶ変わった。「色々、勉強できたので、それはそれで良かったですけどね」と笑う渡辺さん。家相盤を印刷して図面に載せて位置を検討するなど、建築家の職能の範囲外のことでも積極的に対応し、奥さまが専門家との相談で家相的によいと納得した上で、工事に着手した。
基本データ
| 所在地 | 東京都世田谷区 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 施主 | W邸 |
設計者情報
この建築家が建てた家
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