
子育てのしやすさに妻も納得!
経年劣化を生かした中古団地リノベ
BATTIRI DESIGN G.K. (バッチリデザイン合同会社)
家の中のどこにいても家族の気配が感じられるような家づくり
「販売に出されている部屋を内見に行ったのですが、1階でありながらも南面には、まるで軽井沢のような自然が広がる景観がありました。さらに隣の棟とも離れており、視界がかなり広がっていたんです」と金刺さん。
しかしその家に対する奥さまの評価は低かったという。「団地側が行った耐震診断では問題ないという判断が下されていました。しかし1968年に立てられた団地でしたので、リノベーションする前の姿を見た妻が発した言葉は『ボロい…』だったんですよ。しかし、それまでたまプラーザ駅周辺の賃貸に住んでいたこともあり、立地条件が良く買い物にも便利なのは理解していたんですね。妻の学生時代の友人も近隣に住んでいましたし、子どもの教育環境の良さも決め手になりました」と金刺さんは話す。
そこで中古団地を購入することへと歩みを進めた金刺さん。施主でありつつも自ら建築デザイナーとしてその家をリノベーションしていくことを決定。「自分のテーマ」を持つ家づくりをスタートした。そこでまず決めたコンセプトは「子育てがしやすい家」。これは子どもを身ごもっている奥さまからの要望でもあったという。そしてもう一つのコンセプトは「家族のコミュニケーションがとりやすい家」。家の中のどこにいても家族の気配が感じられるような家づくりを心がけたのである。
専有面積が65.92平方メートルと団地にしては広めなものの、この限られた住空間の中でいかに心地よく暮らすかを考え、奥の空間まで視線が抜けることで実際の床面積以上に空間の広さを感じられるようにした。このような仕掛けを施すことで、どこにいても家族の気配が感じられ、家族間のコミュニケーションがとりやすい家となっていった。
「子どもの将来のことを考え、外から帰ってきたらキッチンの脇を通らないと子ども部屋に入れない間取りにしています。また、玄関からは洗濯機置き場が見えるようになっており、妻がここでなにかやっているときでも、私や子どもが帰宅したときにはすぐわかるような仕組みです。団地というと玄関が狭いイメージもありますが、視線が抜けるだけで見え方も変わってくる効果もあります」と金刺さん。
金刺さんの家でもう一つ、大きく改修した箇所がある。それは窓枠だ。既存の状態だとアルミサッシとなっているが、そのままだと窓外の自然の風景が活かされない。そこであえて30センチ程度セットバックした位置に木製サッシを入れることで、アルミサッシをぼやかして目に入りにくくしたという。
「いくらきれいにリノベーションしても、中古は中古であり新築とは異なります。そこで逆にその中古の経年劣化を活かしていきたいと考えて、解体したときのコンクリート面や古材をそのまま使用し、レトロな雰囲気が感じられるよう統一しました。私自身もこのようなゴツゴツしたラギッドなスタイルが好きなので、うまく仕上がったと思っています」と金刺さん。
日本の高度成長期のファミリーを支えてきた“団地”。その団地が40年余りを経て、金刺さんが理想とする「自分のテーマ」の家へと生まれ変わった。
間口が広い団地の特徴を活かした広いリビングにこだわり
「きっちりと仕切りは入れてありますが、あらゆる場所へ視線が抜けられるように工夫したおかげでリビングが広く感じられるようになっています。同じ団地に住んでいる人を招いても『元のリビングとまったく違う!ここまでリノベーションできるんだ!』と驚かれることも多いですね。リノベーションをしても水廻りは動かせないと思っている人も多いのですが、管理規約の範囲内であればどうにでもなります。キッチンでしたらどうにでもなりますし、ついでに言えばトイレの位置を変えることも可能なんですよ」と金刺さんはいう。
新築やリノベーションしたての家といえば白いインテリアで統一することがとかく多くなりがちだが、金刺さんの家のリビングには様々なカラーのインテリアが配置されている。
「インテリアは様々なカラーのほうがトータルなコーディネートはしやすいと考えています。ソファはベースとなる壁面のグレイとコントラストを合わせたものです。また、窓外の緑とのバランスでブランケットはグリーンにするとか、遊べる要素は多いんですね」と金刺さん。
リビングは、金刺さんが考える家に対する想いがもっとも凝縮されている場所である。
BATTIRI DESIGN 建築設計事務所
金刺 久順
神奈川県横浜市青葉区新石川3-15-16TMIビル地下1階
基本データ
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 〜2000万円台 |
| 施主 | K邸 |
撮影:Atsushi ISHIDA
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

「施主の想い」に寄り添ってプランニング 高低差のある段丘地形を活かした共同住宅
「周辺環境に調和し、近隣に配慮した住宅」という言葉は、住宅建築においてよく耳にするキーワードのひとつ。「栗の木テラス」は経済合理性が求められがちな共同住宅ながら、まさにそのキーワードを体現した好例だろう。設計を手掛けた建築家の苅部寛子さんのインタビューを通じ、誕生へのプロセスを紐解いてみたい。

湘南の海を愛する施主が求めたのは15mの塔 施主と地域の人々の安心のランドマーク
湘南の海に育まれ、海を愛する施主が求めたのは、高さが15メートルもある塔のような家。工務店もお手上げだったこの依頼を、見事に成し遂げたのは、夫婦の建築家ユニット可児さんと植さん。2人の頭脳の化学反応で、日本中どこを探してもここにしかない、唯一無二の住宅が生まれた。

シンプルだけどチープじゃない じっくりとつくり込まれた、写真館兼自宅
「シンプル」という言葉の同義語は「単純」「簡素」「簡略」といったところだろう。しかし建築においては、シンプルなデザインだからといって単純なつくりでも、建築家が手間をかけずにつくるわけでもない。大人気の犬専門写真館をつくったのは、施主とじっくりと対話し、手間暇かけた仕事に定評のある建築家、服部さんでした。

中庭に大きく開いた開口部が魅力!構造にヒノキを贅沢に使った上質な住まい
60代のAさんご夫婦が終の棲家として建てた、神奈川県・二宮町の一軒家。土台や柱といった構造部にヒノキをふんだんに使い、細部まで「上質」にこだわった住まいである。設計を担当したのは、建築家の腰越耕太さん。その細部にわたる家づくりのこだわりを、詳しくご紹介しよう。

庭の木々と木製家具に癒される…。 都市の中で実現した、憩いの住まい
「デザイン性だけでなく、機能性にもこだわった住まいをつくりたい」。そんなSさんご夫婦の夢を請け負ったのが、いのはな設計の鈴木宏昌さんである。緑を望む庭に、インテリア性の高い造り付け家具、高い断熱性。Sさんの希望をみごとに叶えた鈴木さんの家づくり。気になるその中身をのぞいてみよう。

光、風、音を感じながら、自然と共に暮らす森の中の別荘
暑い夏、涼しい場所で過ごしたいとの思いで別荘づくりを決断。 自然に囲まれ、光や風、音を感じながらの生活に魅了され、ついには移住を決断するまでに。 そんな別荘を設計したのは、TAWs DESIGN代表の田辺誠史さん。 田辺さんの自然を上手く取り込んだ家づくりに迫る。

北向きなのにこんなに明るい!日光の力を最大限に引き出した家
築50年の我が家の耐震補強を、というご希望から始まったリフォームだったが、さまざまな理由からもとの家の半分を残してリノベーション、もう半分は壊して建て替えることに。50年の年月を経て生まれ変わる家と新しく建てられる家。その間には気持ちのよい庭になるであろうスペースがあり、お母様がお住まいになるという新しい家は、北向きにも関わらず光に満ちている。

ここまで開放的な平屋だから、自然満喫と落ち着く空間を両立!
窓いっぱいに広がる高尾の自然の景色、家のなかを通りぬける気持ちのよい風。存分に自然を味わえる家は、建築家の望月さんが家族と暮らすならと考えて設計した理想の家でした。

父娘の創造力を刺激する!「大きな屋根裏」と和の空間
デザインの仕事に従事するTさんと、昆虫研究にいそしむお父さま。建築家の李 孝哲さんが二人のためにつくったのは、ちょっと変わった大きな屋根裏のある住まい。光の表情を楽しめるシンプルでおおらかな空間は、Tさんの仕事の充実度にも一役買っているようだ。






